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31 旅館業法は、そのタイトル通り、旅館業を営 む営業者を規制する法律である。ここで、まず 初めに大きな問題として立ちはだかるのが、ど ういった行為を行えば旅館業に該当するのか、 である。旅館業には、ホテル営業、旅館営業、 簡易宿所営業及び下宿営業といった類型がある が、すべてに共通するのは、「宿泊料を受けて、 人を宿泊させる営業」であることだ。ここでい う「宿泊」とは、「寝具を使用して施設を利用 すること」であるとされている。 それでは、知人を家に泊めて謝礼としていく らか受け取った場合はどうなのだろうか。上記 の文言からすると当たりそうにも思える。たと え個人が自分の住む家の一室を提供したとして も、業者ではないということだけで旅館業に該 当しないというわけではない。もっとも、「業」 というには、社会性をもってある程度反復継続 してこれを行う意思を有している必要がある。 知人を自宅に宿泊させることは、あくまで特定 の個人関係に由来しているものであり、社会性 をもって行うものとは言えない。つまり、知人 を泊めて謝礼をもらう行為は、原則として旅館 業に該当しないから、無許可で行っても問題な いということになる。 もっともインターネットなどを通じて、外国 人観光客に、自宅の一室を宿泊場所として提供 し金銭を受け取るような場合、いわゆる「民泊」 となると話は変わってくる。この場合はどう考 えても知人を泊めるような場合とは違って、社 会性をもって反復継続して行うものとなってく るので、仮に無許可で行ったとすれば旅館業法 に抵触することとなる。 また、仮に宿泊させる期間を週末に限定して もこの理屈は変わらない。宿泊料を受け取って 人を宿泊させてしまえば、旅館業に該当するこ とになる。 もし、許可を受けないで旅館業を行ってしま えば、6ヶ月以下の懲役又は3万円以下の罰金に 処するとされているので、よくよくご注意あれ。 旅行法律コラム 1 なにが旅館業にあたるのか 田上 嘉一 田上 嘉一 弁護士。早稲田大学法学部卒、ロンドン大学クィーン・ メアリー校修士課程修了。大手渉外法律事務所にて企 業のM&Aやファイナンスに従事し、ロンドン大学で Law in Computer and Communications の修士号取得。

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