安全で楽しい登山を目指して

35 第2章 高等学校山岳部の活動計画 エ 第4ターム 第4タームは冬の活動となる。冬の活動については, スポーツ庁より,「高校生及び高等専門学校生(1年 生から 3 年生)以下については,原則として冬山登山 は行わないこと。」という通知が出されている。2017 年(平成29年)3月に起きた栃木県高体連の那須雪 崩事故を受けて,スポーツ庁は高校生の冬山登山につ いて,有識者会議を設置し,高校生(中等教育学校後 期課程,特別支援学校高等部を含む。)及び高等専門 学校第 1 学年から第 3 学年までに属する生徒(以下「高 校生等」という)の冬山登山の事故防止のための方策 について,専門的な観点から検討した。スポーツ庁の 通知は,冬山登山を「主に積雪期における登山とする が,時期に関わらず,気温の変化や降雪・積雪等の気 象条件による凍結,吹雪,雪崩等に伴う転滑落,埋没, 凍傷,低体温症などにより,遭難事故等が発生する可 能性のある環境下で行う活動」と定義し,次いで「高 校生等が例外的に冬山登山を実施する場合の条件及び 留意点等」をあげ,その際の条件を列記している。す なわち,①適切かつ安全な場所での基礎的な内容にと どめること,②指導者(顧問等)の条件を整えること, ③登山計画審査会(仮称)の事前審査を受けること, ④校長及び保護者の了解を得ること,⑤生徒への事前 指導等を実施することという 5 項目である。したがっ て,原則として行わないこととされている冬山登山を 例外的に実施する際には,この条件に沿った形で,行 うこととなる。 計画に当たっては,ステップアップをしながら,冬 山での様々な生活技術の向上を図ることを目的とす る。冬山と一口に言っても年により,また山域により, 極めて多様である。山岳部の活動として,安全にしか も楽しくできることも多い。 まずは12月初旬の寒さへの身体慣らしから始め, 日帰りでの低山ハイク,安全が確保できるスキー場近 くの尾根などでの1泊,雪遊びを交えながらの雪上生 活やキャンプ,雪洞やイグルー作り,歩行技術訓練, 雪上訓練などを上記原則に則り,常に安全教育の観点 を明確に意識しながら行いたい。 資料として,積雪のあまりない県の高校と積雪のあ る県の高校の1年間の登山活動の実例を示す。 関東地区の高校の活動例 時期 内容 日数 第1ターム 4月上旬 県大会下見① 西丹沢 1泊2日 4月下旬 県大会下見② 西丹沢 1泊2日 4月下旬 新入部員歓迎ハイキング 箱根 日帰り 5月上旬 GW山行 北八ヶ岳 2泊3日 5月中旬 県大会下見③ 西丹沢 1泊2日 5月下旬 県大会 西丹沢 1泊2日 第2ターム 6月中旬 日帰り山行 丹沢 大山三峰 日帰り 6月下旬 1泊山行 丹沢 戸沢 塔ノ岳 1泊2日 7月中旬 夏山訓練山行 奥多摩 雲取山 1泊2日 8月上旬 夏山合宿 北アルプス涸沢定着(奥穂高岳・北穂高岳) 4泊5日 第3ターム 8月中旬 リーダー講習会 西丹沢 モロクボ沢 マスキ嵐沢 2泊3日 8月下旬 大菩薩峠 1泊2日 9月上旬 富士山 1泊2日 10月中旬 奥秩父 乾徳山 3泊4日 11月中旬 伊豆 天城縦走 1泊2日 第4ターム 12月中旬 冬山入門山行 西丹沢 檜洞丸 1泊2日 12月下旬 雪上歩行・生活技術 天神平周辺 2泊3日 1月上旬 多摩川での駅伝大会に参加 日帰り 1月下旬 県新人大会 丹沢 三の塔 塔ノ岳 1泊2日 2月中旬 丹沢 鍋割山 塔ノ岳 1泊2日 3月中旬 春山訓練山行 笹子雁ヶ腹摺山 滝子山 1泊2日 3月下旬 春山合同山行 北八ヶ岳 黒百合平 天狗岳 4泊5日

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