安全で楽しい登山を目指して

162 第4編 リスクマネジメントに関する総合演習 が高ければ太郎平小屋に避難するという選択肢がある。また,雲ノ平ではそこから薬師沢小屋に引き返すより, 雲ノ平山荘に行く方が時間的にも早いし,雲ノ平から薬師沢への下りは急傾斜で滑りやすい道であるので滑落の リスクを考えると,山荘に向かう方が良いが,雲ノ平では落雷から身を守る場所がないので,森林限界まで下り, 周囲に高い木がない所や木が少しまばらになっている所でツェルトを張るか被るかして雨,風を避けて待機する のが良いと思われる。 沢の増水のリスクが高い場所 沢の増水はルート上に渡渉地点や沢に沿った場所があるかどうかを地図や過去の記録から調べる。鉄砲水や土 石流は普段,水のない沢状の地形でも起こりうることに留意。地形図からでは登山道に橋がかかっているかどう か,沢の渡渉があるかどうかの判別はできない。その辺りは過去の記録を参考にしなければならない。橋がある 場合でも沢からの高さが低い簡易な橋の場合,増水すると水に浸かる可能性がある。 (3)ルート 沢の増水を想定したターニングポイント:2,074m と書かれている地点の北西側にある最初に沢を渡る地点 2日目の行程において,最初に橋を渡る,あるいは渡渉する場所は,2,074mと書かれている地点の北西側に ある二股の近くである。さらに,その先にもすぐに沢を渡る場所がある。これらの地点が引き返しポイントとな る。登山記録を見れば,いずれも橋がかかっていることが分かるだろう。しかしながら,沢床からは比較的低い 場所にあるので,大雨の際は歩行が不能になる可能性がある。従って,今回のような大雨が予想される気圧配置 のときは,最初に沢を渡る地点を越えてしまうと,途中で沢が増水したときに戻れなくなる可能性がある。そこで, 最初に沢を渡る地点がもっとも重要な引き返しポイントになる。ただし,ここから引き返すとなると,登り返し があり,その間に雨に打たれてずぶ濡れになってしまうだろう。その状態で太郎平で風に吹かれれば低体温症の リスクもある。そこで,最初の引き返しポイントは沢を渡る所ではなく,太郎山東側の登山道が沢を横切る所の 手前にしたい。その先の尾根上の場所でも良いが,大雨の際に何度も沢状の地形を通るのはリスクが高まるので, 前述の場所(沢を横切る所の手前)の方が良い。 解答,解説用地形図 太郎平小屋 ターニングポイント1(落雷) ターニングポイント 1 (沢の増水) ターニングポイント 2 (沢の増水) ターニングポイント(落雷) 気象リスク(落雷) 気象リスク(落雷) 気象リスク(沢の増水) 気象リスク(沢の増水) 気象リスク(鉄砲水) (土石流) 気象リスク(鉄砲水) (土石流) 至 雲ノ平山荘

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz