安全で楽しい登山を目指して

51 第3章 歩行技術 (6)滑落停止 生徒には滑落停止を練習する前に雪面では絶対に転 ばないように丁寧に歩くことを力説してほしい。本当 に滑り出してしまったら止めることは容易ではない。 それを前提にして滑落停止のやり方と練習について触 れておく。 ・初期動作 バランスを崩して転ぶのは下りが多い。アイゼンを 引っかけたり,雪面の固さが微妙に変わったのに対応 できなかったり,湿雪がアイゼンにくっついて雪団子 のようになり滑ったりなどの原因があげられる。 転んだらすぐにピッケルを雪面にしっかりと刺し止 めることである。ピックか石突きを雪面に突き刺すこ とが大切である。そのために下りではピックは後ろ向 きにして持たなければならない。 ・滑落停止姿勢 うつ伏せになり,自分の利き腕のほうの肩甲骨の下 あたりに握ったピッケルのブレードを当てピックに体 重を乗せ雪面に刺す。 両脇をしっかりしめる。 アイゼンを着けている足を上げる。足を上げないと アイゼンの前爪が斜面に引っかかり,体が反転して頭 から滑ったり跳び上がって首の骨を折るような事態に 陥るからである。 ・基本姿勢 高校生が滑落停止の練習をするときは,まず滑落し ないような場所で基本姿勢を確実に体得する。その後 短い斜面で滑っても必ず止まるところで,少し滑って すぐ止める,少し滑ってすぐ止めるを繰り返す。決し て加速してから止めるようなことをしてはならない。 滑るのが目的ではない。転んだときにすぐ止めるのが 目的である。 本当に滑り出して加速がついてしまったら絶対に止 まらない。 (谷口浩平) 滑落停止のときのピッケルの握り方 滑落停止の基本姿勢

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