JARCLIVE7

JARC LIVE 7 鈴木 今後ますますホテルや旅館がライフスタイルの一 部として活用されるようになるでしょう。客室を活用したリ モートワークやテレワーク化における職場環境の改善な どにも、安心安全対策はもちろんのこと、快適に過ごせ る設備や環境が必要となります。また健康を意識した取 り組みも不可欠です。アメリカのサンディエゴには自然の 中で育った野菜を採取したり、座禅を組んだりして1週 間で 100 万円の宿泊施設を運営しているところがありま す。血糖値を下げる効果が抜群と話題を呼び、血糖値 を下げてはまた日常生活で上がり、また訪れて血糖値を 下げるなど、こんな感じでリピーターが多くいます。非接 触とはテーマが異なりますが、リピーターを誘導する仕掛 けも考えていかなければなりません。また将来的には車 が客室フロアまで入ることができ、車のキーがドアキーカー ドになる時代も近いと思います。まさに林会長のおっしゃ る通り、テクノロジーと精神の融合を建築や設計、デザ インにいかに投下することができるかが課題ですね。 林 日本人のあいまいとした感覚、わびさびなど、日本 人ならではの感覚や連綿と受け継がれている精神を感じ させるようなテクノロジーを開発し、それを文化とするよう な、新たな観光資源が生まれるかもしれません。非接触、 つまり“マイホテル・マイオペレーション”の構想、創造 をテクノロジーとエンジニアリングの発想で作り上げてい きたいと思います。 するなど、水際で未然に防ぐ対策が行なわれています。 しかし、大切なことは規定の体温を超えた来館者に対し て、ほかのお客さまとすれ違うことなく、またスタッフの安 全も担保しながら、最短の距離でいったん隔離できる設 備も必要となります。加えて医療機関との連携も含めた システムも求められます。特に病院施設の少ない地域は より一層、医療機関との連携システムを構築することが ホテルや旅館の信用性、ブランド力を高めることになりま す。またホテルや旅館に求めるリラックスした時間を提供 するためにも、景観の良い場所にバスやスパを設置する ことも、これからの宿泊施設や観光施設として求められ ます。そのためにもほかの宿泊客と出会うことがないバ スルームやスパ専用のエレベーターの設置や予約制の システム化、もし何かがおきたときに感知し、ホテルスタッ フに知らせるシステムの配置も不可欠です。ホテルは使 用目的に応じて管轄する省庁が異なりますので、簡単に できることではありませんが、今後の観光振興のために は表には見えないさまざまなシステムをミックスさせていく ための研究もしなければなりませんね。 林 テクノロジーだけでは宿泊産業に求められているこ との 100%カバーできません。それは安らぎが必要だか らです。コロナ感染症による自粛体制の中、会いたい 人に会えない、行きたいところへ行けないなど窮屈な生 活を強いられてきました。まだまだ思いっきり解放された 感覚にはなりきれませんが、窮屈の解放から生まれる新 たな文化が生まれるはずだと思います。例えば会えない 祖父母や親、そして子どもの 3 世代がテクノロジーを使っ て違う場所に居ながらも同時に顔を合わせることができま す。画像を通して旅行を同時に楽しむこともできるでしょ う。またそのときの気分でホテルの客室をバーチャル空 間に変えリラックスするために過ごすなど、テクノロジー と精神を融合させた時代になるのかもしれません。堅苦 しい部屋ではなく自由な発想で新たなアイデアをわかす、 そんな妄想ができる部屋、また妄想するための目には見 えないテクノロジーが自然体の中にある、そんな空間が 求められるかもしれません。私自身にとっては心地よい 部屋は緑と風、そして水の音を体感できるところですね。 ―最後にひと言、これからのホテルや旅館、観光産 業の姿についてお聞かせください。 s p e c i a l i n t e r v i e w 公益社団法人国際観光施設協会 鈴木裕会長

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