安全で楽しい登山を目指して

64 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう イ グループで用意したいもの カットバン 体温計 (風邪や熱中症を疑ったら使おう!) 三角巾 包帯 テーピング ガーゼ ポケットマスク 折畳式水筒 (湯たんぽ用,低体温症遭難は 通年発生しています) 万能副木 ワンポイントアドバイス 山で薬を使用する機会は高くありません。理由 は,①診断を適切に下せない状況で,薬で経過を 診るのは危険であること,②薬のアレルギーや副 作用が発生した場合に,すぐに対処できる環境に ないこと,からです。山で必要な処置は,あくま でも下山までの応急処置です。皆さんは,医療者 ではありません。間違った判断を行わないために, 下山の補助と考えましょう。 ウ 特殊な環境で用意したけれど・・・ (注意)パルスオキシメーター 体内に取り込まれている酸素の量を指 先で測定する機器。これは医家向け医療 機器として,医師の指導の下で使用される機器で,管 理医療機器・特定保守管理医療機器に分類されている。 操作自体は簡単で,指先に装着することは誰でも可能 だが,測定値の持つ意味はその人の状態によっても異 なるため,測定値の判断は医療専門の方の指導を仰ぐ ことが必要である。 2,000m以上への山行では助けになることがある。 ただし,高山病は血中酸素の量では決まらないため, 数値が高いから大丈夫,という判断はできない。一方, 数値が低い場合には参考にしやすい。致命的となる「高 地肺水腫」,低山であっても肺炎など呼吸器の病気に なると数値が低くなる。数値が他の生徒より低い場合 は,早期に緊急性を疑い,速やかに救助要請し下山さ せる。数値が高いからと言って緊急性がない,とは言 えないのだ!数値だけから非医療者が判断をしてはい けない。 ▶事前指導のポイント 次の山行で,どんな病気や怪我が起こりやすいか 考えさせ,それに応じて選択する。 (例 ) ア 夏の1,500m登山 自作経口補水液パウダー,虫除けスプレーは個人 装備!エピペンⓇ処方して貰った人は持って行こう。 イ 岩場の多い山 バンドエイド,ガーゼ,包帯,万能副木はグルー プ装備として分担して持って行こう! ウ 秋の2,500mの縦走 経口補水液,エピペンⓇは個人装備,プラティパ スとパルスオキシメーターはグループで持って行こ う。薬は虫刺され用だけにして,必要になるくらい なら下山しよう。 エ ファーストエイドキットが無かったら? 血が出たけどガーゼが無い,脱水だけど経口補水 液が無い,そんな場合に,何を使って応用できるか, 事前に話し合ってみよう。 山で本当に必要なのは,薬以上に,知識と知恵で す!! ◉パルスオキシメーターを使用した危険事例! 3,000mを登山中。仲間のパルスオキシメーター の数値が一人だけ 60 台と低い。本人は「元気!」 というので山行を継続。朝起きると倒れて意識 がなくなっていた。 ワンポイントアドバイス せっかくパルスオキシメーターが警告サインを 出したのに,数値の持つ意味を判断できずに,命 を失いかねないケース。自信の無い医療機器は使 用しない!使用する場合は,医療者の指導が必 要! (大城和恵)

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