安全で楽しい登山を目指して

48 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう とで後続の生徒が安心して歩ける。安心して冷静にな れば不用意に危険なところに足を置いたり,どうして よいかわからなくなりパニックに陥って動けなくなる こともなくなる。 ロープを使った確保については,第 6 章「ロープワー ク」参照。 (12)徒渉 登山道は尾根上や沢に沿ってなど様々なところに付 けられている。途中,沢を渡ったりすることもある。 水量がさほど多くない場合は飛び石づたいに渡る。人 が多く入っているところであれば,安定した石がある のでそれに乗って渡る。浮き石,滑りやすい石などが あるので十分な注意を払いたい。 上流に雨が降ったりして水量が多い,まして水が茶 色く濁っている場合の徒渉はあきらめたほうがよい。 一時的なにわか雨であれば,小一時間ほど待てば水が 引いて渡れるようになる。 生徒が不安に感じている場合は手をさしのべたり, 補助ロープがあれば先頭と最後尾の指導者・経験者の 間にフィックスドロープを張る。ちょっとした補助が あれば安心して徒渉ができる。 あらかじめ水の中を歩かなければならないことがわ かっている場合は,ゴム底の運動靴や渓流タビ・渓流 シューズに履き替えて渡る。登山靴で水に入り,靴の 中を濡らすのはその後の登山行動に支障をきたすので 極力避けたい。また裸足になって徒渉するのも滑った り,足を切ったりするのでやめたい。 2 積雪期の歩行技術 日本は南北に長く,その気象条件は地方によって大 きく異なっている。6 月になっても 3,000m 級の山々 は当然のこと,東北や北海道の山地には残雪がある。 そうした山を安全に歩くために積雪期の歩行技術は必 要である。 (1)アイゼンを使わない登下降 前掲のキックステップで歩く。 (2)アイゼン歩行 ・歩き出す前に まず安全な場所でアイゼンを確実に装着する。平ら な場所ならよいが,斜面でアイゼンを装着する場合は まずその場の雪をしっかりと踏み固めて整地する。 安定した場所でつけること。その時に左右が正しく 着けられているか確認すること。(留め具が足の外側に くる)バンドのねじれやゆるみがないか確認すること。 ・歩き方 アイゼンなしの時より足と足の間隔を開くように意 識して歩く。また木の根や岩などが雪の中に隠れてい ることがあるので,アイゼンの爪を引っかけないよう に注意して歩く。基本はフラットフッティングで足裏 のすべての爪を雪面に刺して歩く。 ・登るとき キックステップと同様に爪を蹴り込んで登る。その 際手に持っているピッケルやストックを使ってバラン スを取る。 ・下るとき 下りはフラットフッティング。特に雪面が氷化して固 くなっている場合は爪をしっかりと雪面に刺して下る。 (3)わかん歩行 深雪ではわかんやスノーシューがあると足が雪にも ぐりにくくなり楽に歩ける。装着するときの注意はア イゼンと同様。 ・歩く時に気をつけること わかんをはいた足で自分のもう一方のわかんを踏ん で転ぶことがあるので,アイゼンを着けている時より も足幅を開いて歩くようにする。 ・斜面をトラバースする時の歩き方 無雪期と同様,山側の足をまっすぐ,谷側の足をや や下側に向けて歩く。ピッケルは山側に突く。 フラットフッティング

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