JARCLIVE9

JARC LIVE 27 TAP AWARDS り、ホテル・旅館共に非日常空間の創出は十八番ではな いか。企業などで開かれる講演会で使われる大会場では なく、旅館の縁側や庭など通常では使いえないような環境 の中で人が集まることができる。その土地由来の食べ物 や飲み物も一緒に楽しんでもらうことも非日常の創造に役 立つであろう。 また、日本の観光業の最大の特徴でもある客に気遣い や心配りをする世界でも誇ることのできるおもてなしの精神 は、FC 参加者全員に期待以上の満足感や積極的な関 与を感じさせることに貢献するはずである。議論の場にお いて誰も孤立しておらず積極的な議論展開をする場を構 築することが FC 成立の必要条件である。 ②都市部と地方を結 付ける役割 地方の知識を外に放出することで新たな価値の創造に つながることは以前から指摘されていた。中川は林業経 営において都市部の新規就労者への知識の伝達によっ て様々な主体と林業者を繋ぐ架け橋としての意義を論じて いる。⑹また、宮口は実際に「異なる」ものの交流から 新しい価値が生まれることを指摘している。⑺つまり多様 な主体がかかわることによって創造が起こることを理解す ることができる。近年の政府による地方創生における取 組において、多様な主体による地方の活性化を推進する 動きを見て取ることができる。平成 30 年から総務省では 「定住人口」でもなく、「交流人口」でもない、特定の 地域や地域の人々と多様に継続的に関わる者である「関 係人口」に着目した施策に取り組んでいる。関係人口と 地方のかかわり方の一つとして考えられているのが、スキ ルや知見を有する都市部の人材等が、地域課題に関す る講座を受講し、地域において地方公共団体と協働して 実践活動等に取り組むことなどにより、都市部で暮らしな がら、地域課題の解決等に継続的に関わることである。 ⑻しかし、大江などは関係人口として期待される人たちは、 ボランティア活動、頻繁な訪問などへの参加意欲が高い 傾向にあるが、これは、「無関心・無関与」「交流人口」 から「関係人口」へのステップアップが大きな壁となって おり実行に移せないという実態があると明らかにした。そ の上で、地域で何のために何をしているのかという具体的 な情報や関わりの場の提供することが有効であると考えて いる。⑼総務省では、国民が関係人口として地域と継続 的なつながりを持つ機会を提供する地方公共団体を支援 することを目的とする「「関係人口」創出事業」を行って いる。⑽ 福島県矢祭村では既存の事業を東京圏在住者 と共同で行うことで、新しい事業展開を始めた。町の関 係者との複数回のグループワークを通して、他の地方自 治体の農都交流の差別化を図っている。⑾ 東京圏在住 者のバックグラウンドも多様であり、コンサルタント、印刷、 観光、建設、卸売、食品製造、広告、IT、フリーラン スなどであった。⑾今後は、事業の発展と同時に、関係 人口や農都交流人口の拡大を目指している。地方の人 口減少、少子化に伴う生産人口の減少により、突発的 に地方創生に貢献するアイデアが多数生まれる可能性は 低いだろう。政府の現状の方針でも、多様な技術や知識 を持つ人が地方の協力することで新たな魅力を創出しよう としていることが見て取れる。ホテル・旅館にはいうまでも なく全国から多くの観光客が集まる。彼ら・彼女らのよう な多様なバックグラウンドを持つ観光客を「共創」の場に 引っ張り出してくることができれば、FCにおいての新たな 価値を生み出せるのではないか。 (3)どのようなメリットがあるか メリットを地方創生とホテル・旅館の二点から考えたい。 ①地方創生のメリット 従来の地方創生と本提案の大きく異なる点について言 及する。矢祭町のプロジェクトは既存の自治体独自のイ ントを前提に少人数(10 数人)向けのものであった。も ちろん、FCでもある程度の議題の範囲を絞らないと論点 を明確にすることができず不毛の会話になってしまう。例 えば、高齢化問題、農業問題などといったより広義なテー マ設定は重要になる。しかし、FCが目指すべき理想は 課題が参加者の対話の中で顕在化することであり、詳細 なテーマを設けることや人数制限はしない。また、地域の 活性化には従来行われてきた関係人口創出のための施 策も、すでに地方での労働内容が決まっており、募集要 項を基に応募や声がかかるという形式であったので、そこ が本提案と従来の地方創生とは異なる点である。FCに よって生まれた取り組みは広い分野にわたってプロジェクト を創出し、地域の活性化につながることが考えられる。 FCでの新たなつながりは、農家の新しい取り組みを推 進するものと考えられる、その一例として、6 次産業化が 挙げられる。6 次産業化とは農業や漁業などの一次産業 を担う人たちが加工(二次産業)、流通や販売(三次産 業)にも取り組み、新たな産業を創出することである、グ ローバル化に伴う農作物の価格低迷は国内農業に大き な影響を与えた。六次産業化による農家主体で新たな付 加価値の創出は農村の活性化に必要と考えられている。 しかし、農家の 6 次産業化における更なる飛躍には課題 もあることが分かっている。日本政策金融公庫のアンケー トによれば、農業者が 6 次産業化するにあたって不足し ている人材又はノウハウは、第一に「営業・販路開拓」、 第二に「加工」、第三に「組織の管理運営」であると 回答している。⑿農業者は、農業に関する生産技術や 知識は豊富にあるが、6 次産業化するにあたって重要な 営業(第三次産業)や加工(第二次産業)のノウハウ は十分でないと考えられる。一方で、都会からの訪問者 の多くは農業に関する知識はないものの三大都市圏(一 都三県、大阪、愛知)で第二次産業や第三次産業に 従事している人が多いため、FCを通して彼らをつなげるこ とは、6 次産業化の流れを促進するものではないか。近 年では、副業や兼業の理解が進み、副業を希望する人 も増加している。首都圏管理職の 45%は週1~2日の地 方企業で行う業務に興味があると答えている。⒀ また、 副業や兼業を望む人の半数近くは新しいことに挑戦したい

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