安全で楽しい登山を目指して

190 参考資料 9 を起こさないためにも、学校への支援の強化を図るとともに、本件講習会主催者 である高体連に対し、再発防止に向けて適切な行政指導を行っていく必要がある と考えられる。 (3) 実技講習の計画変更に関する問題点と安全配慮への措置 講習会の当初の計画段階で代替案が検討されていなかった。仮に講習会の当初の 計画段階で代替案が検討されていなかったとしても、講習中に、計画変更決定に関 わる者が気象状況を的確に把握する努力をし、先見性を発揮し、三日目の計画変更 の可能性を念頭に入れ、十分な情報収集に基づいて訓練内容や行動範囲を明確にし た計画を立てる必要があった。 計画変更決定の過程で、本件雪崩事故現場付近における過去の講習会の経験及び 雪崩の危険性に係る有益な情報が全く共有されないまま淡泊な協議により計画変更 が行われた。このため、他の講師等に対する訓練目的に係る説明が明確性を欠き、 行動範囲についての表現も曖昧になり、実際の雪上訓練も弛緩したものとなった。 一方で、各班を指導監督する講師、引率教員においても、生徒の安全確保のため 変更された計画内容のみならず、当該進行ルートについての地形、天候等の注意事 項等についても、講習会役員らに対して明確に確認した上で講習を開始すべきで あった。講習会役員によるこれらの点に関わる説明が不明確であったならば、生徒 の安全確保を最優先するとの観点からも、講習実施に関して講習役員から納得でき る説明を引き出す努力をすべきであった。 (4) 1班の主講師の引率中の措置と安全配慮義務 いまだ心身共に成長途上にある高校生を対象とする雪上訓練を行う場合には、 不慮の事故を避けるためにも、生徒に対し、事前及び訓練中に適切な指示、注意を 与えることが必要であった。 尾根斜面に出た節目の局面で、他の講師と連絡を取って互いに取るべき行動を確 認し、計画変更決定者間の合意に反して訓練の行動範囲を広げることなく、下山に 向かうなどの安全を配慮した措置を取る必要があった。 尾根斜面で隊列を前に進めるのであれば、講師が隊列の先頭あるいはこれに準じ た位置に移動し、常に雪崩、滑落等の危険個所の存在に細心の注意を払うといった 措置を取るべきであった。 雪崩等の危険性についての認識が当初はなかったとしても、新雪が積もった尾根

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