安全で楽しい登山を目指して

50 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう エ 荷物を背負わずに練習だけで,歩行できる気に なって満足しないように注意すること。リュックだ けの動作への影響,荷物の重量の動作への影響など も体得してほしい。 歩行技術は,動作と下肢の筋力と全体の平衡感覚 を,徐々に慣らして向上させていくことに注意してほ しい。この練習を通じて,次第に筋力とバランスが養 われる。形にとらわれる前に,基礎的な動作と筋力・ バランスの習得を体得することを目指す。 ○ ピッケルについて ピック ブレード ヘッド シャフト 石突 (スピッツェ) ピッケルバンド (リーシュ) ピッケルはヘッドの上から握るようにして持つ。 ピッケルバンドは手首に通すものと上半身にたすき掛 けにするものがある。高校生は後者のものがよい。こ れはトラバースのとき山側のピッケルを突けるからで ある。状況に応じて左右の手に持ち替えられる。首に かけず必ずたすき掛けにすること。首かけにするとな にかのはずみで首が絞まってしまう恐れがある。 ピッケルの各部はそれぞれの機能に応じて独特な形 状を持っている。ピックは雪面などに突き刺さるよう に,薄くて細い。スリップが小さいうちに素早く滑落 を止める助けになる。ブレードは雪面にステップを削 るために鍬のような形をしている。石突の先は,杖の 先として歩行中のバランスを補助する。たとえば,登 りはピックを前にして雪面側に,下りはピックを後ろ にして雪面側に向ければ,雪面にピックが突き刺さり やすく,スリップを止めやすい。ただし,雪面の角度 や雪の硬さに応じて,ピッケルの持ち方や構え方,歩 き方も適切に変化させることも必要である。また,道 具を使用する習熟度,機能より疲労の少なさや持ちや すさなどによっても持ち方は変わってくる。場面に応 じて,良く考えて実践的に学んでほしい。 (5)耐風姿勢 稜線や斜面で強い風,特に断続的な突風が吹いてい る時には,即座に耐風姿勢を取って,風をやり過ごす。 突風に対し瞬時に体が反応して耐風姿勢を取るように 練習する。耐風姿勢では,緩斜面ではピッケルの石突 と両足で三角形になるように,ピッケルを突き,バラ ンスを崩されないような体勢を瞬時に作る。風が収 まったらしっかり足場を作ってからピッケルを抜く。 ピッケルの持ち方 ピッケルの各部位の名称 耐風姿勢

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