安全で楽しい登山を目指して

79 第7章 登山の医学 1.予防できる病気である 2.脱水とよく似ていて,併発しやすい 3.死の危険を早めに見つけ,死亡を防ぐ 致命的な脳浮腫と肺水腫。急性高山病は悪化すると脳浮腫になる。肺水腫は急性高山病にかかっていなくて も発症する。どちらも下山で改善する。酸素は時間稼ぎでしかない。 ※準備するもの :「登山の医学(登山部報に掲載)」をご用意下さい。 (1)急性高山病の決め手になる症状は無い ア 高所に体が慣れないために高山病になる。症状の 現れ方や種類は人それぞれ。 イ 症状を点数化して急性高山病を早期に発見する。 (レイクルイーズスコア:LLS) ウ スコアは自己評価によるので,負けず嫌いだと, 多少調子が悪くても,過小評価し得る。 エ スコアは経時的につけて,標高と時間変化による 推移をみる。 オ 3点以上:高山病。標高を上げない。 5点以上:脳浮腫になる前に下山。 (2)高山病を疑ったらまず2つのことをさせる ▶急性高山病発生時のポイント ア 脱水と併発するので,両方の対応を行う。 イ 急性高山病は進行すると脳浮腫を起こす。早め の下山で予防が可能。 (3)高地肺水腫 本邦では 2,000m 以上で発生が認められる。 2泊目の夜(second night)に発症しやすく,アル プスの縦走で発症している。即時下山しないと命を失 う。天候が悪いとヘリコプターが来れないため,救助 到着に1日かかることもある。事前にエスケープルー トを確認する。一刻も早く,少しでも標高を下げるこ と。 (4)予防 ア ゆっくり登る 時間単位:2,000m 以上で宿泊する日はできるだけ 時間をかけて登り,登っている間にゆっ くり順応する。 日 単 位:2,000m以上の縦走では,1日に稼ぐ標 高差を小さくして順応する。 イ 水分補給 高所では呼吸回数が増え,乾燥もしているため,脱 水になりやすい。 ワンポイントアドバイス 脱水は急性高山病にかかりやすくなる。一度急 性高山病になると,吐き気を生じて水分補給がで きず悪循環になる。早めに水分を補給する。 (大城和恵) 3 高山病 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう 第7章 登山の医学 第7章 登山の医学 3 高山病 1.予防できる病気である 2.脱水とよく似ていて、併発しやすい 3. 死の危険を早めに見つけ、死亡を防ぐ 致命的な脳浮腫と肺水腫。急性高山病は悪化すると脳浮腫になる。肺水腫は急性高山病にかかっていなく ても発症する。どちらも下山で改善する。酸素は時間稼ぎでしかない。 ※準備するもの: 「登山の医学(登山部報)」https://sangakui.jp/ よりダウンロード可能 1. 急性高山病の決め手になる症状は無い (1) 高所に体が慣れないために高山病になる。症状 の現れ方や種類は人それぞれ。 (2) 症状を点数化して急性高山病を早期に発見する。 (レイクルイーズスコア:LLS) (3) スコアは自己評価によるので、負けず嫌いだと、 多少調子が悪くても、過小評価し得る。 (4) スコアは経時的につけて、標高と時間変化によ る推移をみる。 (5) 3点以上:高山病。標高を上げない。 5点以上:脳浮腫になる前に下山。 2.高山病を疑ったらまず2つのことをさせる 3. 高地肺水腫 本邦では2,000m 以上で発生が認められる。 2泊目の夜(second night)に発症しやすく、 アルプスの縦走で発症している。即時下山しな いと命を失う。天候が悪いとヘリコプターが来 れないため、救助到着に1日かかることもある。 事前にエスケープルートを確認する。一刻も早 く、少しでも標高を下げること。 4.予防 (1)ゆっくり登る 時間単位:2,000m 以上で宿泊する日はできるだ け時間をかけて登り、登っている間に ゆっくり順応する。 日単位:2,000m 以上の縦走では、1日に稼ぐ標 高差を小さくして順応する。 (2)水分補給 高所では呼吸回数が増え、乾燥もしているため、 脱水なりやすい。 急性高山病発生時のポイント 脱水と併発するので、両方の対応を行う。 急性高山病は進行すると脳浮腫を起こす。 早めの下山で予防が可能。 [ワンポイントアドバイス] 脱水は急性高山病にかかりやすくなる。一度急 性高山病になると、吐き気を生じて水分補給がで きず悪循環になる。早めに水分を補給する。 下山 作図希望 写真・イラ ストはイメ ジ ㊟2018LLSでは睡眠を除いたスコアリングを提唱している。 努力呼吸をしよう ⓵水分摂取1ℓ以上 ⓶ 3秒 30㎝ スポーツドリンク 経口補水液

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