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26 方が関心を持っていることなどが判明している。 (2) 若者の地方暮らしへの関心が高いにも関わらずなか なか実現しかねているのにはいくつか原因がある。男女 共通で「仕事がないこと」等が原因である。(2) つまり、 仕事の創出は地方創生の喫緊の課題であり、その柱に 選ばれたのが「観光」であった。実際、官民挙げてのイ ンバウンド呼び込み施策や、円安や LCC の普及などに よって2011 年以降 2019 年までは訪日外国人旅行者 数は増加し、2018 年には3000 万人を超えた。しかし、 2020 年初頭にCovid-19が世界中で蔓延し入国管理 の厳格化などにより4月、5月の入国者は数千人程度で あった。また、緊急事態宣言や自治体独自の来訪を控え る要請などで国内旅行者数は低迷したままである。宿泊 施設の稼働率は大幅に減少し、2020 年 4月の稼働率 は前年比 83.5% 減であった。2020 年夏には国土交通 省の観光庁が旅行代金の最大 50%負担する「Go To トラ ルキャンペーン」が始まり、場所によっては去年並 みとはいかないが稼働率が上昇したホテル・旅館も多い と聞くが、インバウンドが見込めない中でコロナ前にもどる までには数年はかかるだろうと考える専門家もいる。まさ に観光業界は暗雲低迷している。同様に地方創生の柱 である観光の低迷は地方創生に大きな影響を与える。再 度、今後数年の地方創生の新しい枠組みを考え直すこと は喫緊の課題であると考える。 ホテル・旅館の新しい役割 旅館業の役割とは一般的に考えれば、安心・安全で 快適な施設・サービスの提供である。普段の生活とは異 なる非日常空間で、景色がきれいな大浴場やその土地の 郷土料理、マッサージなどのサービスを受けることこそホテ ル・旅館の醍醐味である。しかし、旅館業の担う役割は それだけなのだろうか。私は旅館業は「地域の共創の場」 でもあると定義したい。「共創」とは、多様な立場の人た ちと対話しながら、新しい価値を「共」に「創」り上げ ていくことである。具体的に、ホテル・旅館の中にフュー チャーセンター(以下 FC)設置し、そこで様々なバックグ ラウンドを持つ訪問者と地元の住人の対話を生むセッショ ンを開き、地元の課題を解決し新たなアイデア、ビジネス、 人のつながりを創出する。これが地域の魅力創出へとつ ながり、ホテル・旅館の繁栄につながるのではないか。 本稿では、ホテル・旅館の FCを中心とした地域の活 性化を図る新しいビジネス・地方創生モデルを提案したい。 概要 (1)FCとは? そもそも、FCとはなんであろうか。一概に、これと決め ることはできないが「様々なバックグラウンドを持つ人が集 まり」「未来思考で対話し」「未来の知的資本を生み出 す場」であると考えることができる。⑶知的資本とは人材、 技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に 見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるもの である。⑷つまり、FCとは人と人のつながり、新しいア イデア、人の成長を創出する場であると考えることができ る。もともと、FCは北欧の知的資本経営の中から生ま れたものである。北欧の企業は世界のグローバル展開す る大企業のような資源や資本を保持していないため、新し いものを生み出すことのできる人を前面に押し出すことで 海外からの投資を集めようとした。長期的な繁栄のために は、社員全員が未来志向で長期的な視点を持つ必要が あり、それを実現するためにFCが設けられたのである。 欧州では公共セクターを中心に FCが設置されている が、日本では企業が中心となって取り入れている場合が 多い。これは日本の企業の縦割り社会の改善の一つとし て行われている。企業が大きくなると部門間でのコミュニ ケーションが不足する傾向がある。部門で解決できない 問題をFCに持ち込んで、様々な部署の人や外部の人を 交えて話し合うことで、今まで考えもつかない独創的な方 法を見つけることができれば新たな付加価値を見つけるこ とができる。企業が積極的にFCを置く理由はここにある のだ。 (2) なぜ、フュチャーセンターなのか? まず、なぜホテル・旅館主体の FC の設置を提案するの か二つの点から考えていきたい。 ①ホテル・旅館の魅力とFC の親和性の高さ ②都市部と地方を結 付ける役割 ①ホテル・旅館の魅力とFC の親和性の高さ FCと旅館・ホテルの親和性は高いと考える。その理由 は主に2 つある。 『1』旅館・ホテルには多様な人が集まる点 『2』FC に必要な要素が旅館・ホテルに存在する点 『1』旅館・ホテルには多様な人が集まるについてだが、 言うまでもなくホテルには様々なバックグラウンドを持つ人 が集まる。FCには、プログラマーや経営者、営業、機 械エンジニア、バイオサイエンティスト、飲食、アパレル など様々な職種で働く人が集まる場である。コロナ下で政 府が仕事と休暇を組み合わせた新しいライフスタイルであ るワーケーションを推進している。仕事の一環として、FC への参加が認められれば多様な人材を集めるのにはプラ スに働くだろう。また、ワーケーションは仕事と休暇を融合 させたものであり、休暇だけを楽しみに来訪した観光客に 比べてFC への参加への心理的ハードルは低いのではな いか。 『2』FCに必要な要素が旅館・ホテルに存在するについ てだが、よりよい FCを築き上げるうえで重要な点に「非 日常の演出」と「おもてなし」の二点を上げることができる。 非日常の演出とは普段、働いている環境とは全く異なる 環境を用意することである。これは、日常の業務の延長 線上の考え方をすることを防ぎ、より自由な思考を促進す るためである。海外の FCでは宇宙船を模した部屋だった り、オープンでありながら隔離された空中空間⑸など奇想 天外な部屋であったりする。旅は非日常を楽しむものであ

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