安全で楽しい登山を目指して

57 第4章 読図とナヴィゲーション 【演習問題4】 図8の写真は地図の○印当たりから撮られたもので ある。地図のa~eは写真のどれに対応するだろうか。 解答図はp.60。 図8 地図と風景の対応 地図は,写真と同じ方向を向いている(地図の上が写真の奥側,地 図の下が写真の手前側) (3)実践的な現在地把握 ア 常に現在地に疑いを持つ 自然の中では現在地には常に疑いの余地がある。こ の際,漠然と「間違っているかもしれない」と疑うだ けではなく,思った場所にいないとしたらどこにいる 可能性があるのかを具体的に考える。これにより,正 しく現在地を把握する可能性が高まる。 イ 複数の情報を使う 一つ一つの情報が不確実な場合,確実性を高めるた めに複数の情報を利用する。たとえば道の分岐だけで 現在地を確認したら,別の分岐と間違えている可能性 がある。それに分岐する道の方位が加われば確実性は 高まる。さらに,たとえば鞍部といった地形を加えれ ば確実性はさらに高まる。 ウ 論理的に考える 論理的に考えることで,情報の不足を補うことがで きる。特に「仮想によるロジック」は情報の不足を補 う最大の武器となる。「もし**にいるとしたら,北 に進めば××が見えるはず」といった論理的考え方 も,見える範囲では十分でない情報を補うことにつな がる。 エ 精度を変える(点,線,面) 一般の登山では,はっきりした登山道を歩くことが 多い。間違えるような分岐がなく,登り続ければ確実 に山頂に到達する場合には,現在地の把握は線状,つ まりその登山道のどこかにいると分かればよい。 現在地の把握を線から点にシフトする必要が生じる 場合がある。下りの登山道では,地図にない枝道や踏 み跡があるケースがある。この場合,どちらを選ぶべ きかは,道標がなければ,自分で判断しなければなら ない。そのためには,現在地を点で把握する必要があ る。 雪山ややぶこぎ登山,あるいは自由に移動可能な荒 野では,方向維持の努力をしていても,現在地の曖昧 さが二次元的に広がる。だが,「この領域の中にいる はずである」と言えれば十分なケースもある。これが 面による現在地の把握である。面または線に広がって しまった現在地を,面から線,そして線から点へと絞 り込んでいくことが現在地把握のポイントである。 演習5】 図8の写真は地図の○印当たりから撮られたもので る。地図のa~eは写真のどれに対応するだろうか。 答図はp.*。 図8:地図と風景の対応】 は、写真と同じ方向を向いている(地図の上が写真の奥側、 の下が写真の手前側) 実践的な現在地把握 常に現在地に疑いを持つ 然の中では現在地には常に疑いの余地がある。この 漠然と「間違っているかもしれない」と疑うだけで く、思った場所にいないとしたらどこにいる可能性 るのかを具体的に考える。これにより、正しく現在 把握する可能性が高まる。 複数の情報を使う つ一つの情報が不確実な場合、確実性を高めるため 数の情報を利用する。たとえば道の分岐だけで現在 確認したら、別の分岐と間違えている可能性がある。 大の武器となる。「もし**にいるとしたら、北に進めば ××が見えるはず」といった論理的考え方も、見える範 囲では十分でない情報を補うことにつながる。 ④精度を変える(点、線、面) 一般の登山では、はっきりした登山道を歩くことが多 い。間違えるような分岐がなく、登り続ければ確実に山 頂に到達する場合には、現在地の把握は線状、つまりそ の登山道のどこかにいると分かればよい。 現在地の把握を線から点にシフトする必要が生じる場 合がある。下りの登山道では、地図にない枝道や踏み跡 があるケースがある。この場合、どちらを選ぶべきかは、 道標がなければ、自分で判断しなければならない。その ためには、現在地を点で把握する必要がある。 雪山ややぶこぎ登山、あるいは自由に移動可能な荒野 では、方向維持の努力をしていても、現在地の曖昧さが 二次元的に広がる。だが、「この領域の中にいるはずで ある」と言えれば十分なケースもある。これが面による 現在地の把握である。面または線に広がってしまった現 在地を、面から線、そして線から点へと絞り込んでいく ことが現在地把握のポイントである。 【図9:現在地把握の精度】 地図には描かれていないが実際にはあるはずの登山道をaからg に向かって歩いているとする。最初a の鞍部にいたことが分かっ ている(点での現在地の把握)。北向きの尾根を移動すると、現在 地の範囲はcの尾根のどこかとなる(線での現在地の把握)。道が 巻き道になりはじめ左下りの斜面上になった(b付近にいる。面で の現在地の把握)。gに下るにはdのピークを把握する必要がある 図9 現在地把握の精度 地図には描かれていないが実際にはあるはずの登山道をaからg に向かって歩いているとする。最初aの鞍部にいたことが分かっ ている(点での現在地の把握)。北向きの尾根を移動すると,現在 地の範囲はcの尾根のどこかとなる(線での現在地の把握)。道が 巻き道になりはじめ左下りの斜面上になった(b付近にいる。面で の現在地の把握)。gに下るにはdのピークを把握する必要がある (点での現在地の把握)。そのためには,面に広がった現在地を線に する(たとえば,右(東)の尾根上に登りcの尾根線にいることを 確認(線での把握)後,北に進んでもっとも高い部分に出る(点で の把握)。あるいは北に進みeの尾根を把握(線での把握)後,右 (東)に登りdに到る(点での把握)。ナヴィゲーションとは,この ように移動により線/面に広がった現在地を必要な場所で点に収束 するスキルと考えることもできる。

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz