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JARC LIVE JARC(ジャルク)一般社団法人 宿泊施設関連協会 Japan Accommodat ion Related Consort ium vol.6 時代の変化にしなやかに対応していく 宿泊施設とともに「稼ぐ力」を引き出しあう

2 JARC 協会の主旨 当協会の目指すこと 宿泊施設関連協会は、観光立国の中枢である宿泊施設とともに、刻々 と変化する宿泊業界がさらに発展していけるよう、宿泊施設に携わ る同じ想いをもった企業が集まる協会です。訪れたお客さまへ、よ りストレスフリーな環境を提供することにより、それぞれの地域が 活性化していくことを目的とします。また、先々の時代の変化にし なやかに対応していくため、品質向上や経営の効率化を宿泊施設と ともに考え、お互い“稼ぐ力”を引き出しあっていきます。 2022 年までの目標 ~宿泊施設を支える施策として~ [ 海外進出 ] 海外で働く 134 万人の日本人に心の安らぎを与える場所を提供するために、日本の宿泊施設が輸出産業になり、日本の 文化の発信はもとより海外に劣らない経営・運営手法や品質向上のための方法を模索していきます。またその土地に住 む外国人の人々に、その土地にある日本の宿泊施設を通して日本を体験してもらい、日本を訪ねてもらえることを宿泊 施設とともに目指していきます。 [ ラストリゾート ] 国内外の日本の宿泊施設が、有事の際にその土地の人々の避難場所や緊急病院となり、人々の安全が確保される場所に 宿泊施設がなれるようともに歩んでいきます。 [ 宿泊業の地位向上 ] 宿泊業に携わる人々の意識を高めていくとともに、宿泊業に必要なスキルが向上できるよう、ともに学んでいきます。 J a p a n A c c ommo d a t i o n R e l a t e d C o n s o r t i um J A R C L I V E VOL.6 宿泊施設 厨房・ 調理・ 衛生 協会・ 団体 設備・ 施設 人材 IT 交通・ 航空・運輸 建築・設計・ デザイン 教育関連・ 教育機関 投資家・ 銀行・ 広告・ 保険 マスコミ テナント・ ショップ スパ・ エステ 旅行業 宴会・婚礼 客室・フロント レストラン・バー イベント・ プロモーション コンサル タント 2 JARC協会の趣旨 3 緊急告知 ご存じですか? 新型コロナウイルス感染症に係る中小企業支援 6 スペシャル対談 国土交通省観光庁参事官(観光人材政策) 小熊弘明氏×JARC会長 林悦男 10 JARC 賀詞交歓会 2020 12 JARC REPORT 「ResorTech Okinawa おきなわ国際見本市」 15 生産性UP ソフトバンクロボティクス㈱ プロジェクト推進本部 営業戦略統括部カスタマーサクセス部 活用推進課課長 池田潤氏 18 「高級ホテルの本質」 ㈱小西美術工藝社代表取締役社長デービット・アトキンソン氏 20 「私の考えるラグジュアリーホテルとは」 国際ホテルジャーナリスト 小原康裕氏 22 有識者に聞く 宿泊・観光業界の未来考察 ㈱船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント 山本真輝氏 23 緊急事態に向けて FSX㈱専務取締役 犬塚勉氏 24 レポート「デスティネーション箱根・小田原」 マネジメントセミナー世界に向けて 「ウェルネスといえば箱根」という目標設定を5年後に は実現したい 26 連載第1回「Beyond2020 から 2030SDGs に向けて 宿泊施設関連業界が向かうところ!」 (一社)メイドインジャパン・ハラール支援協会会長 高橋敏也氏 28 ホテルオープン情報 アパホテル&リゾート<横浜ベイタワー> 30 伝説・究極の一品 ホテルニューグランド 取締役総料理長 宇佐神茂氏/ ㈱あぐーマジックオーナー 具志堅茂氏 34 会員ZOOMUP ㈱KAZAHANA代表取締役社長 樫村健太郎氏/サンバリーホール ディングス日本法人日本区域代表 青山英明氏/㈱ネクストビート Businness Strategy Division 執行役員 石毛陽子氏/バリーズ㈱CEO 野々村菜美氏 38 インタビュー「世界にはばたくトップランナー企業」 ㈱ベルーナ執行役員・開発本部長代理 安野洋氏 40 JARCゼミナール 第16回 TRUSTYOU㈱代表取締役社長 下嶋一義氏 第18回 国土交通省観光庁観光産業課 元参事官 田口芳郎氏 第19回 C&RM㈱代表取締役社長 小林武嗣氏 第20回 浄土真宗本願寺派大見山超勝寺 僧侶 大來尚順氏 44 「JARCゼミナール」のご案内 46 安心安全な報歳管理 ㈱日本防災技術センター 代表取締役社長 指川司氏 47 会員一覧 Contents

JARC LIVE 3 経済産業省 中小企業・地域経済産業 中小企業を対象としたセーフネット保証 5 号支援措置について 経済産業省は、新型コロナウイルス感染症の影響によ り、全国の中小企業・小規模事業者の資金繰りが逼迫 ( ひっぱく)していることを踏まえ、中小企業者の資金繰 り支援措置として、セーフティネット保証 5 号の対象業種 の追加指定を行なうことを決定しました。この措置により、 一般保証と別枠の保証が利用可能となります。 追加されたのはホテルや旅館、食堂、レストラン、フィッ トネスクラブなど 40 業種。掲げる業種であっても、風俗 営業等の規制及び適正化等に関する法律(昭和 23 年 法律第 122 号。以下「適正化法」という。)第2条第1 項1号から第 3 号までに規定するものについては、主とし て食事の提供を行うものに限ります。また、掲げる業種で あっても、適正化法第 2 条第1項第 4 号(マージャンクラ ブを除く。)及び第 5 号(ゲームセンター(スロットマシン 場を除く。)を除く)並びに同胞第2条第 5 項に規定する 営業は除かれます。 2020 年 3月6日に緊急的に40 業種を指定したのに続 き、同感染症により重大な影響が生じている業種として、 さらに316 業種をセーフティネット保証 5 号対象として追加 しました。 また、セーフティネット4 号、5 号、危機関連保証として これらの措置の開始にあわせた運用緩和を行ないます。 創業1年未満の事業者等であって、同感染症の影響により、 経営の安定に支障をきたしている創業者等も利用できるよう に、設定基準について運用の緩和をいたします。 危機関連保証の発動およびセーフティネット保証 5 号の 追加業種は 3月13日に官報にて告示する予定ですが、 明日から各信用保証協会において事前相談を開始いたし ますのでお近くの信用法相協会にご相談ください。 セーフティネット5 号対象となる40 業種について そう(惣)菜製造業 / すし・弁当・調理パン製造業 / 他に分類されない運輸に付帯するサービス業 / 料理品小 売業 / 他に分類されない小売業 / 旅館、ホテル/ 簡易 宿所 /リゾートクラブ / 他に分類されない宿泊業 / 食堂・ レストラン(専門料理店除く)/日本料理店 / 料亭 / 中 華料理店 /ラーメン店 / 焼肉店 / その他の専門料理店 / そば・うどん店 / すし店 / 酒場、ビヤホール/ バー、キャ バレー、ナイトクラブ / 喫茶店 / ハンバーガー店 / お好み 焼き・焼きそば・たこ焼き店 / 他に分類されない飲食店 / 持ち帰り飲食サービス業 / 配達飲食サービス業 / エステ ティック業 /リラクゼーション業(手技を用いるもの)/ 旅 行業者代理業 / 劇場 / 興行場 / 劇団 / 楽団・舞踏団 /ボウリング場 /フィットネスクラブ / 遊園地(テーマパー ク除く)/テーマパーク/ダンスホール/ 学習塾 / 演芸・ スポーツ等興行団 セーフティネット保証 5 号の概要 1.制度概要 全国的に業況の悪化している業種に属することにより、 新型コロナウイルス対策 中国・武漢に端を発したと推測されている新型コロナウイルス感染症は、 2020年3月中旬の段階で欧米はじめ全世界に広がっています。 流通や人の滞りに伴い多くの国々の経済が悪化、株価も暴落しています。 ホテルや旅館などの宿泊業や宿泊業に付随する関連産業においても急激な売上げダウンは、 この先が見えない状況だけに日に日に厳しさが増しています。 政府も緊急事態の発生に伴い、関わる省庁にて救済策を講じています。 皆様もお調べになってご存じかと思いますが、現在、行なわれている中小企業者対策などをまとめました。 ぜひ、ご一読いただき、この先が見えない厳しい現状ではありますが、宿泊業界の未来、 そして各企業様の将来のためにも乗り切ってほしいと願うばかりです。 新型コロナウイルス感染症に係る中小企業支援措置 一般社団法人 宿泊施設関連協会 会長 林 悦男 緊急告知ご存じですか?

4 経営の安定に支障を生じている中小企業者への資金供 給の円滑化を図るため、信用保証協会が通常の保証限 度額とは別枠で80%保証を行う制度。 (参考:信用保険法第 2 条第 5 項第 5 号) その業種に属する事業について主要な原材料等の供 給が著しい減少、需要の著しい減少とその他経済産業 大臣が指定するものに属する事業を行う中小企業者であ り、かつ、当該事業に係る取引の数量の減少その他経 済産業大臣が定める事由が生じているためその経営の 安定に支障を生じられていると認められること。 2.対象中小企業者 ①指定業種に属する事業を行なっており、最近 3カ月間 の売上高等が前年同期比で5%以上減少。 *時限的な運用緩和として、2月以降直近 3ヶ月の売上 高が算出可能となるまでは、直近の売上高等の減少と売 上高見込みを含む3ヶ月間の売上高の減少でも可能。例) 2月の売上高実績+3月、4月の売上高見込み ②指定業種に属する事業を行なっており、製品等原価の うち20%以上を占める原油等の仕入れ価格が 20%以上 上昇しているのもかかわらず、製品等価格に転嫁できて いない中小企業者。(売上高等の減少について、市区 町村長の認定が必要) 3.内容(保証条件) ①対象資金:経営安定資金 ②保証割合:80%保証 ③保証限度額:一般保証とは別枠で 2 億 8000 万円 一般保証限度額 2 億 8000 万円以内+別枠保証限度枠 2 憶 8000 万円以内 本件のお問い合わせについては、中小企業金融相談 窓口あるいはお近くの地方経済産業局にご連絡ください。 「セーフティネット保証 5 号」 お問い合わせ先(電話番号) <中小企業金融相談窓口> 03-3501-1544 <各地方経済産業局> 北海道経済産業局 中小企業課 011-709-3140 東北経済産業局 中小企業課 022-221-4922 関東経済産業局 中小企業金融課 048-600-0425 中部経済産業局 中小企業課 052-951-2748 近畿経済産業局 中小企業課 06-6966-6023 中国経済産業局 中小企業課 082-224-5661 四国経済産業局 中小企業課 087-811-8529 九州経済産業局 中小企業金融室 092-482-5448 沖縄経済産業部 中小企業課 098-866-1755 関連ホームページ 厚生労働省 雇用調整助成金の特例追加実施について 「特例の対象となる事業主」 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者対象 「追加特例措置の内容」 休業などの初日が、令和 2 年1月24日から令和 2 年 7 月23日までの場合に適用します。 ①新規学卒採用者など、雇用保険被保険者として継続 して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助 成対象をします。 ②過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主に ついて、 ア 前回の支給対象期間の満了日から1年を経過してい なくても助成対象とし、 イ 過去の受給日数にかかわらず、今回の特例の対象と なった休業等の支給限度日数ま での受給を可能とします(支給限度日数から過去の受給 日数を差し引きません)。 「既に講じている特例措置の内容」 ③令和 2 年 1月24日以降の休業等計画届の事後提出 が、令和 2 年 5月31日まで可能です。 ④生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮していま す。(*生産指標の確認は提出があった月の前月と対前 年同月比で確認します。) ⑤事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象と しています。(*生産指標の確認は提出があった月の前月 と令和元年 12月と比べます。そのため 12月実績は必要 となります。) ⑥最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成 対象としています。 「その他の支給要件」 その他、雇用保険の適用事業所であること等の支給 要件があります。詳細については最寄りの労働局の助成 金窓口にお尋ねください。 詳細につきましては以下、ご参照ください。 https://www.mhlw.go.jp/content/000609091.pdf 経済産業省 新型コロナウイルス感染症により影響を受けている下請事 業者との取引における、親事業者への要請について 2020 年 3月10日告知 ▶中小企業・地域経済産業 新型コロナウイルス感染症が世界的な広がりを見せてお り、日本国内においてもサポ来チェーン等への影響が顕 在化しています。その影響を受けやすい下請等中小企 業との取引において、納期遅れの対応や迅速・柔軟な 支払いなど、一層の配慮を講じていただくよう、関係団体 (1142 団体)を通じ、親事業者に要請します。 1 概要 新型コロナウイルス感染症が世界的な広がりを見せてお り、日本国内においてもサプライチェーン等は影響がすで に生じております。 下請事業者からは、親事業者が十分協議することなく、 https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200303 002/20200303002.html

JARC LIVE 5 納期の遅れを理由とした一方的な取引の停止や適正なコ スト負担を伴わない短納期発注などの行為を受けた旨の 相談が寄せられております。 年度末を迎えることもあり、経営基盤の弱い下請等中小 企業に対する影響を最小限とするため、経済産業大臣 名で、影響を受けている下請等中小企業との取引につい ては、十分な協議の実施はもとより、納期や支払いなど に対して柔軟な対応を行うなど、業界団体代表者(800 団体)を通じて、親事業者に対し、一層の配慮を講じて いただくよう要請します。 今後、他省庁所管の業界団体代表者(342 団体)に対 しても主務大臣との連名で本日より順次要請していきます。 2 事業内容 ・納期遅れへの対応 親事業者においては、新型コロナウイルス感染症の影 響を受け、下請事業者が物資不足及び人手不足等に起 因して納期に遅れる恐れがあるとこを留意し、十分な協 議の上、顧客を含めた関係者の理解を得て、下請事業 者に損失補填を求めることなく、納期について柔軟な対 応を行うとともに、取引を継続的に実施するよう努めること。 ・適正なコスト負担 親事業者においては、新型コロナウイルス感染症の影 響によって、原材料価格等の高騰及び短納期による残業 や休日出勤の発生等によるコスト増を踏まえ、下請事業者 に対し、下請代金の支払いに当たって追加コストの負担 を行うこと。 ・迅速・柔軟な支払いの実施 親事業者においては、新型コロナウイルス感染症の影 響による受注減等を受けて下請事業者の資金繰りが苦し い状況にあることを踏まえ、既定の支払い条件にかかわ らず支払期日・支払方法について改めて協議し、速やか な支払いや前金払等の柔軟な支払いに努めること。 ・発注の取消・変更への対応 親事業者においては、新型コロナウイルス感染症の発 生に起因して、下請事業者に対し、発注の取消、また は数量、仕様等の変更を行う場合には、十分な協議を 行い、下請事業者に損失を与えることとならないよう、仕 掛品代金の支払いを行うなど最大限の配慮を行うこと。 詳細につきましては以下、ご参照ください。 https://j-net21.smrj.go.jp/news/tsdlje0000008d0n. html 厚生労働省 新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために 感染拡大を防ぐために 国内では、散発的に小規模に複数の患者が発生してい る例がみられます。 この段階では、濃厚接触者を中心に感染経路を追跡調 査することにより感染拡大を防ぎます。今重要なのは、今 後の国内での感染の拡大を最小限に抑えるため、小規 模な患者の集団(クラスター)が次の集団をうみだすこと の防止です。 *「小規模患者クラスター」とは感染経路が追えている 数人から数十人規模の患者の集団 感染経路の特徴 ◆これまでに国内で感染が明らかになった方のうち8 割 の方は、他の人に感染されていません。 ◆一方、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、 雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなど では、一人の感染者が複数に感染された事例が報告さ れています。 このように集団感染の共通点は、時に、「寒気が悪く」、「人 が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が 接触するおそれが高いところ」です。 国民の皆さまへのお願い ◆換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集 団で集まることを避けてください。 ◆イベントを開催する方々は、風通しの悪い空間や、人 が至近距離で会話する環境は、感染リスクが高いことか ら、その規模の大小にかかわらず、その開催の必要性 について検討するとともに、開催する場合には、風通し の悪い空間をなるべく作らないなど、イベントの実施方法 を工夫してください。 *これらの知見は、今後の疫学情報や研究により変わる 可能性がありますが、現時点で最善と考えられる注意事 項をまとめたものです(令和 2 年 3月1日発表)。 経済産業省(2020 年 3 月 13日発令) 新型コロナウイルスの感染症で影響を受ける事業者の皆様へ 経済産業省は新型コロナウイルス感染症で影響を受ける 事業者に向けての新たな支援策を提供しています。資金 繰り支援、設備投資・販路開拓支援・経営環境の整備 (下請取引・雇用関連・厚生年金・テレワーク・海外関 連)など各支援内容を経済産業省 HP 特設ページに掲 載しています。 また、最新情報については、e- 中小企業ネットマガジン・ 中小企業庁 Twitterでも登録者に随時配信しています。 新型コロナウイルスに関する経営相談窓口 土日のご相談:開設している窓口は以下 URLよりご確認 ください。 Ttps://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228010 /20200228010.html 検索「経済産業省 新型コロナウイルス感染症関連」 検索 検索 e-中小企業ネットマガジンの登録 「e-中小企業マガジン」 中小企業Twitter のフォロー「@meti_chusho」

6 (一社)宿泊施設関連協会(JARC)会長 / ㈱タップ 代表取締役会長 / 日本工学院専門学校 ITカレッジテクニカルディレクター 「観光産業を牽引するトップレベルの経営人材」 「地域の観光産業を担う中核人材」 「即戦力となる現場の実務人材」の 3層構造の育成・強化 宿泊業界における人材不足はますます深刻な問題となっている。一方で、政府は「観光先進国」への新たな国 づくりに向けて、訪日外国人旅行者数 4000 万人、6000 万人の実現を目標に動き出している。魅力ある宿泊業 界の実現と世界に通用する人材づくりを目指し、観光庁主導のもと、訪日外国人旅行者や旅行消費額のさらなる 増加を見据えた観光人材の育成・確保に着手している。そこで今回は、観光庁小熊弘明参事官をお招きし、宿 泊業界の発展を目指すJARC林悦男会長との対談を行なった。 スペシャル対談 観光庁 国土交通省 観光庁 参事官(観光人材政策) 小熊弘明氏 林 悦男

JARC LIVE 7 ―この先、全国 700 軒のホテル計画がされている一 方で、ホテルや旅館の宿泊業界の人材不足問題はま すます深刻となっています。数の不足とともに有能な 人材育成も課題とされています。観光庁として宿泊業 界の実情をどのようにとらえていらっしゃいますか。 小熊 政府は、2020 年に訪日外国人旅行者数 4000 万 人、旅行消費額 8 兆円、そして2030 年には訪日外国人 旅行者数 6000 万人、旅行消費額 15 兆円という高い目 標を掲げています。この目標の達成に向けては、宿泊業 界における人材不足について、「質」、「量」の両側面か ら取り組みを進めていく必要があります。「量」の不足は、 女性・シニア・就職氷河期世代などの国内人材の活用 や外国人労働者の受入れを強化するといった施策を講じ ているところです。他方、「質」の面については、宿泊 事業者はこれまで「勘」や「経験」に頼った経営を行っ ているケースが多く、実態の数値から現状分析を行ない、 その結果を踏まえた対策を戦略的に打ち出すことができて いないことが多いのが実態です。人材不足の中、効率 的に生産性を高めることに傾注していく必要がありますが、 まずは経営状況の実態等を把握する能力が必要ではな いかと思います。また2030 年には地方部での外国人延 べ宿泊者数 1 億 3000 万人泊を目指している中、全国的 に訪日外国人旅行者がストレスフリーで旅行を満喫してい ただくため、高いコミュニケーション能力や多言語に対応 できる高度人材のほか、IT 化技術を活用して生産性向 上に取り組めるような人材を育成していく必要もあると考え ております。 林 小熊参事官のお話をお伺いしていますと、生産性を 高める以前の問題ということですね。経営状況は会計シ ステムの数字を見れば鮮明にとらえることができます。会 計には財務会計と管理会計があり、前者はある意味、税 金を納めるのに必要な会計のため、多くの宿泊事業者も 勉強するのですが、本当に大切なのは管理会計です。 管理会計をみれば部門別の売上とコストの対比が明確で あり、数字を読み込むことで今、何が課題なのかが明確 に分かります。従来通りの勘や経験知では急速に変化す る環境変化の中、戦略的な指南を描くことはできません。 現状では、管理会計自体が宿泊事業者間で浸透してお らず、これに精通する人材も少ない状況です。今後は、 これらの会計システムを始めとするITも活用できる人材を 育成していくことが宿泊事業者の経営環境改善に繋がる のではないかと思います。 ―厳しい事実ですが、確かに管理会計をしっかりと読 み込める人材は稀有かも知れません。 その中で観光庁としてどのような人材育成に取り組ま れていらっしゃるのですか。 小熊 観光産業を我が国の成長に資する基幹産業とし、 さらに高いレベルの観光立国を目指すため「観光産業を 牽引するトップレベルの経営人材」から「地域の観光産 業を担う中核人材」、さらには「即戦力となる現場の実務 人材」の 3 層構造で人材の育成・強化に向けた施策を 実施しています。観光産業をリードするトップレベルの経 営人材に関しては、京都大学および一橋大学において 観光MBAを設置し、観光産業の強化・発展を推し進め る優秀な人材の育成・強化に向けて検討および支援を行 なっています。地域の観光産業を担う中核人材について は、宿泊業をはじめとした地域の観光産業の経営力強化 や生産性向上を目指し、社会人向け講座を全国 13 大学 で開講しております。講座内容は経営戦略、財務会計、 組織、マーケティング、ブランディングなどを中心に、業界 有識者や大学講師陣による講義やディスカッションなどを行 なっています。宿泊業や旅行業の方々が中心ですが、そ れに限らず、IT・広告、ガイド、伝統工芸に関わる方な ど、幅広い業種の方々が受講されています。それだけ観 光、特にインバウンドに対する関心が高まっていることを実 感します。即戦力となる現場の実務人材については、主

8 に地方の中小規模の旅館・ホテルなどにおける観光産業 の人手不足への対応として、働く意欲のある女性やシニ ア、就職氷河期世代の活用といった休眠市場への検討 を目的とし、地域が一体となって取り組んでいます。 ―今後、地方都市へ訪日外国人旅行者が増えると予 測される中で、従来の観光型からモノ作りや忍者など の体験型、そしてこれからは日本人の生活そのものを 体験したいというように日本における旅のスタイルが 変化しています。日本の観光産業の活性化において 地方都市の人材改革、育成は欠かせません。 小熊 日本の各地域では多くの観光資源を有していなが ら、それを商品化できていないケースが多いですね。今 後の訪日外国人旅行者の増加・旅行消費額の増加に向 けては、これらの観光資源をしっかり磨き上げていくととも に、それらの魅力をしっかりと発信できる人材を育成してい く必要があると思います。 林 地方都市の観光活性には「観光資源」を見つけ 出すことだと考えます。また日本は東西南北に長い国土、 四季による景観や四季が織りなす食文化など気候、自然、 食、文化(おもてなし)など、観光地として恵まれた環境 にあります。ある意味、恵まれすぎてその地域ならではの ものが見出しにくい状況でもあります。ほかの地域にはな い生産品や伝統工芸品や工場や施設など、それらを「観 光資源」ととらえれば都市に商品を卸すだけでなく、その 土地の資源として輝かせることができます。資源を輝かせ ることがその地域ならではのモノ、コトとして観光誘客につ なげることができるのです。40 年前、日本人は「エコノミッ クアニマル」と揶揄されていました。生産することに集中 し、戦後、経済大国として発展したのですが、その一方 で日本ならではの文化を輸出していなかったのです。単な る観光ではなく地域が連携し、日本の文化を観光資源と して輝かせていくことにより収益を上げ、その収益をさらに 観光資源の輝きに投資することで地方部における観光振 興につながるのだと思います。 ―全国的に富裕層観光が注目されています。政府で は50 のラグジュアリーホテルの建設に向けて財政支

JARC LIVE 9 小熊 弘明(こくま ひろあき) 平成 9(1997 年)運輸省(現・国土交通省)入省。 東北運輸局企画振興部企画課長、航空局成田国際空港 課課長補佐、在スペイン日本国大使館一等書記官、自 動車局旅客課バス事業活性化調整官、総合政策局公共 交通政策部参事官等を歴任。令和元年 7 月より現職。 けて何がネックなのか分析し、ネックを解消するためにはど のようにすべきかを、個々のホテルや旅館で考えるのでは なく、施設の発展、業界の発展を願っている宿泊施設を 取り巻くさまざまな専門分野の声や知恵、技術を大いに生 かしてほしいと思います。これまではシステムは IT 企業、 会計は会計事務所、建築・デザインは設計事務所など 専門分野に任せていました。個々がバラバラで全体をまと めていく人材が残念ながら不足しています。だからこそ、 いまは皆がそれぞれの技術や知識を持ちより改善してい くためのエンジニアリング人材が必要だと考えます。その ためにも今後、宿泊施設のサポーターとして活動している JARCは、観光庁が窓口になっていただき、必要なデー タ収集とともにデータ分析などから未来を予見し、生産性 を高めていくために必要なものを会員の皆様の知恵を結 集して新しい仕組みやサービスを創出していくべきだと考 えています。 小熊 皆様からさまざまなご意見やご希望をお聞きし、観 光庁としてもできる限りの取り組みを進めていきたいと思い ます。宿泊業をはじめとする観光産業は、まだまだ伸びし ろがあり、政府としても大いに期待している分野です。目 標とする数字の達成を目指すとともに、皆様とともに観光 産業の振興・活性化に努めてまいります。 援をすると発表されましたが、実際にホテル業界にお いて、それだけのものが必要でしょうか。 林 日本のホテルも世界で十分に対応できるまでに成熟し たと考えています。日本は世界と比較して5 つ星ホテルの 数は少ないですが、車に例えると世界のすべての人が超 高級車を買えるわけではありません。ところが、日本の高 級車なら幅広い層が手に届くのです。日本人が戦後目指 していた手の届く高品質は、現在では日本人に限らず世 界の人々にも貢献しています。日本のホテルも同様で必ず しも超高級でなくとも世界のお客様にハードやサービスは 十分にご満足いただけるものであり、おそらく海外ではマ ネできない日本人固有の精神文化だと言えます。これから 日本の宿泊産業が生産性を高めていくためにはマネジメン ト能力のある人材、そしてテクノロジーの進歩に適応でき る知識や想像力を持ち、さまざまなテクノロジーや業種を つなげて新たなサービスを創出できる「ホテルエンジニアリ ング」という新たな人材の育成が必要だと思います。 小熊 生産性向上という点で、観光庁では平成 28 年度 から取り組みを強化し、(一社)日本旅館協会と連携し、 全国旅館・ホテルの幹部層を対象にしたワークショップな どの取り組みを進めています。これまでに開催したワーク ショップでは、宿泊事業者の方々から、自らの施設で実践 した生産性向上に向けた取り組みを報告いただき、それ ぞれの「カイゼン」の好事例を、他の皆様の参考となるよ う動画及び事例集にまとめております。詳細につきましては、 「ホテル・旅館“カイゼン”で人手不足解消! 宿泊業の 生産性向上事例集」(http://www.shukuhaku-kaizen. com/)をご一読いただければと思います。シフト改善や 中抜け勤務の解消・見直し、人材育成・定着化、IT 化・ 機械化・道具化、レイアウト改善による効率化など、実際 に取り組まれたモデル事例をまとめています。また、業界 団体でも独自の取り組みが進められているところで、2月 20日には、(一社)日本旅館協会が主催の「旅館ホテル の生産性向上に関するセミナー」が開催され、宿泊事業 者の先進的な事例紹介やパネルディスカッションなどが行 われました。セミナーの中では、例えばチェックインの際に 翌朝の朝食券を渡す必要性の有無など、日常的に当たり 前のように行っていることを生産性向上の観点で改善に取 り組んだ事例が発表されました。 林 とても素晴らしい取り組みですね。生産性向上に向 s p e c i a l i n t e r v i e w

10 パネルディスカッション 登壇者 パネリスト 観光庁 観光産業課 観光人財制作室 参事官 小熊弘明氏 帝国ホテル東京 情報システム部 部長 花井伸二氏 一般社団法人 雪国観光圏 代表理事 井口智裕氏 一般社団法人 宿泊施設関連協会 会長 林悦男 モデレーター ㈱日本ホテルアプレザイル 取締役 北村剛史氏 開催:2020 年 1 月 29日(水) 会場:都市センターホテル 宿泊施設関連協会(JARC) 賀詞交歓会 2020 2020 年新たなスタートに向けて、1月29日、 都市センターホテルにて「JARC賀詞交歓会」が開催された。 全国各地より180 人を超えるホテルおよびホテル関連事業者が終結した。 当初予定していた人数を超える盛況ぶりで当日参加者もあるほどだった。 パネルディスカッションは『宿泊産業に必須となるホスピタリティサービス工学という視点とは』をテーマに、 人手不足の現状を打破するための新たなフィロソフィーが論じられた。 一般社団法人 ~ホテルに新たな活路を見出す 「ホスピタリティサービス工学」の力~ ホテル・人材育成に観光庁支援 ホテル・旅館業界における人手不足はますます深刻な 問題となっている。業界そのものを魅力あるものにするた めには、個々の優れた技術をつなぎ新たなサービスを作 り上げていく「ホスピタリティサービス工学」という新たな 視点が必要であるというJARC 林悦男会長の発想が披 露された。加えてホスピタリティ業界における人材育成、 地方創生における新たな視点などデータや実例を題材に 展開された。 人手不足の中で生産性向上をいかに実現していくべき かについて、「特に旅館業においては過去の経験や勘 に依存している傾向が強い」ことを観光庁 小熊弘明氏 は指摘した。人手不足により1人あたりの労働量が増加、 60 代・70 代が働き手として増えており、離職率は 30%を 超えるなど、次世代を担う若者を育成することができない 状況にある。そこで観光庁として経営者、中核、現場 の 3 つのカテゴリーに分けた育成を推進し、各分野のス 大きな変化の波に立ち打つために、さまざまな分野の知識や想像力を結集せよ!

JARC LIVE 11 ペシャリスト育成に乗り出した。 2019 年 10 月には東京・大阪の 2 拠点で「米国-日 本ホスピタリティマネジメントサミット」を開催した。このサミッ トは文化観光プロジェクトマネジメント委員会と米国大使 館商務部、日米商工会議所とともに日本政府の後援によ り行われた初の試みだ。本サミットの目標は国際競争力 のあるマネジメント人材の育成プログラムを開発すること により、日本のインバウンドツーリズムを長期的に持続成長 させることにあった。世界的に評価の高い観光経営プロ グラムを有するネバダ大学ラスベガス校ら6 大学を米国よ り招いた。経営者育成においては京都大学、一橋大学 の観光MBAの開設支援を行なった。 「新年度は訪日外国人旅行者受入環境整備に向けた取 り組みや、フロント業務・企画・接客ができるマルチタス クな外国人労働者の育成にも注力していきます」(小熊 氏)と、人材育成の取り組み強化により、魅力あるホス ピタリティサービス業界へ向けた支援を通じて、国際的 に通用する業界発展に努めていく。 開業 130 年機にオペレーションの 大きな変革 帝国ホテル東京は接客への集中を図るためのシステム 改善に着手した。1983 年以来、ゲストとホテルマン目線 で自社開発したシステムで運営してきたが、外国人スタッ フの起用に伴い操作が複雑なことからフロント業務の効 率化が課題となった。世界の 5ツ星から就職した優秀な 人材が、システムが複雑なためフロント業務に立てないと いう実情があったからだ。 「ハイテクで効率的なシステムを導入することで、最後の ラストワンマイルは帝国ホテルらしい接客を通してお客さま とのつながりを築いていきたいという思いと、外国人雇用 が強いられている中、操作が分かりやすいシステムに切 り替ることでグローバル化に対応する環境を整えました。 開業 130 年という中、オペレーションの大きな変革でもあ ります」(花井氏)。 『雪』をブランド化した広域ブランディン グ 雪国観光圏 井口智裕氏は 2008 年より『雪』をブラ ンド化した広域ブランディングに着手した。その範囲は 3 県 7 市町村におよぶ。 「“雪”イコール“スキー”は降雪が少ないときリスクが高い。 そこで“雪”イコール“文化”という発想に切り替え、新 しいマーケットの創造に着手したのです」(井口氏)。 コンテンツに共通する独自の価値を見出し、個々の力 を結集させることで地域活性化につなげていくというもの だ。雪国は冬を越すための食の知恵の宝庫でもある。 早春から晩秋にかけて採取した山野の恵みを塩漬けや 乾燥品、発酵食として蓄える食文化は世界に誇れるもの。 織物文化や温泉など“雪”を軸にすると多様なものが発 掘できる。 「雪と共生した文化の素晴らしさを伝えるために、適切 な投資を行なうこと、そして一定のサービス基準を備える ことで安心感とラグジュアリー感を感じさせることができま す。令和元年7月、新潟県魚沼市に全面リニューアルオー プンした ryugon(龍言)は、ハード、サービス、ヒュー マンにこだわり、新たなスタートを切り、新たなマーケット の創造にチャレンジしています」(井口氏) 顧客満足度を高める工学の知識と創造力 最後に林悦男会長より宿泊産業の活路を見出す「ホ スピタリティサービス工学」の可能性が語られた。宿泊 産業は個人の力量に依存する「パーソナルサービス」 を軸に運営してきたが、後に画一化されたマニュアルで サービスを提供する「ヒューマンサービス」が主流となっ ている。最近ではAI 化にともないさまざまな場面でロボッ トを活用する機会も増えてきたが、テクノロジーだけでは 顧客満足度を高めることは難しい。この壁を突破するた めには生産性を高めながらも顧客満足度を高めていく頭 脳として工学(エンジニアリング)という発想が必要であ ると林会長は提言した。 「テクノロジーをサービスに変えていくことができるか、こ の発想を持っているのが工学者です。何と何を結び付け て顧客満足度を高めるサービスに変化させていくことがで きるか、高度な知識と柔軟な発想、創造力がなければ できません。工学は時代とともに変化します。失敗を恐れ ることなく何度も検証することで、新たな活路を見出すこ とができます。インテリアデザイナーとテクノロジー、工学 とホスピタリティサービスなど、工学をつなぎ役として活用 することで計り知れないことが実現できます。ぜひ、新た な分野としてホスピタリティサービス工学の存在価値をご 理解いただき、魅力あるホテル作りに挑戦してほしい」と 力強く語った。 懇親会では日本政府観光局 国際観光振興機構 亀山 秀一理事長代理、国際観光施設協会 鈴木裕会長、日 本観光振興協会 久保成人理事長等が壇上にてあいさ つをおこなった。参加者同士での名刺交換、情報交換も 活発に行われにぎわい、活気のあふれたひとときであった。 もはや1人、1社、1団体、1市区町村では大きな変 化の波に太刀打ちできない。ともにホスピタリティサービス 業界の発展に向けて、今こそ立ち上がる時であることを 痛切に感じたパネルディスカッションであった。

12 開催:2020 年 2 月 5 日(水)・6 日(木) 会場:沖縄コンベンションセンター JARC出展 JARC REPORT ALL JAPAN MADE ENGINEERING TECHNOLOGY(ALL JAPAN EN-TECH) 5 社結集「競合×協業」から誕生した画期的な『手ぶら観光』初披露 JAPAN MADE は伝統工芸品や一企業の製品に止まらない。 同業他社の壁を乗り越え、日本企業の英知や技術、 そして思いを結集させることで顧客満足度を一層高める 新たなサービスを作り出せることを JARCは実証した。 初披露した 5 社協業によるストレスフリーな「手ぶら観光」はまさに競合を越えた新たな一歩であり、 そこには時代や消費者志向の変化を柔軟にとらえたエンジニアリングの創造力とつなぐ力、 そして 5 社の熱い思いがあった。 ㈱タップ / オムロン ソーシアルソリューションズ㈱ / 全日空商事㈱ / ㈱沖縄タイムス社 / ダイナテック㈱ / ~リゾート沖縄から発信するテクノロジー~ 「ResorTech Okinawaおきなわ国際見本市」

JARC LIVE 13 令和元年 沖縄県観光客数、 過去最高数値に 沖縄県 文化観光スポーツ部 観光政策課の調べ によると、令和元年の観光客数は 1016 万 3900 人で過去最高の数値を記録した。対前年比 31 万 6200 人、3.2%の伸びとなった。外国客も過去最 高の 293 万人、対前年比で2 万 6000 人となった。 令和 2 年は那覇空港第二滑走路の使用開始や東京 2020オリンピック・パラリンピック競技大会や今秋に はツーリズムEXPO 沖縄開催が予定されている。まさ に日本を代表する観光県として期待されている。 課題として那覇空港からのインフラ整備がある。特 に長期旅行スタイルの外国客は荷物が多く、那覇空 港と市内を結ぶ市民の足でもある「ゆいレール」は大 きなスーツケースを持った外国客の乗車により乗車可 能な人数に限界がある。空港内のレンタカー手続きに かかる時間の問題など、空港に到着してから観光に踏 み出すまでの一歩にストレスを感じさせている。 そこでストレスフリーな観光基盤を構築するために タップとオムロンソーシアルソリューションズは空港に おける自動チェックイン機の共同開発を行なっていた。 チェックインとホテルシステムを連動させることで、ホテ ル到着後のチェックイン手続きの時間短縮を図るという もの。ホテルスタッフも事前に外国客の本人確認がで きるため、パスポートの提示や読み取りなどの時間を 省くことができる。 沖縄県からタップにリゾテックへの出展依頼があっ たのは昨年の 8月のことだった。そこでタップ1社で 出展するよりも新たに画期的な何かを提案するために JARCとしての出展をJARC の会長でもある林悦男 会長が決断。その後、事前チェックイン機をさらに発 展させ、よりストレスフリーな環境を作り出そうと考えた のが「手ぶら観光」だった。 仕組みとしては入国後、荷物を空港内カウンターに 預けるとともに自動チェックインを行なうことで空港から スーツケースを持たずに、レンタカーの手続きや観光 に行くことができるというもの。預けた荷物はチェックイ ンする15 時ごろまでに宿泊施設に配送される。逆に 帰国の際にも夕方便で出国する場合は、このサービス を利用することでスーツケースを持たずに空港まで行く ことができる。荷物を待つことにおけるロスタイムを計 “まずはやってみなければ分からない!” 顧客に寄り添うテクノロジー 5時間の余暇を創出するストレスフリーな仕組み構築 JARC REPORT

14 ると約 5 時間の余暇を得ることができる。5 時間の余 暇における観光収入も上げられるというわけだ。 わずか 3 カ月で「手ぶら観光」の 仕組み構築 このサイクルを作り上げていくために、すでに成田 空港や関西国際空港で実施されているエアポートサー ビス(ホテルから空港への荷物配送)を展開している Airporterと提携している全日空商事が参画。那覇空 港ビルディングとの交渉により2019 年 3月より国際 線、保安検査所近くに設置しているカウンターを活用 することになった。物流においては沖縄タイムスが参 画、日中空いている新聞を運ぶためのトラックを荷物 配送として活用することになった。これにより空港内で の荷物預かりとチェックイン、そして荷物の配送を実現 できる構図ができあがった。これは昨年11月のことで、 わずか数カ月のスピード力だ。 加えて本来はタップと競合するダイナテックも組める ところは組んでいくべきという判断から「手ぶら観光」 に参画した。今年の秋、那覇空港で実証実験を行な い、早々に稼働させていく計画だ。 「5 社が1つの方向に向かって協業していくために は、常にお互いの方向性を確かめています。それぞれ が考える“ 成功とは何か ”ということです。1社だけ良 くてもこの協業は継続できません。関わる5 社が皆、 納得できる結果を得られるために密に情報交換、意 見交換していくことが大切です。問題や課題にぶつ かったときに、それを打開するための案や意見を交わし て解決策を見出していけるようにしていくことが、この 仕組みを持続させ、より発展的にするために必要だと 考えています。課題として有料サービスに対するプラス アルファのメリットがほしいところ」(㈱タップ 沖縄事業 所 事業所長 高橋拡行氏) 「私たちはオートメーションの独自技術を通じて、人々 がより創造的な分野に時間を使えるようイノベーション を起こしてまいりました。例えば、今では当たり前となっ ていますが、駅の自動改札機や自動券売機の開発を 通じて、世界初の無人駅システムを実現しています。 これらのノウハウを集結し、弊社は業界の課題である 労働力不足の解決策の自動チェックイン機の開発を行 いました。今回は自動チェックイン機の技術を用いて 空港におけるプレチェックインサービスに取り組みます。 JARC REPORT

JARC LIVE 15 JARC REPORT 本取り組みによってホテル業務の省力化、効率化の 実現及び、宿泊者へのおもてなしの充実が図れます。 今後の実証実験を通して検証していきたいと思います」 (オムロンソーシアルソリューションズ㈱ 社会ソリュー ション事業本部 事業開発部 主査 虎吉晃平氏) 「沖縄の訪日外国人客の増加傾向は今後も続く見 込みで、3月下旬の那覇空港第二滑走路供用開始 も一つの弾みになると思います。観光客の増加に伴 い大きな手荷物が移動の妨げになり課題となっていま す。課題解決の一助となるのが多言語での予約・問 い合わせ・キャッシュレス決済ができる手荷物配送サー ビス「Airporter」です。沖縄では11月から試験サー ビスとして開始していますが、認知度がまだ低い為、 このサービスをご利用いただけるよう早急に販促告知 を強化していきたいと思います。サービスの活用で手 ぶらとなり観光時間の創出にもつながります。観光客 も地元の方々にとっても、手荷物によるストレスや不 便を少しでも軽減させることが、観光課題の解決とな り、沖縄観光における持続的な発展ができるものと 確信しております。国際線だけでなく国内線利用時に もAirporter サービスをご利用いただけます。たくさん のお客様に活用いただけるよう認知度アップに努めて いきます」(全日空商事㈱ デジタルマーケティングカン パニー 事業推進部 事業推進チーム チームリーダー 松井重樹氏) 「新聞購読部数の減少が顕著な中、関連会社のタ イムス発送が持つ人材とトラックを活用できないかと模 索していました。以前、経済・観光の記者をしていた ことから、外国人観光客の手荷物輸送サービスへの 展開を考えていました。記者時代の人脈でホテルにヒ アリングをしていたときに、あるホテルからそのようなサー ビスを考えている企業があるという話を聞き、タップの 林会長と出会ったことがきっかけでこの度の企画に参 画できました。強みは運送スタッフや車両を自社で対 応できることです。これを機にこれまで新聞配送で培っ てきた定時配送・配送ノウハウを活かし新たな物流の 活用を見出していきたいと思います。この事業に県内 企業としてタイムス発送が参画できたことに感謝してい ます」(㈱沖縄タイムス社 課長 久高愛氏) 「ホテルシステム開発に携わり33 年目を迎え、 2015 年よりヤフーグループとして活動しています。林 会長にお声を掛けていただき“ 競合と協業 ”することで 1社ではできない限界を超えていくことができると考え、 参画いたしました。1社1強ではなく組めるところは組 み、ALL JAPANとして新たな仕組みを構築していく ことにより、ストレスフリーな観光や余暇の創出にとも なう旅行の広がりを提供することができます。まだない 新しいサービスを提供することで付加価値を見出してい ただくことが、最終的にPMS の発展にもつながるの だと思います。まさにトライ&エラーです。まずはやって みなければ分かりません。試行錯誤を繰り返し、ALL JAPAN のタッグ力により“ 沖縄に来て良かった!”と 言っていただけるようにしたいですね」(ダイナテック㈱ 代表取締役社長 齋藤克也氏) 各社ともに “ 成功とは何か ”、この事業の先に 何かを見出していきたいという思いが熱く、沖縄から 誕 生した『ALL JAPAN MADE ENGINEERING TECHNOLOGY』に期待したい。 最後にタップ 高橋拡行事業所長より「ゆくゆくは到着 後、ターンテーブルで荷物を受け取る時間のロスもなく していきたい」と一言。限りなく顧客のために寄り添っ たテクノロジー開発と企業融合させるエンジニアリング の創造力に計り知れない未来と可能性を感じた。 2020年2月5日~6日、沖縄コンベンショ ンセンターを会場に沖縄初の試みとして開 催。『リゾテック(ResorTech =Reasort ×Technology)』をコンセプトに、国内外 からテクノロジー関連企業 136 社(県内 77 社、県外 34 社、海外 25 社)が結集 した。出展ブースでの展示商談やビジネス ピッチ、事業成果報告や最先端のテクノロ ジーを体験することができる「最先端体験 ゾーン」も設営された。 目指すべきは IT 活用にともなう「人手不 足対応」「キャッシュレス対応」「デジタルト ランスフォーメーション」など、観光業にの みならず全産業の生産性と付加価値向上 につながる沖縄初の本格的なテクノロジー の見本市。IT テクノロジーの活用によるイ ノベーションを起こすことにより、SDGs に おいて提唱された社会課題解決につなげる ことを目指す。まさに観光・IT産業をリーディ ング産業とする沖縄だからこそ実現した見本 市でもある。 観光・IT産業をリーディング産業とする 沖縄だからこそ実現! 「ResorTech Okinawa おきなわ国際見本市」概要

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