安全で楽しい登山を目指して

26 第2編 登山を計画しよう ルートについては主に地形図や登山地図,ガイド ブックなどで調べる。できるだけ最新のデータを選択 する。地形図に掲載されている道がすでに廃道になっ ている場合なども確認する。 これまでの自分たちの山行記録をもとに,一般の登 山道であれば,例えば標高差 100m を何分間で登れる か,あるいは下れるか,標高差が例えば50m以下を 緩やかに上下するような地形では,1㎞を何分間で移 動できるか,荷物の重量が10㎏増えるごとにどのく らい速度が落ちるかをトレーニングの一環として整理 しておくと,計画に役立つ。 登山日まであと 2 週間くらいになってきたら,気象 情報で大きな大気の状況,前線や低気圧,高気圧の動 きや配置などに関心を持ち,注意し始める。直前の1 週間では,さらに詳細に低気圧が日本に対して通過す る位置なども確認しておく(詳細は第3編9章「山の 天気」を参照)。大まかに天候の変化を把握しておく ことも事前の大切な備えになる。 ▶指導のポイント ア 最新の複数のネット情報を比較する。 イ 先輩の報告書や記録を参照する。 ウ 気象情報は必ず調べる。 (3)登山計画を練る 安全に登山するには,詳細な登山計画を練る必要が ある。メンバーで一緒に登山計画を練り,情報を共有 することが大切である。もし計画途中でメンバーが疑 問や不安に感じることがあったら,遠慮なく言っても らうことが前提である。先輩や支援体制の関係機関(登 山計画審査会)からの助言も参考に,色々な場合を想 像しながら,計画を立てる。どんな登山も講習会もや るたびに新鮮な気持ちで計画を立ててほしい。たとえ 定例行事であっても,油断せずに丁寧に見直してほし い。 何らかの合理的な理由で,計画を切り替えることも ある。そのための新たなルートについても同様に検討 する。そのルートで間違えやすい場所,転落や滑落な ど,雨が降ったら危険な場所,樹木が低いか少なくて 吹きさらしになる場所などの確認を怠ってはならな い。 講習会では悪天や予定外の新雪で当初の計画を変更 し,サブプランに切り替えることもある。その場合に もメンバー全員(リーダーや指導者も含む)で事前に 話し合い,十分に下調べをして,計画を共有し,安全 性に問題がないか必ず検討しておく。 以上のように,メインの計画は 1 本であるが,可能 性のある計画切り替えに備えると,複数のサブプラン (エスケープや引き返し含む)も準備する必要がある。 だから計画には予想以上に時間を要する。大きな計画 ほど,前もって早めに計画や調査が必要になる。そう すれば,サブプランの安全性も高まり,計画を切り替 えて,実行することが可能になる。 集合時間,集合場所の確認,交通機関の利用方法, 料金などアプローチに関することも具体的に事前に決 めておく。登山では重い荷物を担いでいるため,駅で の乗り換えやバス停への移動には余裕をもった計画を 立てる。集合時間に遅刻する者があることも予想して, 予定より 1 本か 2 本後くらいの時刻も調べておく。 入山後の登山行動では地形図を中心に,概念図の作 成,ルートの主要な特徴物の確認,ルートの危険箇所 も探す。さらに等高線 1 本 1 本をどのような方向から どこに向かって横切って移動するルートであるのか, その時の風景を想像しながら,地形図上での移動を楽 しむ気持ちでルートを読み込む。詳細は第3編第4章 「読図とナヴィゲーション」を参照) テント生活では,幕営地や水場の情報などはイン ターネットの最新情報が役に立つ。食糧計画ではカロ リーや栄養,総量だけでなく,調理や保存がしやすく, 楽しく安全に食事ができるようにメンバーで考える。 山での食事は一番楽しみな時間でもある。 皆が喜ぶメニューやお楽しみの飲み物,デザートな どでリラックスできるように工夫する。食物アレル ギーにも注意する。予備の食糧も考えておく。合宿で は主食が不足することもある。予備のコメや乾麺な どの量も検討しておくと良い。(関連は第3編第2章 「生活技術」を参照) ▶指導のポイント 安全に登山するために,現場での急な計画変更を 避け,事前に十分に考えた複数のサブプラン,エス ケープ,引き返すなどを実行する。それらの計画は メインの計画と同じくらい十分に調べて,準備する。 (4)緊急時の連絡系統 一般登山や講習会等にかかわらず,悪天や雪崩など によって命や重度の障害に関わる遭難事故が発生する 前に,あらかじめ緊急時に対応できるような緊急連絡 体制を構築しておく必要がある。 P.28 には事故が起きた時の緊急連絡体制(例)を, P.29には緊急時対応マニュアル(例)を示す。命に 関わる緊急性の高いものを優先して,連絡する。「山 岳事故です!」などの一声から,受信者に状況を端的 に理解してもらう。 この図は,遭難者を含む班や講習会などに関係が近 い小さな枠組み,及びそれを取り巻く関係機関からサ

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