安全で楽しい登山を目指して

7 第2章 山岳部の指導者に知ってもらいたいこと 2014 年(平成 26 年)に実施した高校山岳部員への 実態調査(全国 43 都道府県の 115 校の山岳部員 727 名から回答を得た)の結果を見ると,入部動機につい ては,「山や登山の魅力」を答えている生徒が 52% を 占めている。また,体力・技術・知識・精神力など登 山をする際の様々な力の向上や人間関係を育むことも 生徒たちの強いモチベーションとなっている。このよ うな生徒たちを前に,彼らのニーズに応えるべく,四 季を通して山や自然への興味や関心をさらに高め,よ り高い安全性を身に付けながら,登山を楽しめる生徒 を育成することが求められている。 文部科学省は環境教育の重要性について,「現在, 温暖化や自然破壊など地球環境の悪化が深刻化し,環 境問題への対応が人類の生存と繁栄にとって緊急かつ 重要な課題となっています。豊かな自然環境を守り, 私たちの子孫に引き継いでいくためには,エネルギー の効率的な利用など環境への負荷が少なく持続可能な 社会を構築することが大切です。そのためには,国民 が様々な機会を通じて環境問題について学習し,自主 的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが 重要であり,特に,21世紀を担う子どもたちへの環 境教育は極めて重要な意義を有しています。」と提起 を し て い る(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ kankyou/)。山岳部の活動は,21 世紀を生きていく上 でのキーワードでもある「環境教育」「防災教育」と いう社会のニーズにも則した活動である。 また,山ブームとも言われる昨今,安全教育という 観点で考えたとき,夏冬を問わず,実際のフィールド において,様々な経験を積ませることや,その危険性 を十分知らしめるための活動は,生涯スポーツでもあ る登山の土台作りとして,大きな意味がある。 山岳部の活動は,こうした時代の要請を背景にした, 生徒のニーズと社会のニーズの両面に応えるものでな ければならない。 (3)安全教育の観点を基本に据えて 高校時代に山に憧れる気持ちや勇気をもつことは長 い人生で素晴らしい花を咲かせることにつながるだろ う。しかし,自然を相手とする山岳部の活動は,一歩 間違えれば事故や遭難の問題にも直結する。情熱と勇 気だけではせっかくの経験も人生に益することは少な 表4 全国規模での高校生山岳部員の実態調査 山岳部に入ってよかったと思うこと(生徒による自由記述まとめ) (登山医学2015 山本,大西,村越) 項目 具体的な内容 割合 山や登山の 魅力 美しい景色や自然と出会えた,山 が大好きになった,登山が楽し い,クライミング,沢登り,スキー を知ることができた,など 52% 人との交流 よい友人(同級生,先輩,後輩) や指導者(顧問等)と巡り会え た,登山を通して様々な人と出 会うことができた,など 31% 体力や健康 の改善 体力がついた,健康になった, など 29% 精神面での 充実や成長 学校生活全体が充実した,自主 性,協調性,忍耐力,精神力が 向上した,自己発見ができた, 生活習慣が改善した,普段の生 活のありがたみがわかった,苦 手だった運動が好きになった, など 26% 知識や技能 の習得 炊事ができるようになった,有 事のサバイバル能力が身につい た,など 10% 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 図1 全国高体連登山専門部登録校数の推移 男子 女子

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