安全で楽しい登山を目指して

96 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう 図3 天気図から風の強さを予想する しかしながら,地上天気図は海抜ゼロメートルのも のであり,そのまま標高の高い山に当てはめることが できないこともある。そのため,出発時に登山口で空 を見上げて次の2点について確認する必要がある。 a)強風時に現れる雲がないかどうか b)低い所にある雲の動きが早いかどうか a)については,レンズ雲や旗雲が代表的なもので ある。これらの雲が出たときは,森林限界を越える所 や,標高が高い開けた場所では風が強くなっている可 能性が高い。 写真1 強風時に現れるレンズ雲 b)については,高い所にある雲は動きが遅く見え るので,なるべく低い所にある雲の動きを見る。動き が早いようであれば,山の上では風が強いと思った方 が良い。 風向きについては等圧線の向きから判断する。4) ▶指導のポイント ア 風の強さと向きについては,登山前日に気象庁 のホームページなどから登山当日の予想天気図を 確認しておく。 イ 目的の山の辺りで,等圧線の間隔が狭いときは, 森林限界より上部の強風に留意する。 ウ 海側から高い山に遮られることなく,湿った空 気が入るような状況のときは,天気予報より天候 が悪くなることを想定する。 5 雲が成長する仕組み 雲が発生したとしても上方へ成長しなければ,気象 リスクをもたらす雲にはならない。逆に,上方へ成長 を続けていくと,落雷や大雨,大雪,突風などをもた らす“危険な”雲になっていく。 この“危険な”雲は,古くから入道雲と呼ばれ,カ リフラワーのように“もくもくと”上方に発達した雲 である。 10種雲形では積乱雲として知られている。積乱雲 は,積雲と呼ばれる青空にポッカリと浮かんだ綿のよ うな雲が上方に成長することで形成される。積雲が積 乱雲に発達するのは,大気が不安定な状態のときであ る。 大気が安定か不安定かというのは,簡単に言えば, 上空と地上付近との温度差によって決まる。地上付近 と上空との気温差が小さいほど大気は安定であり,大 きいほど大気は不安定になる。 寒 暖 大気が不安定 雨 雷 積乱雲 地面(海) 図4 大気が不安定な状態 大気が不安定な状態とは, 1.上空に強い寒気が入ってくること 2.地面付近が強く暖められること 3.暖かく湿った空気が地面付近に入ること 広い = 風が強い 狭い = 風が弱い 狭い = 風が強い 広い = 風が弱い

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz