安全で楽しい登山を目指して

33 第2章 高等学校山岳部の活動計画 山岳部の活動をより楽しく安全に行うためには,トレーニングや学習を通じて体力や技術力,知識力を高 めることが不可欠である。単に山に登るだけではなく,安全登山ができる体制を整えるために,一週間の活 動計画を策定し,日常の活動を活性化したい。計画を立案し,山行を実施,下山後は総括して改善するとい う PDCA サイクルに基づいた活動を考えることが大切である。 (1)定期的なミーティング 山岳部の活動は,山に行く活動がメインの活動であ るが,そのためには計画をきちんと立て(Plan),山 行を実施し(Do),下山後は総括して(Check),次の 目標にむけてのトレーニングを積む(Act)というサ イクルを回すことが重要である。具体的には,毎週定 期的にミーティングを行い,計画書作り,山行後の総 括とそれに基づいたトレーニング計画等の立案並びに 山行報告書の作成などを行う。 計画書作りと同様,報告書作りも重要なポイントで ある。前回の山行の総括をし,反省事項の洗い出しを する中で出てきた体力や技術力の不足や失敗経験は, 次回までに少しでも補えるような活動やトレーニング として活かし,それを次の計画に反映させることで目 的を持たせることができる。1 ケ月に 1 回の山行をそ れだけで終わらせずに,「PDCA」というサイクルの 中に位置付けることで,全体の活動の活性化がもたら されることになる。 (2)日常の体力技術トレーニング 山岳部は文字通り「山へ行ってこその世界」ではあ るが,実際に山行に費やせる日数は,多くても1年間 で50日程度であろう。山岳部は運動部の範疇に位置 付けられているものの,大会での好成績を目指して毎 日トレーニングに励む通常の運動部とはやや性格を異 にしている。しかし,登山は活動時間も長くハードな スポーツであり,運動強度的(注1)には,ジョギン グやサッカー,テニス,スキー,スケートなどと同じ 7メッツ台(注2)の強度がある。また,体力不足で 動けなくなったからと言って,緊急搬送がただちに可 能なわけではない。それらを考えたとき,日常活動の 中での山への体力や技術のトレーニングは極めて重要 である。 だからこそ,日常のトレーニングなど下界にいると きに部活動として何を行うかは,その部のあり方その ものを現すとともに,安全登山に直結する。動機づけ は難しいが,日常の部活動の充実を図ることが,安全 登山のための第一歩となる。 先に述べた週1回のミーティングにおける計画書作 りをメインに1週間のメニューを決めて活動をするこ とが重要である。 具体的には「体力トレーニング」,「天気図や医療, 読図などの知識を高めるための机上学習」,「合宿準備」 などを 1 週間の中で計画して実施する。学校によって は「クライミング」を取り入れている学校もあろう。 これらの活動を日常活動の中に組み込んで,生徒の登 山に対する体力,技術力を高め,安全登山ができる体 制を整えていくことが重要である。 注1)運動強度,注2)メッツについては,第3編 第 8 章5「登山に必要な体力レベル」を参照 第2章 高等学校山岳部の活動計画 1週間の活動計画(例) 曜日 活動 具体的な内容 月 ミーティング 合宿(山行)計画の立案・山行の反省・トレーニング計画作成等 火 体力技術トレーニング ランニング・ストレッチ・負荷訓練・ボルダリング・ロープワーク等 水 休養日 木 机上学習 気象(天気図作成等),読図,登山医学,運動生理学,登山文化等 金 体力技術トレーニング ランニング・ストレッチ・負荷訓練・ボルダリング・ロープワーク等 土 合宿(月1回程度) 体力トレーニング(月1回程度) 月1回程度,合宿(山行) *合宿の前の週は,近隣の山での体力トレーニング 日 合宿(月1回程度) *合宿のない週は休養日 月1回程度,合宿(山行) 1 日常の活動計画

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