安全で楽しい登山を目指して

49 第3章 歩行技術 (4)雪山での歩行練習 初めての歩行練習は,あまり急な斜面でなく,10m 以内程度の短い距離で実施する。練習はアイゼンな し,アイゼン装着でやってみよう。 練習の例 段階1 斜面の上側を向いた登下降 まずは荷物を背負わずに以下の①②を繰り返し,次 に③も行う。 ①ピッケルなどを補助に突きながら,斜面の最大傾 斜方向にまっすぐに登る(直登と呼ばれます)。 ②両手やピッケルなどを補助に突きながら,山側の 斜面側を向いたまま,一歩ずつ降りる。 ③両手やピッケルなどを補助に突きながら,山側の 斜面側を向いたまま右方向,左方向それぞれのトラ バースをする。 段階2 斜面の下側を向いた下降 ①直登して,止まって,ピッケルのブレードを使っ て奥行30㎝くらいの段(ステップ)を雪面に削り 出す。 ②この段に乗って,ピッケルの石突を強く突き刺し て,これを補助にしながら,最大傾斜の下側に向かっ て姿勢を慎重に反転させる。 ③平な段から,一歩ずつ十分にアイゼンの多くの爪 を雪面に強く効かせながら,ピッケルの石突を差し 替えながら補助にして,慎重に下る。 段階3 斜面山側を左(右)側にして,同じ高さをト ラバース 最大傾斜を見上げて,右方向にトラバースしようと すると,斜面山側が左になる。自然に左足が斜面の 高い位置に来て,右足が斜面の低い位置になる。山 側の左足はトラバース進行方向を向け,谷側の右足 は最大傾斜方向に靴先をハの字にフラットに爪を強 く効かせる。斜面の傾斜が緩ければ,ピッケルを左 手に持って,斜面側を突く。斜面の角度が急であれ ば,段階1②のように常に斜面側を向いたまま,蟹 のように横に移動する。さらに効率良く移動する方 法もあるが,高度なテクニックとなる。 段階4 斜面を斜めに登り,下りは上記の段階1②ま たは段階2と組み合わせる。 段階5 斜面を斜めに登り,段階2②の後に,斜めに 元来たところ段階3の姿勢を取って,斜面にピッケ ルの石突を強く突きながら,最大傾斜方向に(谷側) 下る。 段階6 斜面を登り,段階2②の後に,斜めに新しい 斜面を最大傾斜方向に下る。この下りは段階1②③ の組合せ,または段階2③の方法を取る。 段階1~6の技術を使ってイラストにあるような歩 行練習を行う。最初は荷物を背負わず,次に空のザッ クを背負って行い,さらに荷物の重量を段階的に増や す。 【歩行上の注意点】 ア 軟らかい雪質では,足が埋まり込んで,つぼ足と なる。靴底に付着・堆積する雪をピッケルのシャフ トで叩いて落としながら歩くように注意してほし い。 イ 硬い雪面では,無理してキックステップせずに, 斜面になる前にアイゼンを装着すべきである。 ウ 雪に踏み込んで基本は,靴底を雪面にフラットに 置く。アイゼンでは特にそのようにする。 わかん歩行時の足の運び方 ↑最大傾斜の方向 ① ② ③ ④

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