安全で楽しい登山を目指して

132 第4編 リスクマネジメントに関する総合演習 ント間のルートをどう維持するか(ルート維持)が,重要だ。チェックポイントの第一番は,山道への入り口④ である。登山道がはっきりしていれば間違えることはないが,入り口がわかりにくいことを考えると,登山道の 分岐以外の特徴(例えば,直後に川を渡り,道の方向が変わる)を読み取り,この場所を確認する。その後,川 に沿ってほぼ北向き,そして⑥から西向きの谷に入ることを確認する。 次のチェックポイントが⑦である。⑦の手前に南に入る谷があり,⑦の後には西に入る谷がある。前者を見れば, 道の分岐がすぐ先であると予想ができるし,後者を見れば行きすぎたと分かる。⑦の後,谷の方向が北向きにな ることからも,⑦を見落としたことが確認できる。見落としたらどうなるか,を考えておくと,見落としのダメー ジを最小限にできる。⑦をすぎたら,南向きに小さな尾根に取り付き,その後尾根がほぼ西から南西に向きを変 えて登っていくことを確認する。 ⑨は主尾根への取り付きである。T字路型にぶつかるので,見落とす心配はないが,重要な現在地把握地点な ので,そこを通過したことは意識する。その後は北西方向の尾根を登るので,ルート維持は容易である。 ⑯までは,⑬を除くとほぼ登り一本調子の北西→北向きの尾根である。この点を意識すればルート維持は容易 であるが,特徴的な点として⑬のピークや⑭の鞍部は確認しておきたい。⑭の道分岐を間違える心配はないと思 われるが,⑮は分岐の角度が浅い場合には選択に迷うかもしれない。「北向き・尾根・登り」を意識しておけば, 間違えても,最小限のダメージで気づくことができる。 ⑯の道の分岐/ 744m ピークは確実に把握したい。尾根と道が分岐していること。進みたい道は北西であるこ とを意識することでルート維持できる。⑲の分岐も確実に捉えることが必要である。登り一本調子だが,方向が 北西→北に変わることで把握できる。北向きに尾根を登れば⑳方面である。 尾根では下るに従って分岐していくので,ルート維持は登り以上に気を遣う必要がある。チェックポイントで の現在地確認+方向を使ったルート維持が,ポイントである。現在地確認には,尾根の方向とその変化が有用で ある。 まず第一の点は⑲。ここまで南向きの尾根はここで南東に方向を変える。それを確認することで⑱に正しく向 かうことができる。第二に⑯。ここでは南東向きの尾根が南と北東(または東北東)に分岐するので,東北東の 尾根に進む。第三に㉔。ここでは尾根から谷に下降する必要がある。㉓の鞍部をチェックポイントとし,その後 尾根道の方向が北西に一度変わることを利用して,その後の鞍部として㉔で現在地確認を確実なものにする。ま た,谷に降り始めた後も谷・道が概ね南東を向いていることを確認する。㉖の林道に降りた地点もチェックポイ ントである。その後谷を東南東に下り,㉗に至る。ここでは谷が Y 字分岐していると同時に,一車線道路に出て, 谷が下る方向はほぼ南となることを確認する。 以上はルートを外さないための最小限の地図読みである。エスケープルートについても事前のルート検討を怠 らないように注意されたい。さらに,細かい特徴物も見つけられるようになると,地形図を読み解き,風景を想 像する楽しみが広がるだろう。例えばこのルートで言えば,⑦から尾根に取り付くと,最初の緩やかな場所を少 し進むと標高差 40m 近い急登で⑧を通過すること,同じように⑫付近で平坦な尾根から急な登りになること,等。 細かい特徴を読み取れると,迷いやすい地形での対応が容易になる。 (村越真) Ⅳ 運動生理とトレーニング (1)この登山では,1 日で上り・下りとも 1,000m 以上の登下降を行う。正味の歩行時間は約 5 時間,コース定 数は25程度,体力度のグレーディングでは「3」にランクされることを確認しておく。運動の強度は,標準 的なコースタイムで歩く場合,上りで 7 メッツ程度となる。 登山に出かける前に,各生徒がこのような運動を支障なくこなせる体力があるかを可能な限り確認しておく。

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