安全で楽しい登山を目指して

191 資料3 10 斜面を多数の生徒が隊列をなして進行すれば、斜面を上がっていくに従って生徒ら の生命・身体を雪崩や滑落の危険にさらすおそれがあることについて、雪山経験が あり、雪崩の生じる条件について基本的な知識を有する講師としては、これを認識 し得たはずであり、この点についての予見可能性はあったものと考えられる。 なお、講習会における1班の雪上訓練中に先頭グループの中の生徒から示された 意向と引率者の安全配慮義務違反との関係を判断するに当たっては、当該学校登山 の性質・危険性のほか、これに参加して事故に遭った生徒の学年・年齢、これに伴 う判断能力の程度が重要な要素になる。生徒の自主的な判断の表れとも受け取れる 前に進みたい旨の意向が示されたとしても、それによって、生徒に対して適切な注 意を与え、状況に応じて具体的な指示を出し、事故を未然に防止すべき引率者とし ての安全配慮に関わる措置を必ずしも免れることにはならない。 (5) 本部の体制下で取られた措置と雪崩事故に係る安全配慮義務 本部の役割を担う者は、生徒を引率してはいないものの、本件講習会実施の司令 塔として生徒に対する安全配慮義務を負っていたものと考えられる。 しかしながら、本部の組織体制はほとんど整っておらず、事故発生の直後は本部 としての役割と機能が全く果たされていなかったというほかはない。この点につい ては、本部担当者として重要な役割を担っていた本部担当者の生徒に対する安全へ の配慮が著しく希薄であり、講習会参加者に対する安全配慮義務を十分に果たして いたとはいえない状況にあった。 今後、本部が司令塔としての本来の役割と機能を果たすためには、本部担当者を 務める者に対する意識改革を目指した取組を行うとともに、複数待機制についても 視野に入れた根本的な体制整備を検討することが必要であろう。 Ⅳ まとめ (1) 根源的かつ最も重要な要因 高体連及び登山専門部の「計画全体のマネジメント及び危機管理意識の欠如」 (2) 関連するその他の要因 ① 従来の慣行に従って、低い危機管理意識のまま実施されていた講習会を見過 ごしていた県教育委員会の「チェックや支援体制の未整備」 ◎ 事故発生の要因

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