安全で楽しい登山を目指して

22 第1編 山岳部の指導者(顧問等)になろう ▼ 指導のポイント ア 勢いづいたパーティーを止めるのは難しい。笛 や大きな声でパーティーを止める練習をしよう。 イ 一旦止まって行動を評価するための場所や時間を 入山前に決めておくと,パーティーを止めやすい。 ウ エスケープルートや引き返す時の危険箇所や引 き返す時間(チェックタイム)も事前に決めてお こう。 (3)事故発生後のダメージコントロール 事故が発生したら,それが発展しないように最小限 のダメージにとどめるように努める。そのためにメン バー全員の安全を確保し,次に要救助者の負傷など身 体的に緊急性のあるものを把握・対処する。(第3編 第 5 章「危急時対策」,第 7 章「登山の医学」を参照) 緊急性を認めたら,迷わず支援チームに緊急連絡し て,助言や救助を要請すること。 3 支援体制のある登山チーム 登山中に他パーティーが近くにいたら,共助をお願 いすることもある。しかし常に他パーティーが近くに いるとは限らない。 そこで,万一に備えて,事故パーティーを救助する ための支援体制を事前に決めておく。これには,消防・ 警察・病院だけではなく,登山ガイド,山岳団体,登 山道具店なども加えた大きな連携があっても良い。こ のような支援体制をもった登山チームを構成しよう。 この登山チームは,遭難防止にも積極的な役割を果 たすことが期待される。たとえば,登山計画の相談, 行動中に判断の迷いなど,遭難しないように事前の助 けになってもらう。 特に,新しく山岳部の顧問になった指導者には,登 山行動のこと,気象のこと,医療的な対処などの面か らも支えてもらえる機能的な登山チームが必要である。 スポーツ庁はすでに各都道府県の教育委員会を通じ て,登山計画審査会の設置を全国に指示した。この登 山計画審査会も登山チームの一つとして高校の山岳部 の活動を支える仕組みである。 ▼ 指導のポイント ア 登山者と登山パーティーだけで問題を抱え込ま ず,他に相談や助言を受ける仕組みを作ろう。 イ 事故が発生してからの支援だけでなく,事故防 止のために働く登山チームを活用しよう。 【演習問題】 1 登山の環境と運動の特異性とリスクを挙げよう。 2 登山道や道標が整備されれば,登山の事故は防げ るか,事故防止には何が必要か話し合おう。 3 登山パーティーや支援体制を含む登山チームが安 全登山に果たす役割についてまとめてみよう。 (北村憲彦) 実行 リスクマネジメントによるチェック(登山中) (例)登山中断と遭難回避を仲間で事前に約束 保険 (1)山岳遭難対策保険 登山届 (2)自宅、入山口や警察 体調 (8)筋力、(9)反射反応、(10)平衡性 体感気温 (5)高度、(6)天候、(7)風速 装備 (11)雨がっぱ・防寒、(12)食糧・燃料 日程 (13)チェックタイム、(14)日没 体調管理 (3)日常生活、(4)直前(睡眠・食事) B B A A 登山道整備 道標整備 気象情報 B、C B、C クラブ、学校 職場、家族 留守本部 山岳団体・旅行業者・ショップ 警察・消防・救助隊・医療機関 近くのパーティー ・A 自助 ・B 共助 ・C 公助 ①登山者 ②登山パーティー ③登山チーム リーダー、フォロワー チームワーク 登山教育 計画チェック 参考:「リスクマネジメントとダメージコントロール」村越真、登山研修 vol.32(2017)、 44-54;同、登山文化 vol.18 (2017)、52-62. 登山チームという機能的な安全管理体制(システム)づくり 近くのパーティー

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