安全で楽しい登山を目指して

101 第9章 山の天気 (3)突発的に発生する積乱雲 上記の2つの気圧配置は,事前に予想がしやすいタ イプであり,時間帯に関係なく,低気圧や前線が接近 してきたときに積乱雲が発達する。 しかしながら,こうした気圧配置ではないときにも 積乱雲が急に発達することがある。この予想は難しい が,日射によって地面が暖められる午後から夕方にか けて,平地や盆地に接した山で発生しやすい。 また,5 「雲が成長する仕組み」で説明したよう に,上空高い所に寒気が入るときは,大気が不安定 になり,平地から離れた山を含めて広範囲で積乱雲が 発達しやすくなる。上空の寒気の目安は盛夏期(7月 中旬から8月下旬)においては,500hPa 面(高度約 5,800m)でマイナス6℃以下である。例えば,1967 年8月に発生した,西穂高岳独標付近における松本深 志高校の事故も 500hPa 面でマイナス6℃以下の強い 寒気が入ってくる状況で発生した。さらに,地面付近 の気温が著しく上昇したり,暖かく湿った空気が入っ てくるときも,大気が不安定な状態となる。 図15 中部山岳で落雷が多発した日の 500hPa面の気温予想図 (山の天気予報 専門天気図 https://i.yamatenki.co.jp/ より) (4)観天望気 落雷や短時間の豪雨をもたらす積乱雲は,塊状の綿 雲(積雲 写真2-1)が発達したものである。朝早 い時間から山の上に,このような雲が出てくるときは, 大気が不安定なことが多く,その後の雲の発達に注意 が必要である。特に,写真2-2のように上方へ勢い よく成長していくときは要注意だ。さらに,雲の底が 黒くなっていく(写真2-3)と,落雷や強雨のリス クが強まっていく。そのようなときは,図16,図17 のような場所からすぐに遠ざかり,山小屋や避難小屋, 窪地などに避難しよう。 写真2-1 写真2-2 写真2-3

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