なんぶの里人 Vol.1

12 = 農業 NANBU no SATOBITO 42 Text = Mai Habata 農業少年の夢 内田さんは幼い頃から祖父母や親 の農業を身 近に感じ、「将来は地元で農家になる」と夢見て きた農業少年だった。 小学生の頃から休み時間は校長先 生とトラク ターに乗り、繁忙期には終礼がなる が早いか学 校を後にして田んぼに行く。地元の 中学校を卒 業した後は、鳥取県立倉吉農業高等 学校、鳥取 県立農業大学校を卒業し『農業への 道』を着実 に進んでいった。 そうした内田さんの農業への夢を ずっとそば で見てきた地元の人たち、若い担 い手の雇用 体制を作るため、2002年農事 組合法人を 設立した。そして、大学校卒業後すぐ に同法人 に勤めた内田さんは現在作課長を務めている。 「農機がかっこよかったから農業を 目指すよう になった。」 内田さんは無類の農機好き。特に海 外製の農 機は馬力も大きさも凄まじく、北海 道で開かれ る農機の展示会には毎年行くそうだ。 もちろん農機に乗りメンテナンス をするだけ が仕事ではない。作業計画、事務作 業、従業員 への指示などを統括する傍、地域の 集まりごと への参加や、同業者と交流も欠かせない。 農家にとっては当たり前かもしれ ないが、中 学生以降ゴールデンウィークがあっ た記憶はな く、下手すれば除雪作業で年末年始 がない年も あるほどの多忙さだ。日々に追われ る中でも今 後の会社の方向性を考えながら、高 齢化する社 会と変化する時代の中で、常に農 の形に向き 合い模索し続けている。 地域の人のあたたかさ 南部町のどういうところが好きかと伺うと、 「人 が色々と〝ごしてくれる〟とこかな。」と話す内 田さん。近所の人が野菜をくれたり、困っている ことがあったら助けてくれたりする、そんな人の 温かさだ。 ※ごしてくれる くれる そう思うのは、小さい頃から内田さんにとって 地域の人たちが先生だったからだろう。 「機械は田住の吉持さん、農機の修理は北方の足 井さん、土木の知識は三崎の唯さんから…そんな 風にそれぞれの分野をその道の先輩である地元 人に教えてもらったんよ。」 そう話す内田さんの言葉からは、地域の人たち に育ててもらったという感謝の気持ちと、その期 待を背負っているという責任感が感じられた。 人が人を育てる。地域の大人が子どもを育てる。 機械化が進み、インターネットさえあれば何でも 調べられるような時代の中で、人から人へ、大人 から子どもへと言葉や経験として伝わっていくも のこそが本来のコミュニティーの形であり、田舎 だから 残る強みなのかもしれない。 界隈では有名な“農業大好き少年〟の夢と彼 を応援する地域の思いが形になった『農事組 合法人 寺内農場』。おおよそヘクタールの 土地で米を中心に大豆やそばも栽培している。 農機に魅せられ夢を叶えた農業少 年 内う ち だ 田 雅ま さ し 史さん

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