安全で楽しい登山を目指して

13 第2章 山岳部の指導者に知ってもらいたいこと 行せず,生徒らだけで実行されていた。裁判では,教 師が負う注意義務の範囲が問題になったが,高校生は 一定の体力や判断力があり,教師は登山道で生じる落 石事故を予見できなかったとして,教師の注意義務違 反が否定された(神戸地裁平成4年3月23日判決, 判例時報 1444 号 114 頁,判例タイムズ 801 号 208 頁)。 高校の山岳部の活動でも,登山道で生じる落石事故 を計画段階で防止することは難しい。指導者が登山に 同行していても落石事故を防止することは難しく,指 導者に注意義務違反が認められないことが多いだろ う。ヘルメットを着用しても,すべての落石に効果が あるわけではない。落石事故を確実に防ぐ方法はない が,落石に対する警戒を常に怠らないことが,事故の リスクを低くすることにつながる。 参考文献 「平成29年3月27日那須雪崩事故検証委員会報告書」, 那須雪崩事故検証委員会,2017 「解説学校事故」,伊藤進・織田博子,三省堂,1992 「山岳事故の法的責任」,溝手康史,ブイツーソリュー ション,2015 「登山者のための法律入門」,溝手康史,山と渓谷社, 2018 (溝手康史)

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz