安全で楽しい登山を目指して

131 第1章 初級演習 【解答例】 Ⅰ 登山計画 (1)登山経験が最も浅い新人に合わせて登山計画を立てる。例えば,歩行や生活にも慣れた人より新人は時間 が掛かることを考慮し,無理のない余裕をもった計画をたてる。他にも,行動を順番に想像して,気づくこと を挙げる。 (2)予想外の疲労や負傷に備えて,できるだけ平らな地点のポイント番号を計画のときに調べておく。 (3)帰りの電車の時間や日没の数時間前に,電車の駅や少なくとも林道まで戻るように計画する。そのために, 場所を特定しやすい場所に何時までに着けば,その後の予定ルートを進むかを判断するために,チェックタイ ムを設ける。例えば,「744 mピークに11:00までに着けば,さらに登る。このピークの手前で11:00になっ たら引き返す」などの判断するための,場所と時刻を登山計画の段階で決めておくと良い。 (4)複数のエスケープルートを決めておく。たとえば,617 mピークまでにトラブル発生なら,同ルートを引 き返す。ポイント 14 番→ 33 番→ 34 番→ 7 番→ 6 番で林道に戻る場合,15 番→ 29 番→ 32 番→ 26 番で林道に 到着,16 番→ 22 番→ 23 番→ 24 番→ 25 番→ 26 番で林道に到着などがエスケープルートになる。傾斜や危険 な箇所などを,メインルートと同様に注意深く地図上で確認しておく。 (5)日没に備えて各自がヘッドライト(あるいは懐中電灯)を携帯し,急な風雨に備えて雨具も必ず携行する。 これらは十分に行動するための必須装備である。 (6)その他,忘れ物をした人への対応(参加の可否含む)をあらかじめ決めておくと良い。 (北村憲彦) Ⅱ 登山技術 (1)テントの設営場所が水や風に対して安全か,少しでも快適に寝られそうな平らな場所を選定する。 (2)テント生活で最も危険なのは,火器をテント内で使用する時である。(学校によってはテント内での火器使 用を禁止している。)もし火器をテント内で使用する場合には,火器による火災と火傷,お湯や調理したもの による火傷を避ける必要がある。安定させるために,場所の整地,コンロ台の使用,鍋(コッヘル)をコンロ に掛ける時には,誰かが鍋の一部を保持するなど,常にリスクを予想し,意識的に備える。 (3)調理ではナイフなど刃物の扱いに注意する。刃物の移動する先に,自分や他人の体の一部が来ないような 姿勢を保つ。切るものを十分に固定し,安定させ,無理に力を入れずに自然に切れるように切る。 (4)テント内の整理整頓に心がける。装備や食糧などの場所がすぐに分かること,物をなくさないことは,登 山を順調に進めるために必要であり,パーティーの信頼関係の基本である。また,火災発生時には,入り口か ら外へコンロを放り投げて,回避することもある。 (5)濡れたテントは気密性が増し,酸素が不足がちになる。時々換気して,新鮮な外気を取り込むようにする。 (北村憲彦) Ⅲ ナヴィゲーション技術 初心者が読図やナヴィゲーション技術を練習する際には,体力的に余裕の持てる上り下りが少なく,リスク管 理のために特別の注意力を要しない場所,例えば林道などで始めるのが良い。林道は視界が比較的開けているの で,大きな地形を読み取るのに適している点も基礎練習におけるメリットである。地図の記号では,道や橋,道 の分岐,等高線で描かれた尾根,ピーク,鞍部,谷,などの特徴的な地形を確認しながら,ウォーミングアップ 的な読図を行う。通常の登山道では,道や道標でルートを間違えずに選択できることが多い。球技ではよく「試 合のつもりで練習せよ」と言われる。読図も同様である。「実践場面で,もし道や道標がわかりにくくても対応 できる」ための読図を心がけることで,「そのとき」に備えることができる。 まず,①大まかなルートの特徴,地形の位置関係を把握する。代表的な尾根や谷のスケルトン(概念)図を作 成すると,地形の概念が掴みやすくなる。面倒に思えるかもしれないが,初級段階では概念図を描く練習を繰り 返したい。 次にルートに沿った細部の地図読みとなる。チェックポイントの把握(現在地の把握),そしてチェックポイ

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