安全で楽しい登山を目指して

102 第3編 登山の技術と知識を身に付けよう また,雷がすぐ近くに迫ってきたときは,図18の ような姿勢を取るようにしたい。集団で登山している 場合は,一人一人の間隔を必ず2m以上,できれば 4m以上空ける。 また,朝,起きたら必ず,空気の湿り具合を確認し たい。いつもより,じとっと湿っぽい感じがするとき は,大気中の水蒸気が多い証拠である。日中の積乱雲 の発達に注意したい。 図18 雷に遭遇したときに取るべき姿勢 これまで見てきたように,気象リスクを減らすため には登山前に,天気図から強風や大雨,大雪,落雷 などの気象現象が起きる可能性があるかどうかを確 認し,地図からそれらのリスクが想定される場所を チェックする。そして,それらのリスクに対してどの ように対応していくかを考え,自分たちの力で対処す ることが難しい場合には,計画を変更する。 さらに,予定通り登山をおこなうと決めた場合には, 登山中に風向きや風速,雲の種類や量の変化などを確 認し,事前に予想した気象状況と違ってきた場合には その理由について考え,当初の予想よりリスクが増大 することが予想される場合,事前に考えた対処方法で 問題ないのかどうかを考える。さらに,引き返しポイ ントに到達したときには,前進するかどうかの判断を おこない,タイムリミットが迫ってきた場合にも同様 の判断をおこなう。 こうした判断とそれによる行動の決定が,気象遭難 を防ぐためのもっとも確実な方法となる。8) ▶指導のポイント(気象リスクを減らすための手順) 1.広域の地図から目的の山の気象条件を調べる→ 2.実況天気図,予想天気図から登山中の気象状況 を予想(特に大荒れの天気になるかどうかをチェッ クする)→3.25,000 分の 1 の地形図から登山中の さまざまなリスクの可能性を想定→4.リスクに 遭遇したときの対応方法を考える→5.25,000 分の 1の地形図などから引き返しポイント,エスケープ ルート,タイムリミットを決定→6.登山をおこな うかどうかの決定→7.おこなう場合,登山ルート の変更や日程の短縮の可能性について検討→8.登 山中におこなう観天望気や雨雲レーダー(電波が入 るところ)から事前の予想との違いを検証→9.引 き返しポイントで前進するか,撤退するか(撤退す る場合,どのルートを選択するか),天候待ちをす るか,ビバークするかの決定→10.前進した場合 にタイムリミットを経過した際の撤退→目的地まで 8~ 10 を繰り返す。 近くに小屋がなけれ ばハイマツのなかな どで耳をふさぎ,両 足を閉じて,かがん だ姿勢を取る とがった山頂 高い木 突き出た岩(ピナクル) 岩場など滑落の 危険があるところ 図16 落雷の恐れがある時に近づいてはいけない場所 強い雨が降っているときや,発達した入道雲が近づいて いるときは,このような場所には近づかないこと 涸れた沢 崩壊地 沢の近く ガレ場 雪渓上 図17 土砂降りのときに近づいてはいけない場所

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