安全で楽しい登山を目指して

114 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう ドの高い斜面である。植生があっても,樹木間の距離 が離れている場所では,斜度によって雪崩が起きる。 樹木が雪崩のアンカーとなるのは,樹木間の距離が 5m以内と言われている。 ● 形状 凸状地形(ノール地形)は,屈曲による積雪へのス トレスが生じているため破断しやすく発生区となるこ とがある。また,逆に斜度が緩くなる地点では雪崩が 堆積しやすいので注意が必要である。 ● 雪崩被害を増大させる地形 発生区の下部にある狭い谷では,雪崩の速度が速く なり危険度が増す。また,谷筋の底では雪崩のデブリ がたまり深い埋没になりやすい。斜度が緩くなる場所 も雪崩が堆積しやすく深い埋没になりやすい。走路に ある樹木や岩などは,雪崩に流された場合に衝突して 深刻な外傷をもたらす。崖が下部にある場合も深刻な 被害となる。 (3) 雪崩対策装備 雪崩対策装備には,雪崩遭遇者を救助するために必 要な装備と,雪崩ハザード評価のための観察に必要な 装備がある。 その中でも,雪崩トランシーバー(ビーコン),シャ ベル,プローブは雪崩発生の可能性のある山岳に入山 する際に欠かせない重要な装備となっている。図24 に雪崩対策装備を示す。 図24 雪崩対策装備(左から雪崩トランシーバー(ビーコン)、 シャベル、プローブ) 参考文献 ・『雪崩教本』雪氷災害調査チーム・雪崩事故防止研 究会,山と渓谷社(2017) ・『山岳雪崩大全』雪氷災害調査チーム,山と渓谷社 (2015) ・『雪崩リスク軽減の手引き』日本雪崩ネットワーク, 東京新聞(2010) (飯田 肇) (『雪崩教本』より引用) 図23 コンプレッションテストの方法と結果の評価 シャベルを載せて 上から叩く 100-120㎝ 30㎝ 30㎝ コード 説 明 CTV 雪柱を切り出している最中に破壊す る CTE# 手首を支点に1~ 10 回叩くと破壊 する CTM# 肘を支点に1~ 10 回叩くと破壊する CTH# 肩を支点に1~ 10 回叩くと破壊する CTN 破壊が起こらない

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz