安全で楽しい登山を目指して

97 第9章 山の天気 である。特に1は重要で,それを予想するには,大気 が不安定になりやすい気圧配置を覚えることと(p100 参照),500hPa 面の気温を高層天気図から読み取って いくことが必要だ。5)これらの条件が予想されてい るときは,落雷や短時間の強雨に警戒が必要である。 6 高気圧と低気圧,前線 空気には大きな力があり,人間を含めてあらゆるも のを押している。このように,空気が押す力のことを 気圧と言う。気圧は温度や密度の違いにより高い所(押 す力の強い所)と低い所(押す力の弱い所)ができる。 このうち,周囲より気圧が高いところを高気圧,反対 に低いところを低気圧と呼ぶ。 (1)高気圧と低気圧 山頂から水を流すと,低いところへと流れていく。 同じように空気も気圧が高いところから低いところへ と流れていく。このように,空気が流れていくことを 「風」と呼ぶ。 高気圧では中心から周囲に向かって風が吹き出して いく。すると,高気圧の中心付近の空気が少なくなっ てしまう。それを補うように上から空気が下りてくる。 空気は下へ降りていくと,暖まるという性質があるの で,空気が下降すると,雲は蒸発してしまう。それで 高気圧の中心付近は天気が良くなる。 ④下降気流=雲が 消える。 ③冷えた空気は重い ので、下降する。 ②徐々に上の空気も 冷えていく。 ①周囲より冷えた ところができる。 ⑤下降気流で地面付近 に空気がたまる。 ⑥高気圧ができる。 ⑦少なくなった 空気を補うため に、周りから風 が吹き込む。 ④上昇気流=雲が できる。 ③暖かい空気は軽い ので、上昇する。 ②徐々に上の空気も 暖まる。 ①周囲より暖まっ たところができる。 ⑤上昇気流で地面付近 の空気が少なくなる。 ⑥低気圧ができる。 ⑦溜まった空気は 外に吹き出す。 冷たい空気=重い 高気圧 低気圧 暖かい空気=軽い 図5 高気圧,低気圧のできる仕組み 一方で,低気圧では,まわりから中心へと空気が流 れ込んでくる。周囲から集まった空気は行き場がなく なるので上昇していく。そのため,低気圧の中心付近 では上昇気流が発生する。空気は上昇すると冷やされ るので,そこにある水蒸気が雲になっていく。低気圧 の周辺で天気が悪くなるのはそのためである。 高気圧,低気圧の中心付近はそれぞれ好天,悪天と 判断がしやすいが,中心から少し離れたところでは場 所により天気が異なる。その場合,前述の「海側から 風が吹いてくる風上側で天気が崩れる」という原則を 当てはめていこう。 また,低気圧は通過するコースによって,日本海低 気圧,南岸低気圧,二つ玉低気圧などに分類される。 通過するコースによって天気の崩れ方も異なるが,日 本海を低気圧が通るときは,風も非常に強まるのでよ り警戒が必要である。6) (2)前線 前線は,暖かい空気と冷たい空気,乾いた空気と湿っ た空気など,2つの異なる性質の空気がぶつかるとこ ろで発生する。 前線付近では空気が上昇していくので,天気が崩れ ることが多い。天気の崩れ方は前線の種類や前線のど ちら側に位置するかによって大きく異なる。ここでは 代表的な2つの前線について述べる。 図6 低気圧と前線の位置 ア 温暖前線 冷たい空気が居座っていたところに暖かい空気が やってきて,冷たい空気を押しのけながら上昇してい く前線。前線の北側や東側で雲が発達し,広い範囲で しとしととした雨が降るのが特徴。雨は長時間降るこ とが多い。 図7 温暖前線の構造と周辺の天気

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz