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JARC LIVE 39 外についての職種は認めていませんが、例えばフロント 業務における清掃業務など、業務おける付随する清掃 業は認められています。しかしながら、宿泊特化型のホ テルは比較的分かりやすいのですが、レストランや宴会な どを持つフルサービス型のホテルは、さまざまな業種が集 まり成り立っていますので、管轄が異なり複雑であり分か りにくいところです。今後もホテルという括りで統一するこ とは難しいことだと思います。実際、宿泊業は国土交通 省、ビルクリーニングは厚生労働省、外食業は農林水 産省が分野所管行政機関として制定されています。 ―フルサービス型のホテルにおいては複数の所轄にま たがりますので、かなり複雑ですね。実際、これまで 宿泊業技能測定検定が国内外で 4 回実施されていま すが、応募者数、合格者数の実態はいかがでしょうか。 4 回の検定で 3758 人が応募し、試験合格者は 1140 人です。海外はミャンマーで実施しました。合格 者はベトナム人が多く占めています。現時点では実際に 就職できたのは合格者の 10 分の1以下にとどまっていま す。20 代を中心に、就職先は北海道から沖縄まで全 国各地で雇用されています。14 業種全体では約 4000 人に特定技能のビザが発行されていますが、その 9 割は 農業従事者として雇用されているのが実状です。それは 農業分野の第 2 号技能実習を修了していることで、特 定技能の資格を取得することができるからです。 ―宿泊分野の特定技能1号の在留資格を取得するた めの要件はいかがですか。 宿泊業においては2 つの試験に合格しなければなりま せん。まず日本語能力は日本語能力試験 N4以上、技 能水準では宿泊業技能測定試験に合格することが義務 づけられています。試験問題はすべて日本語で行います ので、宿泊業界が求めている日本語の語学力について はかなりレベルが高いことを認識いただければと思います。 よく“ ホテル業で通用する日本語ができないのは ”という 不安の声をホテル関係者から聞きますが、2 つの条件を 満たさなければならないハードルを掲げていますので、その ような不安はありません。 ―特定技能合格者の採用方法や採用までの流れや賃 金などはいかがですか。 宿泊業 4 団体が求人情報を発信しています。合格 者は求人情報を検索して希望するホテルに直接アプロー チします。その後は個別に直接面談を行い、採用の有 無を決定していただいた後に、当センターが発行する合 格証明書などの書類を入管に提出後、約 2カ月で特定 技能ビザが発行されるという流れです。面接は直接また は国外や遠方に在住の場合、Webを活用した面接な ど、ITを活用した面談にも取り組んでいただけるとよりス ムーズかと思います。テレワークが浸透する中、ぜひと もWEBを活用した採用活動に取り組んでほしいと思い ます。なお、賃金につきましては「同一労働同一賃金」 です。日本人と同等、または同等以上の賃金を支払わ なければなりません。 ―今後、ますますホテルや旅館など宿泊業界を目指す 日本人の若者の減少が顕著な中、コロナ感染症終息 後はまた人手不足問題に陥る可能性があります。その ためにも日本での就職を希望している外国人の門戸を 広げるために、海外で試験を行う必要性があります。 しかし実際は海外での試験実施は厳しい状況にありま す。それは各国ともそれぞれの経済を支える人材や収入 が必要な中、単に日本に人材を送り込んでも財政を豊か にすることができないからです。いかに自国に金銭をもた らすことができるかが焦点となるからです。 ―それは国との問題となりますので、なかなか難しい 実情ですね。しかしながら、先々の宿泊業における 人手不足を解決するためには外国人労働者の受け入 れは欠かせない要素です。 対策として2020 年 2月に移行対象業種に宿泊職種 が追加され、「外国人技能実習制度 2 号」が施行され、 特定分野において3 年間の実習が可能となりました。ま ずは1年間実習し、1年に達する前に修了試験を実施し ます。その試験に合格することでさらに 2 年間の実習を 可能とするものです。1年に2 年が加算されますので3年 間実習することができるというものです。この制度と特定 技能資格を連動させることで日本在留が 8 年間可能とな ります。その後は有能な人材と認めれば正式に雇用する こともできます。 ―8 年間、日本在留できるようになるのですね。し かし、問題は受け入れるホテルの体制が整備されて いないことです。文化や習慣のちがいを否定したり、 労働力の1つという感覚でいること、外国人に限らず 賃金が低いことなど日本のホテルが選ばれない要素 が露呈しています。 そのためには外国人労働者に対する受け入れ態勢を整 備するほか、外国人労働者も日本人同様にキャリアアッ プできる仕組みを作り上げていくことも必要でしょう。英 語、日本語、母国語などグローバル時代に不可欠な多 様な語学力を持ち合わせ、高い意欲を持っている外国人 スタッフも多いので、これからますます世界が融合し、共 生することが求められる時代の中、特定技能資格制度、 そして外国人技能実習制度 2 号を活用いただき、新た なホテル作りに挑んでほしいと願います。

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