JARC LIVE 35 投資会社、お金持ちの個人。学校。 事業拡大のため。ホテルを使って企業アピールしたい。 海外のホテルの日本進出、日本のホテルの海外進出のため。 ホテルを買うという点において、ホテルを運営している 会社を企業投資として買うというやり方もあり、事例をご紹 介します。「ユニゾホールディングス」という不動産会社は 「ホテルユニゾ」を展開し、運営施設数を急拡大させて いきましたが、経営が厳しくなったことから身売りすることに なりました。当初協議をしていたのは旅行代理店大手の H.I.Sでしたが、そのあとフォートレスやブラックストーンといっ た投資会社も参戦し、ユニゾホールディングスの経営者 の思惑もあって紆余曲折、報道等でも連日この話題が世 間を賑わせました。最終的には米エリオット・マネジメントと いう会社が投資することになったわけですが、ほかのビジ ネスと同様、投資ということにもそれぞれの人の思惑がか らんでいる、ということが良くわかる事例です。開示情報 も結構あるので良かったら見てみてください。 では「なぜ、ホテルを買うのか」についていかが でしょうか。 ＜学生の回答＞ 価値が上がったときに投資家が売るため。 ブランド力が低いところを上げて莫大な利益を得るため。 利益を見据えて買う。 メディアに露出、話題性。 会社ブランドが上がり利益も上がるため。 お金を増やしたい。土地がほしい。 ホテル投資と言うと難しいと思いますので身近なところで 考えてみましょう。例えばユニクロのシャツやチョコレートな ど、原価はいくらで販売価格がいくらか、ということです。 その差額が利益となり事業が成立しています。 50 円原 価のチョコレートを100 円で売り、50 円の利益を得るこ とはイメージしやすいと思いますが、そのこととホテル投資 も変わりありません。買ったホテルをそれよりも高く売るた め、その付加価値づけを事業として手掛けているのがホテ ル投資という仕事となります。 また不動産としてのホテルが面白いのはオフィス、マン ションと違い、ホテルを買うという行為は情緒的でロマン 的であり、“ぼくの、私のホテル ”という人間のエゴが表 にでてきます。ほかにはビジネスモデルの特徴もあります。 ホテルは基本的に宿泊者が１日単位で借りていきます。こ れはオフィスが数年など比較的長い期間を貸し出すのに比 べ、集客やそのオペレーションなど経営的には難易度が高 くなります。 またホテルは労働集約産業ですので多くのスタッフが必 要となり、その雇用維持の責任を持たなくてはなりません。 オフィスやマンションの賃貸事業と比較して難しいが、だから こそ伸びしろや改善余地という機会を見つけ、ホテルを買い たいという投資家や個人資産家が存在しているのです。 どのビジネスもサイクルがあり、成長期、衰退期を繰り 返します。大局的な状況を見極め、そのサイクルを見据え て投資を実行していきます。「安く買って高く売る」という ことは投資だけではなく、ほかのビジネス同様普遍的な活 動なのです。 さきほどの「エゴ」の話ですが、いまの米国大統領（当時） トランプ氏はニューヨークのプラザホテルを買収したことがあり ました。結果的に不動産投資という観点では失敗したのです が、このアイコンホテルを所有していたことにより多くの報道 がなされ、後のビジネスにつながる良いPRとなりました。 では次に「買うために必要な評価とはなにか」つい てです。 ＜学生の回答＞ のぼり調子になり始めたホテル。 営業成績良くゆるがない安定性。 破産寸座のホテル。 将来性があること。ホテルの過去の利益変動。 環境、インバウンド 口コミ評価が高い 価値をどう考えるかについてはいくつか手法があります。ホ テルであれば土地・建物といった不動産自体の価額、または そのホテルからどのくらいの収益が生まれるか、それを基にす る方法、会社であればその会社が持っている資産内容の評 価、事業内容の評価によって算定することができます。 ホテルからの収益を基に価値を計算する場合、その業態、 フルサービスなのか、ビジネスなのか、それぞれの施設のス ペック、サービスやアメニティの内容など、要素分解をして いきます。つまり収益を伸ばすためにすべきこと、それに見 合った投資をどの程度すべきかなど、それら細かく分析して いくことで価値算定ができます。みなさんがホテルの運営会 社で働くにしても、そういった考え方を知ると接遇以外の可 能性・興味にも気づかれると思います。 最後にこれからホテル業界を目指している皆様に。ホテ ルにはホテルの中で行なうビジネス、外で行なうビジネスが あり、外は皆さんが考えている以上にいろいろあります。そ してこれからはエンジニアリングの発想を生かしてIT やシス テムの活用も必要となってくると思います。ホテルに関われ る産業は一般的にイメージする接遇以外にもあることを知っ ていただければと思います。 （一社）Intellectual Innovations 代表理事 / 立教大学 特任研究員 / 京 都大学 経営管理大学院 非常勤講師 Tourism Academy, SOMEWHERE 共同代表 池尾 健氏 Intellectual Innovations https://intellectualinnovations.or.jp/ Tourism Academy, SOMEWHERE https:// www.tourismacademy-somewhere.com/
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