安全で楽しい登山を目指して

164 第4編 リスクマネジメントに関する総合演習 双六岳南東尾根は幅が広く,周囲がハイマツ・荒れ地の砂れき地を下る。このような場所では登山道がわかり にくくなっている可能性が高いので,尾根であること,方向の確認を行う。また尾根を外すと急斜面に至るので, それまでとは確実に異なる急斜面がその後も続くような斜面に出てしまったら,尾根を外してしまったことを疑 い,尾根線の登山道に復帰する。また,尾根からの最後の下りは北東方向で,やはりルートを外すと急斜面や岩 場に出る可能性があるので,方向を確認しながら降りると同時になるべく遠くを見てルートのつながりを確認し ながら進む。 (村越 真) Ⅳ 医療 (1)風邪,低体温症,高山病,高地肺水腫,肺炎 (2)飲水状況,排尿回数,症状はいつからか,体温,脈拍数,呼吸数,あれば血中酸素飽和度 (3)自力下山できない状況であり,救助要請が必要。緊急性は高い。 [解説]ここでは,高地肺水腫を「疑う」ことがポイント。標高 2,500m 〜 3,000m の縦走では,急性高山病の他 に,高地肺水腫を起こす場合があり,致命的になり得る。風邪と似ているため,初期には緊急性の判断が難しい。 トイレまで歩くのに息切れをしている状態で,肺から酸素を取り込めていない。高地肺水腫は,標高の高いこ とが原因なので,標高を下げないと死に至る恐れがあり,緊急性が高い。肺に障害を来たした場合は血中酸素 飽和度が下がるので,測定値が周りの生徒に比べて低ければ,判断の一助となる(医療判断であるので,あく まで参考に用いる)。 高地肺水腫は,高所の現場では絶対治らないので,疑ったら直ちに救助要請!! (4)標高を至急下げることが何より優先する。登山を中止し,救助要請を行う。ヘリコプターが来れない,救 助隊到着に時間がかかるなどの場合は,救助隊と接触できるところまで背負って下山し,少しでも標高を下げ る。地形や人員の事情等で背負えない場合は歩かせる場合もある。 下山する場合も救助待機中も,防寒着を着せて暖かくする。待機する場合は寝袋で休ませると良いが,姿勢 は上半身は起こしてもたれるように座らせる。近くに酸素があれば,積極的に使用し,移動中にも吸入させる。 (酸素ボンベによる酸素投与量は酸素を管理する側の医師に確認する。) この状態では通常脱水になっているが,嚥下や消化能力も低下しているので,無理に飲ませて誤嚥させない ようにする。 (大城和恵)

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