安全で楽しい登山を目指して

153 第2章 中級演習 【解答例】 Ⅰ 気象 (1)強風による転滑落。等圧線の間隔が次第に狭くなっていくことが予想されている。一般的に東京/名古屋 の距離よりも等圧線の間隔が狭いときは,森林限界を越える場所では平均10m/sを越える強風となり,稜線 の一部では平均 15m/s を越える風となる恐れがある。平均 15m/s を越えると,体のバランスを崩したりして, 転滑落のリスクが増し,低体温症のリスクも高まる。また,大阪/名古屋の距離より等圧線の間隔が狭くなる ときは,平均 20m/s 以上,稜線では平均 25m/s 以上の暴風となる恐れがある。テントが倒壊したり,行動す ること自体が難しくなる。 図1では,鳳凰三山付近の等圧線は東京-名古屋間の間隔と同じ程度となっており,図2では大阪-名古屋 間の間隔と同じ程度になっている。つまり,6時の時点で,森林限界を越える薬師岳より北側では10m/s以 上の強風になる恐れがあり,18 時の時点では行動が不可能になったり,テントが倒壊する暴風の恐れがある。 (2)レンズ雲 強風時に現れる典型的な雲。この雲が現れたときは 登山口でそれほど風が強くなくても上部では強風に なっていることを想定しなければならない。 (3)森林限界の手前にある南御室小屋に幕営(宿泊) する。 (4)落雷,沢の増水(ドンドコ沢コースを青木鉱泉 へ下山する場合) 図3を見ると,寒冷前線が鳳凰三山付近を通過する 所である。寒冷前線が西から接近する場合には,前線 付近や前線の暖気側(東,南東側)で積乱雲が発達し, 雷を伴った激しい雨が降る。したがって,落雷や沢の 増水,土砂崩落,落石などのリスクが考えられる。寒 冷前線に伴う雨は短時間で止むことが多いので,この うち,土砂崩落のリスクは比較的小さい。 なお,寒冷前線に伴う落雷や強雨は,日本海側の山岳では年間を通じてリスクが大きいが,太平洋側の山岳で は秋から冬にかけては前線が弱まることが多く,天気があまり崩れないこともある。逆に,春から初夏の時期は 太平洋側の山岳でも雷雨となり,南西側に海がある山では,前線が近づく前から大雨となることがある。 (5)出発時間を遅らせる 図1 図2 レンズ雲 強風の目安となる 東京/名古屋の距離 鳳凰三山付近の 等圧線の間隔 暴風の目安となる 大阪/名古屋の距離 鳳凰三山付近の 等圧線の間隔 ((図 1,2は気象庁ホームページより)

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