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30 リアルとのバランスをとり、ハイブリッドで持続的な 新しい観光価値の創造を 2020 年世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、SARS やリーマンショックの比ではない状況に 直面した。コロナ禍前まで順調に推移していた訪日外国人数も国が目標とする 6000 万人の約半分、3188 万人でピ タリと止まった。この影響で JAL ループは第一四半期で 937 億円の赤字を記録するなど、観光業界は大きな痛手を 被った。数年後には回復するという予測はあるものの、今、観光業界は未来を生きるための岐路に立たされている。イ ンバウンドツーリズムを基軸としていた㈱やまとごころ 村山慶輔社長にこれからの観光の現状、未来、そしてキーワー ドを講義していただいた。 ~日本の観光業発展に欠かせない「観光CRM」~ 【日本工学院ホテルコース特別講義】2020年11月12日 これからの観光を考える GoToトラベルによる二極化 まず始めに「やまとごころ」は何をしている会社なのか、 お話します。弊社は「インバウンドツーリズムを通じて、 日本を元気にする」ことをミッションに掲げ、2007 年に 創業しました。地域共創や情報サービス、ビジネスサポー トやコンサルティング事業など、ある意味、インバウンド の専門家として、これまでの知見やネットワークを生かし たサービスを提供しています。 ところが、皆さんもご存じの通り、2020 年早々に感 染が広がった新型コロナウイルスにより、それまでは国 が目標と定めていた年間 4000 万人の訪日外国人数も 3188 万人に止まり、今もなお、なかなか回復の兆しが 見えない状況にあります。しかし、国は年間 6000 万人 という目標を見直すことなく、これから先も観光事業の推 進を図っています。訪日外国人観光客とは観光だけでは なくビジネスを目的とした数値も含みます。 ようやくアジアやハワイなど国際線などが動き出し始め ましたが、効果的なワクチンの開発が見えない中、イン バウンドの数値が戻って来るには時間を要します。そこで 国は観光政策の一環として、国内観光の需要喚起を目 的に「Go Toトラ ルキャンペーン」を6月より実施し ました。宿泊統計によるとコロナの影響を受け、2020 年 2月~ 3月は減少しましたが、国策効果で6月から 少しずつ戻してきました。 Go To 効果で動き始めた国内観光ですが「地域」と 「施設」 ブルの二極化現象が起きていました。海外 渡航ができなくなりましたので、国内の観光地を視察に 回る中、実際に目で見てこの現象に気づいたのです。 地域においてはコロナ禍前にはインバウンド客で賑わっ ていた飛騨・高山や京都は閑散としていました。一方、 都心から東北道を利用して約 2 時間の距離にある那須 高原は賑わっていました。道路もマイカーで渋滞するほど です。つまり典型的な観光地よりも自然に恵まれ温泉が あり、そして電車などの交通機関を利用せずマイカーで 移動できるエリアが注目されたのです。 施設をみると単価が高いところほど人気が集中してい ました。高級なホテルや旅館の宿泊予約サイトを運営し ている「一休」では対前年で大きく実績を伸ばしたよう です。私の知り合いの高級宿泊施設ではコロナ禍で過 去最高の売上を記録しています。一方、同じエリアにあ るシティホテルでは前年対比で7 割戻る程度で単月黒 字にも満たない状況です。このように高額な宿泊施設 は潤い、そうではない宿泊施設はGo Toトラ ルの恩 恵を受けにくいという現象が起きたのです。 近県で夏はファミリー、そして秋にはシニアも参画する ようになりましたが、「エリア」そして「施設」により二 極化してしまった状況を見る限り、今後、国内旅行の需 要喚起を強化するためにはGo To の仕組みそのものを 変えていく必要があることを痛感した次第です。

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