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JARC LIVE 21 基本的には食中毒を引き起こす、寄生虫、細菌、ウ イルスは胃腸内で悪影響を及ぼすのに対して、コロナウ イルスは鼻咽頭、気管支、肺等の呼吸系臓器で増殖し ていくため、実際に喫食しても胃腸では増殖せずに胃酸 で死滅するであろうと言われています(正確なデータはあ りません)。おっしゃる通り気になるデータとして、中国か らの報告として糞便からコロナウイルスが検出されている というデータがありますが、呼吸器感染症のウイルスが なぜ糞便から検出されるのかという点に関しては、初期 の症状では糞便からは検出されませんが、肺炎などの重 篤な症状にまで進んだ際には全身にウイルスが広がり糞 便として検出される可能性があるかもしれません。それら を含めて今後の重要な研究課題だと思っています。 ―ところでコロナウイルスとノロウイルスは異なるも のなのですか。 コロナウイルスと一番よく比較されるのがノロウイルスで すが、ウイルス学的にはかなり異なります。一番の大き な違いは、コロナウイルスは二重の膜を持っており、そ の一番外側をエンベロープと言うリン脂質などで構成され た外膜を持つのに対して、ノロウイルスはエンベロープを 持っていません。ウイルスはこのエンベロープの有無によ り感染予防対策が異なります。インフルエンザ、コロナ ウイルスなどのエンベーロープウイルスは比較的有効な 消毒薬が多く、アルコールや塩素系消毒剤、石鹸・洗剤・ 塩化ベンザルコニウムなどの界面活性剤が有効なのに 対して、ノロウイルスやロタウイルスなどはアルコールが 効きにくく、塩素系消毒剤(次亜塩素水または次亜塩 素水溶液は含まない)やポピヨンヨードなどが有効な消 毒剤になります。総じてノロウイルスに対する対策をして いればコロナウイルスに対しても有効であると言えます。 ―コロナウイルスの危険は何にあると思われますか。 また防止するためには今、どのような対応をすべき でしょうか。 問題はノロウイルスには食中毒と人−人感染の2通りの 感染様式があり、さらに人−人感染の種類には接触感 染・飛沫感染・粉塵感染(エアルゾル感染)の3種類 の感染様式があります。人−人感染の様式に関しては コロナウイルスとまったく同様であると言う点です。しかし ノロウイルスの場合、感染源は糞便と嘔吐物のみのた め、例えば口腔内にウイルスがある場合のみ飛沫感染 の恐れがありますが、それはノロウイルスを含んだ嘔吐物 が口に残存していた場合に限定され、粉塵感染に関し ても嘔吐物と糞便が乾燥しない状況を作れば感染は防ぐ ことが可能です。つまりノロウイルスに対する人−人感 染には接触感染をいかに防ぐのかが最も重要になってく るのに対し、コロナウイルスは感染すると唾液にコロナウ イルスが存在するため、接触感染、飛沫感染、粉塵感 染(エアルゾル感染)など感染者からは感染から数日は 常に唾液からウイルスがいろいろな箇所に伝播されると言 う点が最も厄介な点であることはまりがいありません。そう した点からも3密を避けると同時にマスク着用、こまめな 手洗い、消毒が非常に重要であり、特に調理従事者に 関して言えばフェイスガードなども非常に有効な手段であ ると考えられます。 現在(6月末)日本における抗体保有率は未だ1%未 満であり、日本国民の 99%は感染していないと考えられ ます。ワクチンなどが開発・接種されない限り、必ず晩 秋から冬にかけては第2波、第3波が来ることは想定され るので、皆様方にはそれらに対して十分な備えをしていた だきたいと思います。 ―実際に、中国・北京では第2波ともいえるクラスター が市場で起きました。都内でもPCR 検査の強化も ありますが、社内クラスターも増えています。今後、 私たちはどのように向き合ったらよろしいのでしょう か。また次亜塩素酸についても疑問視の声があがっ ています。 コロナウイルスの消毒剤に関して現在、次亜塩素酸 水の是非が問われています。今後有効の有無について はいずれ判断が出てくると思いますが、次亜塩素酸水は 厚生労働省が正式に次亜塩素水と認めている電気分 解式の次亜塩素水を指します。この電気分解式の次亜 塩素酸に関しては p Hと使用する材料により3種類に分 類されます。また次亜塩素酸ナトリウムと希塩酸などを混 釈させて生産される混合式の次亜塩素水も存在します。 これらの薬剤に関しては消毒剤として使用され、さらに薄 めて空間除菌と使用しているケースも散見されます。基 本的には現時点において空中噴霧は行なわない方が健 康被害のことを考えると無難な選択と言えます。コロナウ イルスに対する死滅効果も確認されていませんので、消 毒剤としての第一選択にはならないと考えられます。アル コールが用意できない場合、通常の手洗い消毒剤で手 洗いをして水で洗い流す方が確実だと考えられます。次 亜塩素酸水と混同されがちなのが次亜塩素酸ナトリウム (ジアソー)です。前述したように希塩酸と混ぜて次亜 塩素酸水にもなります。次亜塩素酸ナトリウムのみを希 釈したものも広く消毒剤として使用されていますが、混同 しやすいので注意が必要です。これらの消毒剤に関して は慣れるまでに時間が必要なため、不明な際は専門家 などのアドバイスを聞きながら運用していただきたいと思い ます。

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