JARCLIVE7

JARC LIVE 41 日本の 10 歳人口は約 108 万人、70 歳人口は約 208 万人であり、将来を担う若者が圧倒的に少ない状 況です。少子高齢化の日本では、外国人雇用をしなけ れば経営が成り立ちません。加えて20 年前と比べた GDP の伸び率をみても、日本は世界最低水準です。日 本人だけで日本経済を上向きにすることは難しい状況で す。 ―外国人を雇用するにはビザの知識が必須ですよ ね。特定技能というビザの名前をよく耳にしますが、 どのようなものなんでしょうか。 2019 年の春にできた新しいビザで、従事できる業務 内容も制限が少なく、これからの外国人労働者の大半 を担うと考えています。ですが、このビザを取得して日本 で就労している外国人はあまりにも少ないのが現状です。 背景として、ビザ申請の手続きの煩雑さや未確定さ、日 本政府と海外政府間の協定や試験の進捗遅延などがあ ります。今すぐ特定技能を雇用するというのは非常に厳 しいのが実情です。就労させたい業務内容にもよります が、単純作業を伴う業務を行ってほしい場合は、技能 実習生というビザが適していると思います。 ―技能実習生は今後の宿泊業を担っていく要ですね。 ですが、報道等でトラブルやマイナス要素をよく耳に するため、外国人を雇用することに潜在的な抵抗が ある宿泊施設が多いのも事実です。 日本で働きたいと考えている技能実習生は多くいます。 ところが日本で働くためには多額な費用がかかります。日 本で働くことができたとしても来日前に多額な借金をして いる技能実習生が大半です。 技能実習生を受け入れる方法として日本政府の認可 を受けている監理団体と現地政府の認可を受けている送 り出し機関を経由する方法が一般的です。技能実習生 らは日本企業から内定を受けて就業するまでに送り出し 機関にて日本語や業務内容の訓練(トレーニング)を約 半年間行ないます。送り出し機関の売上の大半はこの 訓練費となります。この期間の寮費などを含む訓練費は 日本円で平均 30-45 万円であり、この金額は東南アジ ア諸国の年収とほぼ同額です。そのため、多くの技能 実習生は親族名義で借金を背負って入国します。 一方、送り出し機関は売上のために、日本の受入企 業と繋がりを持つ監理団体への接待や賄賂等の活動に 力を注ぎます。実は、それらの過剰な接待費用や賄賂 の負担は全て技能実習生が背負っており、訓練費の借 金額に上乗せされているんですね。技能実習生を受入 れたい宿泊施設様は知らず知らずのうちに多額の借金を 抱えている技能実習生を採用してしまう可能性があるんで す。 ―時には失踪などのトラブルも発生すると耳にしま す。 技能実習生の中にはどんどん闇の世界に引きずり込ま れてしまうケースがあります。技能実習生は毎月の手取り 月収 12 ~ 13 万円うち10 万円近くを現地の家族に送 金するため、真面目に仕事をしています。ところが劣悪 な労働環境で就労させられたり、所属していた送り出し 機関から月々の給与では支払えないほどの多額の借金を 背負わされた実習生は、悪質なブローカーの声にだまさ れ失踪してしまうのです。これらがよく耳にする技能実習 生業界のブラックな面のカラクリになります。 ―覚悟をして日本へ来たのに、残念です。単なる労 働者としてではなく、キャリアップできる仕組みを受 け入れ側で構築する必要がありますね。 まずは外国人労働者の実情を理解してほしいですね。 多額な借金を抱えてまで覚悟を決めて日本で働くという意 志を尊重し、新たな労働力として認めてほしいと思います。 これに伴い、1 年以内の就労ができるインターンシップ(特 定活動 9 号という在留資格)の活用はオススメです。 “この子はうちの企業に向いている”と判断した人材にオ ファーを出し、技能実習生として在留資格で3 ~ 5 年 間雇用し、その後さらに特定技能の認可を得て、最終 的には社員採用するという長期的なキャリアプランを描く ことがお互いにとって良い流れだと考えます。ただし、イ ンターンシップ生として日本へ来るのは外国の大学の学 生であり、母集団が少なく欲しい人数を確実に確保でき ない点には注意が必要です。様々なビザの良し悪しを見 極め、宿泊施設様のニーズに沿ったキャリアをアレンジし ていくべきです。 ―しかし、日本のホテルの場合、採用と現場が乖離 していますので、人材に寄り添う人事体制の気弱さ があります。 宿泊業はどうしてもサービスという表舞台がありますの で、人事部への評価は低いのかもしれません。しかし、 今後、宿泊業が必要な優秀な人材を採用するためには 優れた人事機能が要となります。私自身、大手企業で 人事部長や採用責任者を経験していますので、人事部 の必要性、価値を十分に理解しているつもりです。今 後においては外国人労働者の紹介とともに、外国人労 働者を正しく受け入れるための人事の在り方、キャリアッ プさせる仕組み作りなども含めて、人事コンサルティング にも着手し、企業理念に掲げている関係者全員の幸福 を追求することを目指していきたいと思います。

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