JARCLIVE7

JARC LIVE 29 ウイルス感染症という世界的なパンデミックが起き、 今もなお各国で多くの感染者や残念ながら命を落とさ れた方も世界で50 万人を超えました。今でも感染 者、死亡者数は増え続けています。 日本においても全国的な緊急事態宣言、不要不 急な外出禁止、距離感を保つためのソーシャルディ タンス、三密、テレワークなど、窮屈な生活を強い られウイルスに対する恐怖心やガラリと変わってしまっ た生活環境に対するストレスなど心身ともに疲れてい ます。このような変化においてホテルに求められるこ とは安心・安全への配慮はもちろんのこと、それは “ 非 日常の中の日常を作ること” だと考えます。 非日常の中の日常とは何かと言いますと、一番心 が休まる場所、つまりご自宅にいるかのような空間、 サービスを非日常的な空間の中で提供するということ なのです。 ご自宅で過ごされているときと同じ時間の流れで、 また同じ空間で、同じお食事を提供することにより、 心はリラックスします。ホテル側の都合で時間や提 供するものを仕切るのではなく、お客さま目線で提供 していくことに心地よさを感じていただけるのだと思い ます。 例えばご自宅で毎日バラの花を飾られているのであ れば、客室にバラの花をアレンジしたり、毎日朝 8 時にブルガリアヨーグルトをお召し上がりになっている のであれば、そのお時間に合わせてブルガリアヨーグ ルトをご提供するなど、心休まるご自宅で過ごされて いる日常をホテルという空間で作り上げていくことが、 これからのラグジュアリーホテルなのではと思います。 日常生活を知るためにはお客さまの情報をいかに キャッチできるかです。そのためにはお部屋までご案 内したゲストリレーションが最後までお客さまに寄り添 うことです。とかく客室清掃をハウスキーピングに任 せっきりになりがちですが、そうではなく、次回お越し いただいたときにより一層、心休まる空間でお過ごし いただくためにもお客さまの日常を知るという努力をす べきだと思います。 ザ・カハラ・ホテル&リゾートは会員制ホテルを運 営しているリゾートトラストが運営しているため、会員 制ホテルの顧客管理力を学ぶことも欠かせません。 お客さまの名前をお聞きするのは1回だけ。例えばド アマンがお聞きしたらフロントでは “ 〇〇さま”とお客 さまに対してお名前を聞かずにお声を掛けたり、館内 のレストランをご利用いただいたときにもお名前を聞か ず “ 〇〇さま、ようこそいらっしゃいました ”という具 合に、各部署が連携していくことです。理想的には お名前を一度も聞かずに “ 〇〇さま”と言えるように なるような、お客さまにおどろきを差し込めるようなホ テルでありたいと思います。会員制ホテル側はこれま で培ってきたラグジュアリーを学んでいただき、互い に研鑽できればと思います。 コンシェルジュは常にお客さまに喜ばれることを追求 していかなければなりません。 開業する横浜は都内と異なりロケーション的に厳し いという声もあります。 また都心や京都などの観光地と異なり、外国人観光 客も少ないエリアにありますが、個々のスタッフの情 熱を持って最高のホテルサービスを成し遂げていきま す。 そのためにもお客さまの立場に立って、必ずお客さ まに喜ばせること。HAPPY にするためには必要な 経費は本人の采配に任せます。開業する9 月23 日前日に、280 人の開業スタッフに向けて “ 好きに やって来い!”と言う予定です。権限移譲をしてやり たいことをやる、これがザ・カハラ・ホテル&リゾート のカルチャーとして根付かせていきたいと思います。 権限を委譲することはとても勇気を擁する決断です が、責任を持ってやり抜いていきます。組織としての パフォーマンスを最大化するためには現場に権限を与 え、従業員の自主的・自律的な行動を引き出すこと、 そしてやりきることで底辺の底上げを行なっていくこと です。 ラグジュアリーホテルとして必要なことはお客さまに 提供するものが “サービス”ではなく“ホスピタリティ” でなくてはならないということです。私の考える“ サー ビス” は『いつでも、どこでも、だれでも、だれにで も』が " サービス" であるのなら、 “ ホスピタリティ” は『今、ここで、わたしが、あなただけに』というこ とになります。 これまでの経験を最大限に活かし、ラグジュアリー ホテルがない横浜の地で、新たな1ページを刻んでい きたいと思います。余談ですがイタリアン、日本料理、 鉄板焼きともにお料理は抜群です。特にイタリアンの シェフは食材を捨てないという精神で最高のお料理を 提供しています。シェフ同様に自然に、人に優しい ホテルを目指し、熱意と確固たる姿勢を持って、新 たな時代のラグジュアリー、心休まる、非日常の中 の日常を作り上げていきます。

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