安全で楽しい登山を目指して

133 第1章 初級演習 5 時間で 1000m 超の登下降ができるかを確認することは困難だが,心肺能力については 7 メッツの運動に相当 するジョギングを 30 分程度「楽に」続けられること,筋力についてはスクワット運動や上体起こし運動を 15 回× 5 セット「楽に」にできること,の 2 つから判断する。これができない生徒がいれば,トレーニングを積 んでできるようにしておく。 トレーニングは少なくとも週に2~3回は行う。心肺能力のトレーニングとしてはジョギングやランニング が代表的である。最初は 5 ~ 10 分程度から始めて徐々に時間を増やし,20 ~ 30 分程度行う。筋力トレーニン グは,スクワットや上体起こしなど自体重負荷の運動を行う。これらは 10 回× 3 セットから始めて,15 回× 5 セットが楽にできるようにしておく。 目的の登山で背負うのと同程度かやや重いザックを背負って階段を昇降したり,球技スポーツも取り入れる など,多様な運動を経験しておくとよい。近くに低山があれば,それを利用すると実戦的なトレーニングがで きる。なお,どんなトレーニングをするにしても,過去に登山はもとより,運動部活動の経験のない生徒もい ることを考慮し,各人の様子を見ながら徐々に運動の強度や量を増やしていくことに配慮する。 (2)(1)で行った体力トレーニングの様子を把握しておき,最も体力が弱いと思われる生徒が疲労しないペー スで歩く。体格が小さく痩せている者や,肥満している者については,荷物を軽くするなどの配慮も行う。 山に慣れていない生徒の場合,上り道では問題がなくても,下り道で脚がガクガクになる場合が多い。この トラブルは転ぶ事故にもつながるので,特に下りの際には歩行の様子に気をつけ,症状が現れた場合には荷物 を軽くしたり,ストックを使って脚への負担を軽減する。 水分補給とエネルギー補給については,標準的なコースタイムで歩くのであれば,「消費量(kcal/ml)= 体重(㎏)×行動時間(h)× 5」という式を使って各自で計算させる。そして朝食での摂取量も考慮した上で, 消費量の 7 ~ 10 割を行動中に補給させる。 (山本正嘉)

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