安全で楽しい登山を目指して

55 第4章 読図とナヴィゲーション 【演習問題2 解答例】 等高線上でないものは標高の数字は切り捨てとし た。また斜面の方向が特定できないものは,言及しな い。 a:標高 2,350m,尾根,傾斜は西側は比較的急で, 東側は比較的なだらか。b:2,360m,尾根(鞍部), 比較的なだらかに思われる。c:2,370m,ピーク,な だらか。d:2,390m,かなり急な北東向き斜面。e: 2,330m,かなり急な西向きの斜面。f:2,310m,谷, 比較的なだらか。g:2,370m,尾根,比較的なだらか。 ▶指導のポイント 等高線から地形を読み取ることは地図読みの基礎 であり,ナヴィゲーションで最も役に立つ情報であ ることを常に意識しよう。 3 プランニングと先読み (1)行程とリスクの把握 地図はナヴィゲーション以外にも,山域や登山道の 全体像を把握したり,リスクに備えるために活用でき る。行程や累積標高,あるいは登山地図を利用してコー スタイムの予想がつけば,自分に歩き通せるかが分か る。これが行程の把握である。行程を把握すれば日没 によるトラブルを減少できる。 登山中のリスクは多様だが,その源は大きく分けれ ば,大気(天候),地面(傾斜や路面),登山者本人, 動植物,の4つである。このうち地面に関するリスク は地形図の地表面に関する記号から分かる。また植生 は天候への脆弱性を教えてくれる。エスケープルート・ 代替ルートも含めて,地図を使った事前のプランニン グによって,リスクを事前に低減することができる。 事前のプランニングによって,ルートの全体像を把 握できる。ルートはどのような地形を通っているのか, 方向の変化はどうなのか,を事前に地図を読むことで 把握できる。概念図を作成することで,それがより確 実になる。 こうした事前の地図読み取り事例は p.60 に示した。 関連して登山計画については p.26 に触れた。 ▶指導のポイント プランニングや先読みは現在地把握とルートの維 持を確実にする。動き出す前に地図を読む習慣を付 けよう。 (2)先読みで道迷いを防ぐ 動き出す前に地図を読むことでリスクを下げること ができる。その際,必要かつ確実に分かる地点に絞っ て現在地の把握を行うことが現実的である。それが チェックポイントである。 チェックポイントの要件は,確実に現在地を把握で きる特徴があると同時に,ナヴィゲーションの大きな 失敗を回避するために確実に把握すべき場所だという ことである。ただし確実に把握できるかどうかは自分 のスキルに依存し,確実に把握すべきかどうかはルー トの特徴にも依存する。 【演習問題3】 プランニングや先読みによるリスクの回避は,普段 の練習でも取り組めるよい机上練習課題となる。図 11(p.60)に示したルートについて,行程やリスクを 把握してみよう。 4 コンパスを使う (1)コンパスはなぜ必要か? コンパスがあれば,北の方向が分かる。そして,北 が分かれば任意の方向が分かる。それによって地図か ら読み取ったとおりの方向に進むことができ,結果的 にルート維持が可能になる。これがコンパスの基本的 な機能である。 また,陸上では,進路の方向を定めることよりも, コンパスは現在地や進路を「絞り込む」道具としての 利用価値が高い。たとえば尾根にいるというだけでは 図5の尾根のどれにいるか分からない。しかし,もし コンパスによって尾根が北西に向いていることが分か れば,現在地はぐっと狭まる。これが「絞り込み」の 意味である。 ルート維持においても,登山道を歩く場合にはいく つかの選択肢の中から正しいものを選ぶことになるの で,原理的には「絞り込み」の考えが使える。 図5 現在地を絞り込むための方向の利用 尾根というだけでは abcd のいずれの可能性もあるが,もし尾根が 北東向きであることが分かれば,aの上部またはbのいずれかに いることが分かる。

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz