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4 <設計・建築分野のウィズ・アフターコロナの動き> 林 ウィズコロナ、アフターコロナへと回復していく中で、 現在のようにマスクをしたり、感染対策の消毒や抗ウイル スなど、人が感染対策を立てていますが、これから先は マスクや消毒をしなくても安全安心な空間で過ごせるホテ ルが求められるのではないかとい考えています。そこで設 計・建築の視点から国際観光施設協会の鈴木会長をお 招きし、座談会を企画いたしました。感染者が入ってくるこ とは仕方のないこととして、クラスターを起こさせないことが 大事なことだと思います。JARC の IT 分野では非接触の ための仕組みを構築するために、ウィズコロナ安全行動基 準プロジェクトを立ち上げ、高橋理事はじめ抗ウイルス対 策などの方法を研究しています。これからは IT や消毒の 分野だけではなく、建築・設計部門も加わりクラスターを発 生させないための宿泊施設構想を立てていかなければなり ません。そこではじめに設計・建築の分野におけるアフター コロナ対策への取り組みをお聞きできればと思います。 鈴木 新型コロナウィルス感染症対策専門家会議の見解 によれば、クラスターが確認された場所での共通事項は換 気の悪い密閉空間や密集、近距離での会話や発声の3 つの条件が同時に重なった場合であると捉えています。こ の見解から考えられる対策は、まず建物内における換気 に着目していくことです。基本的には1時間に2回、1回当 たり5分間、できるだけ風が通り抜けるよう2つの窓を開け れば大丈夫だろうと判断しています。しかし、昨今は機械 に頼りすぎておりスイッチひとつで室内環境をコントロール することに慣れきってしまったように思います。一昔前に建 築設備のことを付帯設備と呼んでいた頃とは打って変わり、 昨今では建築設備の全体工事費における割合が大きく増 大しています。すっかり機械頼りになり、高層ビルの普及と ともに窓の開かないビルを当然のように作り続けるようになっ てしまいました。コロナ下経営が悪化したホテルをシニアレ ジデンスに用途変更しようと思っても窓が開かないことが障 害となって改造費が大きくなって二の足を踏むことになって います。お金を使えない時には知恵を使えばよいのです。 京都の町家は通りと中庭のお温度差を打ち水で作り風を起 こす、土壁を塗って湿度コントロールを行うという知恵を使 い厳しい気候に対応してきました。現代でも冬寒く夏暑い 恵那峡でエネルギーゼロの家を9軒の試作を重ねて、120 平米を6畳用エアコン一台で年中快適に暮らせる住宅を 作った林業家の知恵と努力には頭が上がりません。もう一 度基本に立ち返り、土地固有の外気環境と室温の関係を データで理解し適切な温度と湿度及び換気を行う建築的 解決をした上で、それを補強する最小限の機械設備を投 入する総合的研究が必要だと反省しています。 林 まさに回帰の構想ですね。 鈴木 自然換気のために高層ビルで開閉式の窓を作るこ とは水密性の確保等難しい問題がありますが、コストをか ければできないこともありません。しかし空気とともに入って くる音に対して消音する技術は確立されていません。反 対の周波数をぶつけて相殺するノイズキャンセリングの技 術は、多音域に渡る都市騒音に対しては大変難しく、技 術で解決できないことはないようですがやはり大変なコスト がかかるようです。 林 ところで、設計上、換気に対する基準はあるのですか。 鈴木 厚生労働省より、コロナ対策として必要換気量の エビデンスは十分ではないが、商業施設等でビル管理法 における基準(一人あたり毎事30㎥)に適合していれば 「換気の悪い空間」には当てはまらないという見解が出て います。 高橋 ところが建築年数が経過しているホテルの空調機 は古く、内気・外気 50%で回転させているところもあります。 年代ごとにトレンド基準があるようですが、外気 100%で入 れ替われば良いのですが、内気を回している空調機もあり ます。同じ空気をグルグル回していすことにより、浮遊して いるウイルスが空中に舞うという危険性を秘めています。 林 問題は空気の最後の出口がどこにあるかということで す。コロナ感染が起こりはじめたとき、空気の最終出口に あたる病室でクラスターが起きたというニュースを聞きまし た。ホテルにおいてもどのような流れで空気を外に入排出 していくことができるかが課題です。 高橋 病院の診療室ほどの換気をすることが求められま

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