安全で楽しい登山を目指して

このテキストは,平成29年3月27日の那須雪崩事故を踏まえ,スポーツ庁が設置した「高校 生等の冬山・春山登山の事故防止のための有識者会議」の提言を受けて,高等学校登山部等で指導 に携わる教職員の質の向上を目的に編集したものです。 高等学校登山部等の指導者には次の3つの能力が求められます。 1 登山の教育的意義を理解し,目標設定と計画作成,実施の能力(マネジメント能力) 2 生徒等の安全を確保するための能力(危機管理能力) 3 登山についての理解と経験,引率者としての能力(登山引率の実践的な能力) これらの能力を身に付けるためには登山に関する知識の習得と実践的な経験の両方が必要です。 このテキストは登山部等を指導するために必要な基礎的な知識を網羅しているだけでなく,実践で の安全管理能力を高めるための「リスクマネジメントに関する総合演習」等も含んだ内容となって います。このテキストで基礎的な知識を学び,PDCA サイクルに基づいた登山を実践することでリ スクマネジメントのスキルを身に付け,指導者としての資質の向上に努めてください。 また,スポーツ庁から発出されている「冬山登山の事故防止について(通知)」では原則として 高校生等の冬山登山は禁止とされていますが,指導者にとって冬山を含め,山の四季の変化を知り, そこに内在するリスクやその対策を学ぶことはとても重要なことです。そのために,このテキスト には冬山のリスク等について第3編第5章「雪崩発生時の危急時対応」,第 10 章「積雪と雪崩」の 項目が含まれています。安全な登山活動を行うために冬山のリスクも知り,指導者としての能力を より高め,生徒を危険から守ってください。 テキストの使い方について ※ このテキストの本篇では,部活動の名称を登山部でなく多くの高校で使われている山岳部を主に 使用しています。

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