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32 工学は未だ存在しない状態やモノの実現にあり そもそも工学とは、通常「数学と自然科学を基礎とし、と きには人文社会学科の知見を用いて、公共の安全、健 康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築すること を目的とする学問である」と言われています。つまり、これか らのものを創り上げていく人たちであり、新しい考え方を創り 上げると理解しても良いでしょう。ある現象を目の前にしたと き、理学では「自然界はどうなっているのか」や「なぜその ようになるのか」という、すでに存在している状態の理解を 追究するのに対して、工学では「どうしたら、未だ存在しな い状態やモノを実現できるか」を追究しています。 私なりの解釈としては、工学というのは何か役に立つ物 事を創り出すことが目的で、その手段として数学や技術を はじめとした様々な学問はもちろん、使えるものなら過去の 経験則も用いることだと考えています。工学は理学でもな く野生の勘だけでもなく人文学をも含んだ総合的理解の 集積であると思います。 例えば、いまだに飛行機がどうして飛ぶのかは論理的 に完全には解明されていませんが、昔から飛んでいるから 作っている、そんなこともあります。 では、工学者とは何かと言うと「科学者はあるがままの 世界を研究し、工学者は見たこともない世界を創造する」 と航空工学の父と称されるセオドア・フォン・カルマン氏 が明言しています。工学者になるためには、“ 不可能を 可能にする”“ 新しい価値を創造する”“エンジニアはパイ オニアである”“ 世界を知ろうとするのが科学者なら、世界 を変えようとするのが工学者だ”ということなのです。 工学を学ぶためには“こんなロボットがあるよ”“こんな AIスピーカーがあるよ”と知っているだけで満足してはいけ ません。普段の生活を大切に常に見識と観察力を高め、 様々なことに「気づき」を感じることです。なぜ、鬼滅の 刃のようなアニメが人気なのかなど、おもしろいとか、かわ いいと感じさせる背景には何があるのかなと興味や気づき が必要です。どんなものにも興味、好奇心を持って触れ、 洞察、分析 蓄積を繰り返していくことが大切なのです。 ホテルエンジニアは「グロースハッカー」 そして、ホテルエンジニアとはどのような人材かと言うと、 それは「グロースハッカー」であると考えます。グロース ハッカーとはウェブサービス業界の言葉で、Growth(成 長)とHacke(r 技術的知識を利用して課題を解決する人) をつなげた造語です。製品やサービスなどについて技術 的な知識を用いて費用を掛けずにマーケティング上の課題 を解決し、新たな方法で効率・生産性を上げることでビジ ネスの成長を加速させ、成長を継続させる仕組みを創る 人のことです。 別の言い方をすると、グロースハッカーとはターゲットと マーケットへのマーケティングに熱い情熱を持って、活動 の目標に成長を置き、そのことに責任を持って急成長でき る可能性のある仕組みを考えて、すべての施策を実施す る人のことです。 急成長した世界的なウェブサービスの Facebook、 Twitter、Uber、Airbnbなど数多くの成長を支えたのがグ ロースハッカーでした。 「分析力・検証力」「創造力・計画力」「決断力・行動力・ 忍耐力・チャレンジ精神」そして「顧客ニーズの把握力 と幅広い好奇心・洞察力」のスキルを持ち、PDCAの サイクルを高速フル回転させていくことなのです。 例え失敗してもいいのです。その原因を見出し改善して、 回転させていくことが必要です。そのために不可欠なのは 起点となるマーケティングです。いくら自分ではいいと思っ ても利用者にとって不便さを感じたら、求めていた結果で はありません。 そして、これからの宿泊施設に必要となる「ホテルエン ジニア」とは、「売る力」と「創る力」のセンスを兼ね備 えているスタッフのことです。「売る力」とはマーケティング 国際観光収入と訪問客数(国連世界観光機関) ホテルエンジニアに大切なのは 「気づくセンス」

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