JARCLIVE7

JARC LIVE 23 すので、まだ先が見えない状況ですが、衛生管理や標識・ サイン(ピクトグラム)、通信決済等のインフラ回りの整備 など、日本人にもインバウンドにもつながるような施策を中 心に進めていくことが無駄もなく、大切だと考えています。 ―当面、日本人を対象とした旅行の形態やサービス を提供していくことになりますが、日本人はどのよう な旅行を求めているのですか。 トリップアドバイザーの調査によると、半数以上が「温 泉旅行」や「のんびり過ごす旅行」を求めています。 緊急事態宣言以来、まだ自粛ムードが継続していること から、ストレス解消を目的としたゆっくり過ごせるような旅 行を求めているようです。旅行そのものに対する意識を日 本、オーストラリア、シンガポール、イギリス、アメリカの 6カ国で調査した結果、アメリカの 71%をトップに各国と も60%を超える人が旅行は自分にとって重要なものであ ると考えています。また旅行先や宿泊先を決める上で今 後重要になることは? という問いに対して意外な結果と なりました。 ―意外な結果とはどのようなことですか。 旅行先については「夜間外出自粛、ソーシャルディス タンス、マスク着用などの政府の規制がきちんと行なわれ ていること」に対して日本は38%でしたが、他の5国は 44 ~ 48%でした。また「最新設備のある病院へ安全 かつ容易にアクセスできること」は日本 21%に対して他 国は27 ~ 44%を占めています。宿泊施設を決める上 で重要なことに関する調査では「客室および施設内共 有エリアの定期的な消毒」については日本 60%に対し てシンガポール 66%、アメリカ67%、イタリア 72%をマー クしています。「客室清掃手順を明確に文書化し、宿泊 客に通知」「必要に応じて宿泊客に個人用保護具を提 供」「セルフチェックイン・チェックアウトシステム」「スタッ フ個人用保護用具着用」について日本は30%台の割 合に対して、セルフチェックイン・アウトの項目以外は5 カ国ともに日本の数値を上回っています。これまでは日本 人がもっとも潔癖症で細かいイメージがありましたが、意 外と他国の方が消毒やスタッフ、そして宿泊者に対する 安全な対応を求めていることが分かります。もちろん、こ の結果は新型コロナウィルスの影響の度合いにより異な るのかもしれませんが、まずは安心・安全に対する取り組 みと世界の人が理解できる多言語化や動画などの可視 化や、分かりやすいピクトグラムの制作など、今、取り組 むべきことだと思います。 ―確かに安心・安全の取り組みを具体的に見せるこ とは求められます。お客さまの目に触れるところ以外 のバックヤードに対する取り組みを可視化することも 必要です。 客室清掃手順を明確に文書化することはアメリカが最 も高く47%に達しています。また今後は仮に前年対比 の売り上げ 70 ~ 80%になったとして、事業が継続でき るようコスト削減しながら筋肉質な状況を構築していく必 要があります。同時に新しいビジネスチャンス、第2波、 第3波が来ても伸ばせる事業へのチャレンジも大切です。 例えばもうすでに取り組んでいるホテルもありますが、ス ペースシェアリングを生かした客室の時間貸しなど、空い ている時間・空間を求めている人に提供することにより 新しい売り上げを得ることができます。また政府は令和 2 年度補正予算(案)として国立・国定公園、温泉地で のワーケーションの推進に 6 億円の予算を見立てていま す。 ―具体的にはどのようなことですか。 ワーケーションはワークとバケーションを組み合わせた造 語です。観光地やリゾート地で休暇を取りながらテレワー クをする新たな働き方です。感染リスクの低いキャンプ場 などの環境整備・ワーケーションを実施することで子ども も楽しめるプログラムを展開することができます。またコロ ナ収束後には旅館などでのワーケーションの実施も可能 です。仕事と温泉、自然、食事など心身ともにリラック スできる場所はクリエイティブ性も高めることができ、新た な発想やアイデアにより新しい何かを生み出せるチャンス を与えます。子どもたちにアクティビティの提供をともなう ことで、社会の閉鎖感の解消とともに旅行者の増加、そ して地域経済の再生、活性化につなげることも可能とな ります。また今後はテレワーク化にともない一極集中して いた週末型も休暇が平日に分散されれば、平日の売り上 げを上げるためのニュープランの企画も可能です。さらに ぜひ、食の開発にも注力してほしいと思います。というの は自粛が続いた中、コロナ太りの方が増え、健康に対す る意識が高まっています。今後、ベジタリアン(日本 4%、 世界的に6%比率)やビーガンなど、日本人の食に対す る思考の変化も考えられます。現在、約 280 万人の外 国人が在日していますので、まずは在日外国人を対象に 多様な食文化や食のこだわりに向けた開発をすることで、 将来的に日本人や訪日する外国人にも対応できる食の 土壌を築くことができます。 ―おっしゃるように、今やるべきことは多種多様にあ りますね。 そのほかお土産の通販やフロントやドアマンなどへの Web 研修、温泉地の泊食分離への取り組みなど、今後、 訪日外客の推移は段階を踏みながらですが、時間的に 余裕がある今を生かし、日本人や在日外国人を対象に次 へのステップに向けた準備、整備を徹底して行なうことが、 最終的には訪日外客にも対応できるものにつながるのだ と思います。

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz