安全で楽しい登山を目指して

66 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう ツェルトは外界からの「隔離」を果たす “ 簡易テント ” で,便利な装備。 発想を転換して効果的に使おう。 (6)ツェルトの活用 ア ビバーク時のシェルター いざという時に頼りになる。立ち木やポールを使用 して張って使う他,かぶったり,くるまったり,換気 孔から顔を出すとポンチョにもなる。 イ 休憩時に外気からの隔離 行動食を摂るような,ゆっくり休む時に被ると体を 冷やさない。低体温症予防に効果大! ウ 日陰を作るためにタープとして張る 熱中症対策に,日陰のない場所では,日陰を作って 冷却効果を上げる。 エ 雪洞の入り口を塞ぐ幕にする 横穴式の雪洞では,入口から吹き込む寒気をストッ プして暖かく過ごせる。 オ 縦穴式雪洞の屋根にする スキーやストック等を骨組みにして雪洞の屋根にする。 カ 皆のザックを集めて一時デポする時に覆いとして使う 縦走途中に近くのピークを空身でピストンする時な ど,皆のザックを集めて包むと不意の雨にも安心。 キ 低体温症ラッピングの梱包資材として使う 低体温症の人に,「隔離」「保温」「加温」する際に, 「隔離」として用いる。ある程度の防水効果があるツェ ルトで「保温」「加温」した上から全身をパッキング して密閉することで保温効果が高まる。 ク 短距離を搬送するための応急担架にする 短い距離を搬送するなら,小石等を包むようにして 取手を作れば応急担架になる。素材の強度に限界があ り,長時間の搬送には使えない。 ケ 中に入って着替えなどに使う 濡れたウエアーを着替えたり,怪我の応急処置,ト イレをする際のシェルター代りになる。 コ 乾燥室として使う ツェルトを張り,中に濡れた物を吊るしてガスコン ロを焚くと,早く乾かすことができる。 ワンポイントアドバイス ツェルトは外界からの「隔離」の役目。 ツェルトに期待するのは,耐水性,耐風性,強 度,大きさや形状(居住スペースや用途により), 携帯性(収納時の大きさ,重さ)。最近は,エマー ジェンシーシートなど様々なものが「隔離」とし て市販されている。機能を理解し目的に応じて選 択する。閉鎖空間では,時々換気をしよう。 ワンポイントアドバイス 道警式低体温症ラッピング 登山で携行する資材を使って「隔離」「保温」「加 温」を行う。この図のブルーシートが「隔離」だ が,ツェルトで代用可能だ。 道警式低体温症ラッピングによる熱喪失抑制効果と山岳救助 における病院前有効事例(登山医学 vol.35: 48-54;2015) ワンポイントアドバイス 私や救助隊の方たちの使っている緊急シェル ターは,1.簡便な設営,2.密閉性良好,3.軽量 コンパクト収納,と優れものである。複数人での使 用に適した装備で,広げて,一斉に被るように,シー トの下側に入る。その時に,シートは空気を取り込 んで膨らみ,隔離シェルターが速攻で完成する。こ れ専用のシートは密閉性が高く設計されている所 が大きな利点で,複数名の体温で中が暖かくなる。 ツェルト,フライシート,冬なら外張りなどでも, 広げて,一斉に被れば,緊急シェルターとして一定 の効果が期待できる。是非試してみよう。 (大城和恵) (ツェルトを使用する場合は ラッピング用と搬送用とに分ける)

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