安全で楽しい登山を目指して

6 第1編 山岳部の指導者になろう (1)山岳部活動の位置づけ 高校山岳部の活動とは言うまでもなく,学校教育活 動の一環として行われるものである。2022年度に施 行される高等学校学習指導要領の第 1 章第 6 款の 1 の ウには,「教育課程外の学校教育活動と教育課程の関 連が図られるように留意するものとする。特に,生徒 の自主的,自発的な参加により行われる部活動につい ては,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲 の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す 資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一 環として,教育課程との関連が図られるよう留意する こと。その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々 の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団 体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運 営体制が整えられるようにするものとする。」と記述 されている。 山岳部の活動の中核をなす登山活動は,単に山に登 る事だけでなく,山に向かうための体力・技術・知識 などを高め,環境教育や安全教育などをも包括する幅 広い活動である。目指すものは,自立した登山者の育 成であり,それが生徒の全人的な発達という学校教育 の目的そのものに深くかかわる内容であることは言う までもない。 (2)近年の山岳部人気の高まり (公財)全国高等学校体育連盟によれば,山岳部の 活動は,沖縄県を除く全国46都道府県で展開されて おり,2017(平成29)年度の登録数は表1に示すよ うに,男子が 770 校 9,118 名,女子が 435 校 2,704 名 である。全国で高校生の数が減少し,高校の統廃合が 進む中で,加盟登録校数は減少傾向にある(男女併設 の部が多いことから男子の登録校数の推移で推定)が, 登録人数は 2008,2009 年を境に増加に転じ,男女と もにここ10年間増加傾向が続いている。全体の生徒 数が減少する中で,山岳部の人気は高まっているとい うことが見て取れる。 表1 全国高体連登山専門部加盟登録数の推移 (全国高体連の統計による) 年度 男子 女子 登録校 登録人数 登録校 登録人数 2004 1,105 7,484 565 2,133 2005 1,022 6,006 455 1,657 2006 988 5,501 399 1,556 2007 927 5,472 399 1,463 2008 889 5,427 370 1,406 2009 849 5,573 343 1,400 2010 821 6,052 331 1,545 2011 815 6,671 373 1,747 2012 822 7,505 378 1,812 2013 768 7,867 374 1,891 2014 792 8,954 431 2,221 2015 780 8,884 416 2,431 2016 766 9,924 433 2,674 2017 770 9,118 435 2,704 近年,山岳部に入部する生徒は増加している。山岳部活動は,学校教育活動の一環であることを基本に据 えながら,生徒のニーズと社会のニーズに応じた生徒の全人的な発達をサポートする活動である。安全登山 の観点に十分配慮し,自立した登山者を育てることを目標に活動を行うことが必要である。 第2章 山岳部の指導者に知ってもらいたいこと 1 高等学校山岳部とは 表2 全国規模での高校生山岳部員の実態調査(生徒分) (登山研修 VOL.30/2015 大西・山本・村越) 高校山岳部員の中学校時代の部活動経験 回収計 727名 回答 731(一部複数クラブ所属回答あり) 回収 43都道府県 115校 3年生217名 2年生259名 1年生251名 中学時代 山岳以外の運動部 山岳部 文化部 無所属 554 39 113 25 76% 5% 16% 3% 表3 全国規模での高校生山岳部員の実態調査(指導者分) (登山研修 VOL.30/2015 大西・山本・村越) 山岳部指導者の高校大学時代の部活動経験 回収計 44都道府県 169名 高校時代 大学時代 山岳部 運動部 文化部 無所属 山岳部 運動部 文化部 無所属 27 50 43 33 22 30 37 64 16% 30% 25% 20% 13% 18% 22% 38%

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