安全で楽しい登山を目指して

77 第7章 登山の医学 1 予防できる病気である ・「水分補給」 登山前・中・後に水分補給を十分行うが,開始前の飲水がとても重要。 ・「暑熱環境」 WBGT(気温と湿度)が高いと熱中症のリスクも高い。 ・「尿の回数と量」 登山中,脱水の目安として尿の回数と量を確認。口渇感は当てにならない。日常生活 同様でなければ既に脱水。水分補給を1ℓ以上する。 2 死の危険を早めに見つけ,死亡を防ぐ ・「意識がおかしい」「体温39℃以上」どちらかを疑えば緊急事態。直ちに救助要請し,体温を下げる努 力を行う。機を逸すると死を招く。 ※準備するもの :「登山の医学(登山部報に掲載)」をご用意下さい。 ※指導参考書 :「登山研修 vol.33」インターハイ登山競技における医療的安全管理(大西浩・大城和恵) https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2018/vol33tozankensyu/2-1vol33.pdf (1)予防 ア 水分と塩分補給の必要性を理解させる 運動中の体温調整には発汗が重要で,汗から水分と 塩分が消費されるため。 イ 脱水に早期に気づく方法を理解させる (ア)脱水の症状に典型的なものはなく,意識しな いと気づきにくいことを理解させる。 (イ)一般には,だるい,頭痛,嘔気,仲間に遅れる, などから始まり,疑うことが重要。 (ウ)脱水の目安として「尿の回数と量」を確認。 日常生活同様でなければ既に脱水であり,水分を 1ℓ以上飲み,尿が出ることで改善しているかど うか判断する。喉の渇きは体重が2%以上減ると 出現するため,早期の指標としては当てにならな い。 (エ)女性はトイレを減らす為に飲水を控えて脱水 になり易い。山行中はルールとして,安全の為に 全員が定期的にトイレ時間を取ることを遵守する 必要性を理解させる。 (オ)脱水の回復には半日以上かかるので,かかっ てしまうと山行計画を全うできなくなる。 ウ 脱水は熱中症のみならず,低体温症,高山病な ど多くの病気のリスクとなる。最悪は死に至るこ ともあるが,予防できることを理解させる (ア)水分補給のポイントを理解させる ① 登山前・中・後の3つのタイミング ・「登山前」夜間は水分を摂らないため,起床 時は体が渇いている。起床後 500mℓ以上飲 水させ,排尿が起床後+もう1回以上あって から出発。 ・「登山中」の必要水分量は,荷物や天候,地 形等により同じ登山者でも毎回異なる。 ・「登山後」は疲労による老廃物を尿に出すた めに水分を多く必要とする。 ② 連日登山 前日の脱水状態が翌日以降に影響する。①を 実施して脱水を持ち越さない。 (イ)WBGT による環境評価 登山は活動時間が長く荷物負荷が大きいため, 過去の全国高等学校総合体育大会(インターハイ) では,WBGT25℃以上で熱中症発生が急増して おり対策が必要。 ▶事前指導のポイント ア 脱水予防の対策を検討し実施させる。 (1)水の飲み方(量,タイミング,何を飲むか, 水場,持参する水の量),(2)脱水の早期発見の 仕方,について意見を出させ山行で実施させる。 イ 次回の山行の近郊地でのWBGT予報が午前10 時から午後2時まで26℃と仮定し,対策を検討 させる。 ウ 部活で経口補水液を作成してみるのも良い。 ※ 役に立つ飲料 汗で消費される塩分,吸収を早める糖分を含む飲料 が適している。 2 脱水と熱中症

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz