30 ―ホテルニューグランドは横浜に限らず、日本のホテルを代 表する歴史と風格があります。中でも「ドリア」そして「ナ ポリタン」はホテル発祥の一品として伝統の味が受け継が れるともに、調理方法はさておき料理の名称は日本の食卓 においてすっかり定着しています。 「ドリア」は当ホテル初代総料理長を務めたサリー・ワイ ル氏が考案した料理です。1927 年、ニューグランド開業 のときにパリから招かれたスイス人シェフで、フランスではフ ランス料理のスーシェフを勤めていたようです。フランス料 理に限らず、イタリアやスイス料理なども得意としていまし たので、まさに今日のニューグランドホテルの西洋料理の 礎はサリー・ワイル氏にあったと言えるでしょう。サリー・ワ イル氏はメニューに“コック長はメニュー外のいかなる料理 にもご用命に応じます”と記し、お客さまの要望に合わせ てさまざまな料理を作って提供していました。あるとき、滞 在していた銀行家から、「体調が良くないので、何かのど 越しの良いものを」という要望を受け、即興で創作したの が芝海老を使った「シュリンプドリア」だったのです。今 では「シーフードドリア」として季節に応じたシ―フードを アレンジしてお出ししています。 ―今でこそ、ご飯とクリーム、チーズを組み合わせたドリア は定着していますが、当時、日本人の主食であったお米 とソースそしてチーズでアレンジすることは画期的です。そ して今でも初代総料理長の思いや伝統的な手法を守り、 継承されていらっしゃるのですね。 宇佐神 茂氏 ホテルニューグランド 取締役総料理長 ~“布で濾す”初代総料理長サリー・ ワイル氏のレシピを今もなお伝承~ 外国との往来の玄関口であった横浜港。その歴史もあり山下町周辺の佇まいは悠久の年を越えても異国情緒と品格にあふれ ている。かつては渡航者のために山下町界隈には多くのホテルが軒を連ねていた。ところが大正 12 年 9 月1日に勃発した 関東大震災により横浜は瓦礫の街と化した。そのとき横浜市をはじめ当時の政財界あげての新ホテル建設への声があがり、 昭和 2 年ついに実現、ホテルニューグランドが誕生。そして初代総料理長サリー・ワイル氏が宿泊客のために尽くした究極 の一品が「ドリア」だった。 体調がすぐれないお客さまのために作り出された「シーフードドリア」 伝統・究極の一品
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