安全で楽しい登山を目指して

15 第2章 山岳部の指導者に知ってもらいたいこと (危機) 事件・事故 の発生 危険 被害 事前の危機管理 事後の危機管理 (リスクマネジメント) (クライシスマネジメント) 図2 危機管理の2つの側面 (学校の安全管理に関する取組事例集 平成15年3月 文部科学省) イ スポーツ事故の発生要因と事故防止 保健体育や学校行事,運動部活動などを包含したス ポーツ活動での事故の発生には,図に示すように,「主 体の要因」,「運動の要因」,「環境の要因」,「用具の要 因」が関わり合っており,それらの要因に対応して事 故防止に努めることが必要である。 また,スポーツ事故の発生と防止全般に深く関わる 要因として,「指導」の要因,即ち指導者の取り組み 姿勢,指導や管理の進め方,研修や共通理解に基づく 組織的な取組などが事前の事故防止や事後の対応に影 響を与えていることが分っており,指導者の資質と事 故発生の関連性が高いと言える。これは,登山にも共 通している。 図2 危機管理の2つの側面 (学校の安全管理に関する取組事例集 平成15年3月 文部科学省) イ スポーツ事故の発生要因と事故防止 保健体育や学校行事、運動部活動などを包含したスポ ーツ活動での事故の発生には、図に示すように、「主体の 要因」、「運動の要因」、「環境の要因」、【用具の要因】が 関わり合っており、それらの要因に対応して事故防止に 努めることが必要である。 また、スポーツ事故の発生と防止全般に深く関わる 要因として、「指導」の要因、即ち指導者の取り組み姿 勢、指導や管理の進め方、研修や共通理解に基づく組織 的な取組などが事前の事故防止や事後の対応に影響を与 えていることが分っており、指導者の資質と事故発生の 関連性が高いと言える。これは、登山にも共通してい る。 (学校でのスポーツ活動での事故を防ぐために 平成29年度 日本 スポーツ振興センター) ⑶ 登山についての理解と経験、引率者としての能力(登 山引率の実践的な能力) 一般に、高等学校山岳部の指導者は、3泊4日程度の 夏山テント泊縦走ができる体力や技術、知識などを身 に付けることが求められる。例えば、登山で道に迷わ ないような山岳ナビゲーションスキル、大きな事故を 起こさないためのロープワーク技術や安全確保技術な ど、様々なスキルを身につける努力をする必要があ る。万が一緊急事態が発生した際に、自分自身を守 り、仲間や生徒を助け出すためのセルフレスキュ-技 術について理解し、実践できる能力が求められる。そ のためには、指導者は、気象や自然災害に関する知 識、ファーストエイドに関する知識、ビバークの技術 や知識を身につけるなどのスキルを身につけ、生徒に も指導できることが必要である。 また、高校生は、総合的な登山経験が不足しているだ けでなく、厳しい環境での登山における技術、体力、危 険予測や判断・回避、セルフレスキュ-の能力等が不十 分であるため、冬山における安全を確保することは極め て難しいので、スポーツ庁の通知等により、冬山(類似 の環境下を含む)登山は、原則として禁止されている。 しかし、教育的意義の観点から、例外的に冬山登山を実 施する場合には、 学校の管理下のもと保護者の了解を得 て、冬山でリーダーシップを取れる指導者の確保など、 安全な実施に必要な条件を整えた上で、登頂を目的とは しないで技術や 体験面における明確な獲得目標を定め、 その目標を生徒が実現しうるために適切かつ安全な場所 を選定し、飽くまでも安全登山の基礎となる内容にとど める。 また、必ず複数の指導者の引率体制とし、少なくとも 1 人(リーダー)は、冬山のような厳しい環境での登山に ついて豊富な知識と経験を有する者であり、山岳に係る 資格を有しているか、国立登山研修所又は各都道府県が 主催する研修会への参加と一定の難易度以上の積雪期登 山のリーダー経験を有し、継続的に活動していることが 望ましく、リーダ一以外の引率者においても、登山に係 る研修会・講習会に積極的かつ継続的に参加するなど、 自ら資質向上に努めることが求められている。 さらに、指導者は、気象や環境の変化に留意するとと もに、生徒の行動や体調などに注意を向け、異常を発見 できるように常にコミュニケーションが取れるような受 容的な態度を保ち、指導者間の連絡や情報交換を密にし、 緊急時の迅速な対応ができるように努めなければならな い。もし、各校の指導者の資質能力が不十分な場合は、 校長は、外部の専門家など経験と引率の能力に優れた者 を部活動指導員や外部指導者として委嘱し、支援を要請 することを検討する必要がある。 (戸田芳雄) 図3 スポーツ事故の発生要因 図3 スポーツ事故の発生要因 (学校でのスポーツ活動での事故を防ぐために 平成29年度 (独)日本スポーツ振興センター) (3)登山についての理解と経験,引率者としての能 力(登山引率の実践的な能力) 一般に,高等学校山岳部の指導者は,3泊4日程度 の夏山テント泊縦走ができる体力や技術,知識などを 身に付けることが求められる。例えば,登山で道に迷 わないような山岳ナヴィゲーションスキル,大きな事 故を起こさないためのロープワーク技術や安全確保技 術など,様々なスキルを身に付ける努力をする必要が ある。万が一緊急事態が発生した際に,自分自身を守 り,仲間や生徒を助け出すためのセルフレスキュー技 術について理解し,実践できる能力が求められる。そ のためには,指導者は,気象や自然災害に関する知識, ファーストエイドに関する知識,ビバークの技術や知 識などを身に付け,生徒にも指導できることが必要で ある。 また,高校生は,総合的な登山経験が不足している だけでなく,厳しい環境での登山における技術,体力, 危険予測や判断・回避,セルフレスキューの能力等が 不十分であるため,冬山における安全を確保すること は極めて難しいので,スポーツ庁の通知等により,冬 山(類似の環境下を含む)登山は,原則として禁止さ れている。しかし,教育的意義の観点から,例外的に 冬山登山を実施する場合には,学校の管理下のもと保 護者の了解を得て,冬山でリーダーシップを取れる指 導者の確保など,安全な実施に必要な条件を整えた上 で,登頂を目的とはしないで技術や体験面における明 確な獲得目標を定め,その目標を生徒が実現しうるた めに適切かつ安全な場所を選定し,飽くまでも安全登 山の基礎となる内容にとどめる。 また,必ず複数の指導者の引率体制とし,少なくと も 1 人(リーダー)は,冬山のような厳しい環境で の登山について豊富な知識と経験を有する者であり, 山岳に係る資格を有しているか,国立登山研修所又は 各都道府県が主催する研修会への参加と一定の難易度 以上の積雪期登山のリーダー経験を有し,継続的に活 動していることが望ましく,リーダー以外の引率者に おいても,登山に係る研修会・講習会に積極的かつ継 続的に参加するなど,自ら資質向上に努めることが求 められている。 さらに,指導者は,気象や環境の変化に留意すると ともに,生徒の行動や体調などに注意を向け,異常を 発見できるように常にコミュニケーションが取れるよ うな受容的な態度を保ち,指導者間の連絡や情報交換 を密にし,緊急時の迅速な対応ができるように努めな ければならない。もし,各校の指導者の資質能力が不 十分な場合は,校長は,外部の専門家など経験と引率 の能力に優れた者を部活動指導員や外部指導者として 委嘱し,支援を要請することを検討する必要がある。

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