安全で楽しい登山を目指して

47 第3章 歩行技術 つながりかねないところもある。そういったところを やむを得ず通過するときは,指導者(顧問等)がまず 先頭をゆっくりと歩き落石や浮き石などがないか確認 する。その後一人一人焦らずに慎重に歩かせるように する。 最後尾は別の指導者(顧問等)が歩くのが望ましい。 (8)気を付ける場所 稜線で片側が切れ落ちて崖になっている所や,やせ 尾根は特に注意が必要である。尾根の端が草で覆われ ていて見えなかったり,端の方の土がゆるんでいたり する所に足を踏み込むと転げ落ちることがある。こう した所では「山側に寄れ!」とか「左側足下注意!」 など大きな声で注意を喚起したい。 (9)トラバース(山腹を横切る)道の歩き方 トラバース道を歩くときは,進行歩行に向かって山 側の足をまっすぐ,谷川の足を少し谷に向けて歩くと バランスがとれて安定する。これは積雪期も同様であ る。 (10)雪渓を登下降するとき 北アルプスなど 3,000m 級の山では夏でも雪渓があ る。こうした雪の斜面をアイゼンなしで歩くときは キックステップで歩く。登りでは登山靴のつま先を雪 面にしっかりと蹴り込む。蹴り込んだつま先から雪が 扇を広げたようにパァッと散ればステップが刻まれて いる。そして蹴り込んだらつま先に体重をかけて一段 上る。これを繰り返す。雪渓は凍っているところや シャーベット状の所など固さも異なるので慎重に歩き たい。またスプーンで削ったようなへこみがある(ス プーンカットという)のでそこに足を置くと歩きやす い。 下りでは逆にかかとを蹴り込んで降りる。ただし, 雪渓は雪が融けたり凍ったりを繰り返しているので滑 りやすい。アイゼンを装着して歩くのが無難である。 (11)補助ロープの持参,セットの仕方 ガイドブック等を見てコースを研究し登山道に岩場 など注意を要する箇所がない場合は,特に補助ロープ は持っていかなくともよい。しかし,北アルプスの穂 高岳周辺などで岩場の通過があり,生徒が安心して歩 けるようにするには8㎜×20m程度の補助ロープと 60㎝・120㎝のソウンスリングを 2 本ほど,環付きカ ラビナを 2 枚ほど持って行くとよい。 状況に応じてフィックスド(固定)ロープを張るこ トラバース道の歩き方 登りのキックステップ 下りのキックステップ

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz