1 NANBU no SATOBITO 2022 vol.2 T A K E F R E E 鳥取県南部町の里人インタビュー ! 子育移て住&
2 20 1 南部町・法勝寺川土手の桜並木 Photo 廣池昌弘 市街地から車を 分程走らせると 、 景色は街並みか ら緑豊かな山間 に。 〝南部町〟とは いうものの 県西部に位置す るこの町は、 自然に囲まれた 人口 万人前後の のどかな町です 。 法勝寺川沿いに 続く桜並木や、 初夏を彩る金田 川の蛍たち。 四季折々の豊か な自然を感じな がら 人々が暮らす、 現代に残る「里 山」。 環境省の生物多 様性保全上重要 な地里山に 選定され、先祖 の代から守りつ づけた農地や 山林では人の営 みとともに さまざまな動植 物たちが生きて います。 この町の人は皆 〝里人〟。 のびのびと暮ら す南部町の 個性豊かな里人 たちを ちょっぴりご紹 介いします。 幅田さん 齋藤さん 髙橋さん 桐原さん 西村さん 益村さん 細田さん 鈴木さん 移住者アンケート 子育て応援制度 里山暮らし 南部町マップ&おすすめスポット おわりに 子育て×里人 自然環境×里人 仕事×里人 大阪府からIターン 広島県からIターン 米子市からIターン 東京都からUターン 米子市からIターン 東京都からIターン 神奈川県から米子市を経てIターン 米子市からIターン 特集 移住&子育 て
3 c o n t e n t s 4 6 7 8 10 12 14 15 11 16 18 20 23 vol.2 市街地から車を 分程走らせると 、 景色は街並みか ら緑豊かな山間 に。 〝南部町〟とは いうものの 県西部に位置す るこの町は、 自然に囲まれた 人口 万人前後の のどかな町です 。 法勝寺川沿いに 続く桜並木や、 初夏を彩る金田 川の蛍たち。 四季折々の豊か な自然を感じな がら 人々が暮らす、 現代に残る「里 山」。 環境省の生物多 様性保全上重要 な地里山に 選定され、先祖 の代から守りつ づけた農地や 山林では人の営 みとともに さまざまな動植 物たちが生きて います。 この町の人は皆 〝里人〟。 のびのびと暮ら す南部町の 個性豊かな里人 たちを ちょっぴりご紹 介いします。 幅田さん 齋藤さん 髙橋さん 桐原さん 西村さん 益村さん 細田さん 鈴木さん 移住者アンケート 子育て応援制度 里山暮らし 南部町マップ&おすすめスポット おわりに 子育て×里人 自然環境×里人 仕事×里人 大阪府からIターン 広島県からIターン 米子市からIターン 東京都からUターン 米子市からIターン 東京都からIターン 神奈川県から米子市を経てIターン 米子市からIターン 特集 移住&子育 て
4 里山をフィールドに 子どもの生きる力を育む 地域おこし協力隊3年目の2020年に結婚 し、翌年、第1子を出産した幅田舞さん。現在 は初めての子育てと向き合いながら『森の保育 サークル うたたね』を運営し、保育士の髙橋 貴恵さんと町内をフィールドに、ゼロ歳~2歳 児の親子を対象とした『おさんぽ会』を定期的 に開催している。 『おさんぽ会』は、幅田さんが地域おこし協力 隊の任務の一つとして2021年に立ち上げた 活動だ。林道や小川の散歩、外遊び、畑の収穫 など、子どもたちは自然とふれあう場で過ごし ながら、自分で楽しいことを見つけ、思いきり 遊ぶ力を発揮する自然の中は危険とも隣り合 わせだが、できるだけその子のペースで過ごせ るよう、安全考えながらも寄り添うことを心 がけている。 「子どもたちが友だちや地域の人と関わること だけでなく、大人にとっても息抜きになったり 育児の相談をしたりと、些細なことを話せる場 を作っていきたいですね」と話す。これまで延 べ 組の親子が参加し、子どもや親同士、おさ んぽ会の開催に協力しく れた地区の人たちな ど、地域交流の輪も広がった。当初は未就学児 が対象だったが、幅田さんと髙橋さんの出産・ 育児により体制が変わり、今は2歳児までに限 定。小さな赤ちゃんとでも楽しめる水遊びやド ングリ拾い、雪あそびなどを企画し、遊んだ後 は自宅を開放して親同士のお茶会を開たりす る。幅田さんと髙橋さんも子連れ参加し、ス タッフとして目を配りながら、ゼロ歳児のわが 子の反応に驚いたり、ときめいたりと発見も多 い。母親になった自分たちも成長させてくる 『おさんぽ会』は、長く続けていきたいと考 え ている。 地域と関わりながら すこやかに成長してほしい 幅田さんは大阪府出身。都会の真ん中で生ま れ育ちながら、子どもの頃から田舎暮らしにあ こがれを抱いていた。大阪市内で幼稚園教諭を していた頃、自然の中で 幼児教育を行う『森 のようちえん』の活動を テレビで知って共感 し、森のようちえん発祥の地、デンマークへ2 年間留学する。現地で鳥取県智頭町の『森のよ うちえん まるたんぼう』の存在を知り、帰国 後の2016年に鳥取へ。園舎を持たず樹齢 300年以上の人工杉を有する森が学び舎とい う、森のよ の研修生として働いた経験 と手応えが、『おさんぽ会』の活動につながっ ている。 南部町生まれの夫、洋 ひろお 生さんの実家から車で 分の集落。大山を望む平屋の古民家で、親子 3人で暮らす幅田さん。 この家は、町内の空 き家をなんぶ里山デザイ ン機構が借上げてリ フォームした後に、入居を希望する人に賃貸で 貸し出す制度を活用した住宅で、快適に暮らし ている。また、子どもから目を離せない時期と あって、おかずを作って届けるなど、 常に気遣っ てくれる洋生さんの両親はじめ、普段から親 しいご近所の人や友人ち、地域の人に見守ら れながら子育てができるありがたみを実感して 「子いどるも。って、親と向き合うだけではなく、自 然のすばらしさや怖さを体感したり、地域と関 わったりして、すこかに育つと思うんで す。 田舎暮し魅力が詰まった南部町で子育てが できて良かったです」娘の彩 さつき 月ちゃんは、この 春から町内の保育園へ。幅田さんの子育と 『森 の保育サークル うたたね』の活動は、新しい 扉を開いたばかりだ。 豊かな自然と人に 見守られながら 子育てができる喜び 幅田 舞さん 家族構成・夫/子1人 大阪府からIターン 子育て×里人
5 森の保育サークル うたたね 未就園児の親子を対象に、町内をフィールド にしたおさんぽ会や外遊びを月 3 回程開催。 (10:00 ~ 12:00 /曜日不定) WEB https://utatane2020mori.wordpress.com MAIL moriasobi08@gmail.com 公式LINEにておさんぽ会の予定や ブログの配信をしています!→ 30 10 絵本を読む幅田さんの楽しい声色に合わせて彩月ちゃんも声を出す。 自然のすばらしさや怖さを体感したり、 地域と関わったりして、すこやかに育つと思うんです 里山をフィールドに 子どもの生きる力を育む 地域おこし協力隊3年目の2020年に結婚 し、翌年、第1子を出産した幅田舞さん。現在 は初めての子育てと向き合いながら『森の保育 サークル うたたね』を運営し、保育士の髙橋 貴恵さんと町内をフィールドに、ゼロ歳~2歳 児の親子を対象とした『おさんぽ会』を定期的 に開催している。 『おさんぽ会』は、幅田さんが地域おこし協力 隊の任務の一つとして2021年に立ち上げた 活動だ。林道や小川の散歩、外遊び、畑の収穫 など、子どもたちは自然とふれあう場で過ごし ながら、自分で楽しいことを見つけ、思いきり 遊ぶ力を発揮する自然の中は危険とも隣り合 わせだが、できるだけその子のペースで過ごせ るよう、安全考えながらも寄り添うことを心 がけている。 「子どもたちが友だちや地域の人と関わること だけでなく、大人にとっても息抜きになったり 育児の相談をしたりと、些細なことを話せる場 を作っていきたいですね」と話す。これまで延 べ 組の親子が参加し、子どもや親同士、おさ んぽ会の開催に協力しく れた地区の人たちな ど、地域交流の輪も広がった。当初は未就学児 が対象だったが、幅田さんと髙橋さんの出産・ 育児により体制が変わり、今は2歳児までに限 定。小さな赤ちゃんとでも楽しめる水遊びやド ングリ拾い、雪あそびなどを企画し、遊んだ後 は自宅を開放して親同士のお茶会を開たりす る。幅田さんと髙橋さんも子連れ参加し、ス タッフとして目を配りながら、ゼロ歳児のわが 子の反応に驚いたり、ときめいたりと発見も多 い。母親になった自分たちも成長させてくる 『おさんぽ会』は、長く続けていきたいと考 え ている。 地域と関わりながら すこやかに成長してほしい 幅田さんは大阪府出身。都会の真ん中で生ま れ育ちながら、子どもの頃から田舎暮らしにあ こがれを抱いていた。大阪市内で幼稚園教諭を していた頃、自然の中で 幼児教育を行う『森 のようちえん』の活動を テレビで知って共感 し、森のようちえん発祥の地、デンマークへ2 年間留学する。現地で鳥取県智頭町の『森のよ うちえん まるたんぼう』の存在を知り、帰国 後の2016年に鳥取へ。園舎を持たず樹齢 300年以上の人工杉を有する森が学び舎とい う、森のよ の研修生として働いた経験 と手応えが、『おさんぽ会』の活動につながっ ている。 南部町生まれの夫、洋 ひろお 生さんの実家から車で 分の集落。大山を望む平屋の古民家で、親子 3人で暮らす幅田さん。 この家は、町内の空 き家をなんぶ里山デザイ ン機構が借上げてリ フォームした後に、入居を希望する人に賃貸で 貸し出す制度を活用した住宅で、快適に暮らし ている。また、子どもから目を離せない時期と あって、おかずを作って届けるなど、 常に気遣っ てくれる洋生さんの両親はじめ、普段から親 しいご近所の人や友人ち、地域の人に見守ら れながら子育てができるありがたみを実感して 「子いどるも。って、親と向き合うだけではなく、自 然のすばらしさや怖さを体感したり、地域と関 わったりして、すこかに育つと思うんで す。 田舎暮し魅力が詰まった南部町で子育てが できて良かったです」娘の彩 さつき 月ちゃんは、この 春から町内の保育園へ。幅田さんの子育と 『森 の保育サークル うたたね』の活動は、新しい 扉を開いたばかりだ。 豊かな自然と人に 見守られながら 子育てができる喜び 幅田舞さん 家族構成・夫/子1人 大阪府からIターン 子育て×里人
6 イタリアンバル ピッコロ 米子市茶町 30 /OPEN 18:00 ~ 25:00 / CLOSE 日曜 TEL 0859-30-4675 /WEB https://facebook.com/ItalianBarPiccolo/ 縁のある町で暮らすことで 家族みんなの笑顔が増えた JR米子駅前で人気のイタリア ンバルを経営 し、その店の料理長も務める齋藤 大輔さん。家 では7歳、5歳、2歳と、3児の 父親の齋藤さ んが南部町に移り住んだのは、2 021年暮れ のことだった。 それまで妻の由美さんと家族5 人で暮らして いたのは、店に近い市街地のアパ ート。間取り はリビング、ダ イニング、キッ チンが一つに なった空間で、他に2つの居室が あった。由美 さんがキッチンに居ても、リビン グで遊ぶ子ど もたちに目が届き、住み心地は良 かった。しか し、子どもたちが大きくなるに連 れ部屋は狭く なり、生活音で周囲の入居者に気 を遣うように なっていた。引っ越しを考え、賃 貸住宅を探し 始めた齋藤さんは、仲の良い店の 常連客の1人 から、南部町内の空き家を活用し た賃貸住宅を、 移住者に貸し出す制度があること を知らされる。 母親の実家が南部町市山にあり、 幼い頃から祖 父母に会いに行った思い出がある 。米子の実家 も南部町近永江団地にあり、 齋藤さんが卒 園した地元の幼稚園に、今は長男 が通っている。 由美さんも、幼稚園のママ友から 「子育てをす る上でおすすめ」と聞かされてい て、島根県伯 太町の実家の家族は移住に大賛成だた。 入居を決めた家は、静かな住宅 地の一角にあ る庭・車庫付きの2階 建住宅で、全7部屋と 、 子ども部屋も充分取れる。引っ越 し前に齋藤さ んは1週間店を休み、家族全員が参加して、キッ チンの内壁と外壁に漆喰を塗った 。白を基調と したキッチンは清々しく、それで いて温かみの 生活環境を最優先に考え タイミング逃さず移住 保育士の髙橋貴恵さんが南部町に根づくきっ かけの一つは、『森の保育サークル うたたね』 が開催するおさんぽ会を幅田舞さんと立ち上げ たこと。幅田さんと時期は異なるが、髙橋さん も智頭町の『森ようちえん まるたんぼう』 で研修生として働いている。そして、自然の中 で本能を働かせて森あそびを体験する子どもた ちと、「だめ」 「危ない」の二言をけっして言わ ないスタッフの、子どもを見守る姿勢に刺激を 受けた。「南部町で自然をベースにしたおさん ぽ会を開催できるのは、地域の人たちが温かい からだと思います。幅田さんの“人のつながり” に助けられる面が大きいのすが、子どもたち が遊びに行く場所に困らない。場所提供協力 をお願いすると、快くOKしてくだってあり がたいです」と語る。 夫の宏彰さんと2019年に結婚し、米子市 内のアパートで新生活 を始めた髙橋さん。休 日は2人でよく南部町 に出かけ、地域交流拠 点『えん処米や』のイベント参加したり、 『c afe七草』に立ち寄ったり。その頃から、南 部町移住が頭にあった。その後、2021年に 髙橋さんが第1子を出産すると、移住計画は一 気に進む。生まれた子はどんどん大きくなる に、今のアパートでは狭い。宏彰さんは、なん ぶ里山デザイン機構にみやすそうな賃貸物件 の紹介を依頼。そうして、赤ちゃんが寝返りを 打つ前に、南部町移住することができた。新 たな住まいは昭和 年代築の二階建住宅をリ フォームしたもの。全部で6部屋があり、トイ ある空間になっている。 「外に物音が響きにくく、周り のお宅のご理解 もあり、子どもが大声を出して も走り回っても 安心です。家の中や周りでかく れんぼをしたり、 サッカーをしたりと、兄弟で遊 びを見つけてい ますね」と、齋藤さんは子ども たちを眺めなが ら目尻を下げる。 ご近所とも和やかな付き合い が始まり、玄関 に採れたての野菜が置かれる と、礼を言ってあ りがたく頂戴する。「私の実家周りも同じです」 と由美さん。 「春になったら、庭で家庭菜園 を始めたいです。 子どもたちも一緒に楽しめる ように、イチゴや ブルーベリーを植えいですね」と話してくれた。 レも2つ。伯耆町や米子の友人家族も招きやす くなり、以前よりコミュニケーションが取りや すくなった。「住宅が密集していないので、子 どもの夜泣きが気にならなくなりました」宏彰 さんは目を細める。 髙橋さんは、4月から娘の美 みこ と 詞ちゃんを町内 の保育園に預け、米子市内の保育園でパート勤 務へ。それ以外地元でおさんぽ会などの活動 にあてるつもりだ。 「南部町の子育て支援は、移住者には心強いで すね。町が行う乳児検診も、4カ月から1歳6 カ月頃まで細やかですし、助産師・栄養士さん にピンポイントで相談しやすいです。今は子連 れで『子育て交流室あいあい』に寄り小一時 間遊ぶのが楽しみです」 わが子誕生で始まった里山暮らし のびのび子育てを実現 髙橋貴恵さん 家族構成・夫/子1人 米子市からIターン 齋藤 大輔さん 家族構成・妻/子3人 米子市からIターン 移住してこそ出会えた 子どもが子どもらしく居られる家 子育て×里人 子育て×里人
7 40 春先のまだ冷たい川の水に触れる髙橋さん夫婦と美詞ちゃん。 キナルなんぶの近くにある新宮谷公園は自然溢れた穴場スポットだ。 縁のある町で暮らすことで 家族みんなの笑顔が増えた JR米子駅前で人気のイタリア ンバルを経営 し、その店の料理長も務める齋藤 大輔さん。家 では7歳、5歳、2歳と、3児の 父親の齋藤さ んが南部町に移り住んだのは、2 021年暮れ のことだった。 それまで妻の由美さんと家族5 人で暮らして いたのは、店に近い市街地のアパ ート。間取り はリビング、ダ イニング、キッ チンが一つに なった空間で、他に2つの居室が あった。由美 さんがキッチンに居ても、リビン グで遊ぶ子ど もたちに目が届き、住み心地は良 かった。しか し、子どもたちが大きくなるに連 れ部屋は狭く なり、生活音で周囲の入居者に気 を遣うように なっていた。引っ越しを考え、賃 貸住宅を探し 始めた齋藤さんは、仲の良い店の 常連客の1人 から、南部町内の空き家を活用し た賃貸住宅を、 移住者に貸し出す制度があること を知らされる。 母親の実家が南部町市山にあり、 幼い頃から祖 父母に会いに行った思い出がある 。米子の実家 も南部町近永江団地にあり、 齋藤さんが卒 園した地元の幼稚園に、今は長男 が通っている。 由美さんも、幼稚園のママ友から 「子育てをす る上でおすすめ」と聞かされてい て、島根県伯 太町の実家の家族は移住に大賛成だた。 入居を決めた家は、静かな住宅 地の一角にあ る庭・車庫付きの2階 建住宅で、全7部屋と 、 子ども部屋も充分取れる。引っ越 し前に齋藤さ んは1週間店を休み、家族全員が参加して、キッ チンの内壁と外壁に漆喰を塗った 。白を基調と したキッチンは清々しく、それで いて温かみの 生活環境を最優先に考え タイミング逃さず移住 保育士の髙橋貴恵さんが南部町に根づくきっ かけの一つは、『森の保育サークル うたたね』 が開催するおさんぽ会を幅田舞さんと立ち上げ たこと。幅田さんと時期は異なるが、髙橋さん も智頭町の『森ようちえん まるたんぼう』 で研修生として働いている。そして、自然の中 で本能を働かせて森あそびを体験する子どもた ちと、「だめ」 「危ない」の二言をけっして言わ ないスタッフの、子どもを見守る姿勢に刺激を 受けた。「南部町で自然をベースにしたおさん ぽ会を開催できるのは、地域の人たちが温かい からだと思います。幅田さんの“人のつながり” に助けられる面が大きいのすが、子どもたち が遊びに行く場所に困らない。場所提供協力 をお願いすると、快くOKしてくだってあり がたいです」と語る。 夫の宏彰さんと2019年に結婚し、米子市 内のアパートで新生活 を始めた髙橋さん。休 日は2人でよく南部町 に出かけ、地域交流拠 点『えん処米や』のイベント参加したり、 『c afe七草』に立ち寄ったり。その頃から、南 部町移住が頭にあった。その後、2021年に 髙橋さんが第1子を出産すると、移住計画は一 気に進む。生まれた子はどんどん大きくなる に、今のアパートでは狭い。宏彰さんは、なん ぶ里山デザイン機構にみやすそうな賃貸物件 の紹介を依頼。そうして、赤ちゃんが寝返りを 打つ前に、南部町移住することができた。新 たな住まいは昭和 年代築の二階建住宅をリ フォームしたもの。全部で6部屋があり、トイ ある空間になっている。 「外に物音が響きにくく、周り のお宅のご理解 もあり、子どもが大声を出して も走り回っても 安心です。家の中や周りでかく れんぼをしたり、 サッカーをしたりと、兄弟で遊 びを見つけてい ますね」と、齋藤さんは子ども たちを眺めなが ら目尻を下げる。 ご近所とも和やかな付き合い が始まり、玄関 に採れたての野菜が置かれる と、礼を言ってあ りがたく頂戴する。「私の実家周りも同じです」 と由美さん。 「春になったら、庭で家庭菜園 を始めたいです。 子どもたちも一緒に楽しめる ように、イチゴや ブルーベリーを植えいですね」と話してくれた。 レも2つ。伯耆町や米子の友人家族も招きやす くなり、以前よりコミュニケーションが取りや すくなった。「住宅が密集していないので、子 どもの夜泣きが気にならなくなりました」宏彰 さんは目を細める。 髙橋さんは、4月から娘の美 みこ と 詞ちゃんを町内 の保育園に預け、米子市内の保育園でパート勤 務へ。それ以外地元でおさんぽ会などの活動 にあてるつもりだ。 「南部町の子育て支援は、移住者には心強いで すね。町が行う乳児検診も、4カ月から1歳6 カ月頃まで細やかですし、助産師・栄養士さん にピンポイントで相談しやすいです。今は子連 れで『子育て交流室あいあい』に寄り小一時 間遊ぶのが楽しみです」 わが子誕生で始まった里山暮らし のびのび子育てを実現 髙橋 貴恵さん 家族構成・夫/子1人 米子市からIターン 齋藤大輔さん 家族構成・妻/子3人 米子市からIターン 移住してこそ出会えた 子どもが子どもらしく居られる家 子育て×里人 子育て×里人
8 写真上・左から息子さん、真希さん、夫の佳介さん。 下・世界中でも鳥取と兵庫・島根の一部にしかいないサンインサンショウウオの成体。 住み始めて気づいた 普通に“お宝”と会える南部町 南部町に生息するゲンジボタル、オオサンショ ウウオなどの観察会や、希少な在 来生物を守る ためのザリガニ釣り。(財)日本自然保護協会登 録の自然観察指導員として活動す る桐原真希さ んは、自然観察や自然体験ガイ ド地元の人と 連携した保全活動を通し、里山 の魅力環境維 持管理等の大切さを伝えている。 鳥取へのIターンは1999 年。東京農業大 学時代、学内サークル 「野生動物研究会」で出会っ た夫の佳介さんが、米子水鳥公園 の指導員に転 職したのをきっかけに、夫婦で 米子市へ。その 4年後の2003年、南部町に移住した。 今や“里山の生きもの博士”と 称される真希 さんだが、南部町との縁は偶然 だった。現在は 水鳥公園の統括指導員を務める佳 介さんと真希 さんにとって、地域の自然や生き ものの探究は ライフワークとなっている。 「よく“生きものが好きだから南 部町に移住し たんですね”と言われますが、実 は住宅ローン が返せそうだから来たんです」と屈託なく笑う。 佳介さんの職場に近い米子で暮らした4年間は、 賃貸アパート住まい。転入の翌年 に第1子が誕 生し、手狭になったため戸建て住宅購 入に踏み 「水き鳥っ公た園。から車通勤で片道 ~ 分。私が歩 いて行ける範囲に、子どもの保育園や学校、スー パー、図書館が集まるなど、夫婦の希 望に叶う 物件が、南部町で見つりました」 ところが、新居で暮らし始めると、こ の里山 は生きものの宝庫だった。中でも、豊 か自然 環境の証のブッポウソウ(町の鳥)、 オオサンショ ウウオ、コハクチョウ。この3種が、同じ自治体 に生息しているのは、全国でも珍しい。 地域の生きものの 多様性・面白さを共有したい 「近所で希少な小型サンショウウオが繁殖してい るなんて、環境を保つ方がいてこそ。田んぼや水 路、森林の手入れをしてくださる方たちに感謝し ています」と語る。また、鳥取県が 年毎に改訂 発行する、絶滅のおそれある野 生動植物をリス トアップした『レッドデータブ ックとっとり/ 2002年版』では、真希さんがこの地で確認し たカワセミやフクロウが、存在していないことに なっていた。 「その時、生きもの好きのスイッチが入りました ね。身近な生きものをちゃんと見て撮影、記録、 標本作りなどの資料に残さなければと」 その後は、レッドデータブックのリスト編さん にも、夫婦で関わっている。 米子で生まれた長女は、今春、鳥取環境大学の 四年生。南部町で生まれ、サンショウウオの巣穴 掘りが得意な長男は、倉吉農業高校を卒業し鳥取 農業大学校へ進学する。2人とも家の近くの水路 で魚やサワガニを採り、庭先や田んぼのカエルに 触ったりしながら、のびのびと育った。 「たまたま私たちの暮らしと、町の相性が良かっ たと思いますが、ここで子育てができて満足です」 とふりかえる真希さん。地区長や学校PТA役員 の任期、子どもたちの受験期にはセーブしながら も、自然や生きものの面白さを伝える活動を続け てきた。今年4月からは、主催事業の『なんぶ生 きもの探検隊』がスタート。小学校児童放課後 に参加できるよう、午後に開催する。 「実は自然が一番危険で、野生の動植物には恐さ もあるけれど、そのリスクを知った上で生きも のの魅力を地域の人たちと共有できればと願て います。生きものは面白いとい うアンテナのス イッチが入ると、映画やアニメの楽しみ方がふく らみ、普段生活も楽しくなりますよ」 自分の好きな事を 仕事にできる 豊かな里山暮らしを実感 桐原 真希さん 家族構成・夫/子2人 神奈川県から米子市を経てIターン 自然環境×里人
9 30 40 もりまきフィールドネットワーク Blog「南部町のK原さん / 第2部屋」 https://ameblo.jp/morimakin/ 主催企画「土曜日のガイドウォーク」 毎月最終土曜の午前 10 時から開催。 大人 850 円、高校生以下 500 円、園児以下 350 円。 10 リスクを知った上で、 生きものの魅力を地域の人たちと共有できれば 住み始めて気づいた 普通に“お宝”と会える南部町 南部町に生息するゲンジボタル、オオサンショ ウウオなどの観察会や、希少な在 来生物を守る ためのザリガニ釣り。(財)日本自然保護協会登 録の自然観察指導員として活動す る桐原真希さ んは、自然観察や自然体験ガイ ド地元の人と 連携した保全活動を通し、里山 の魅力環境維 持管理等の大切さを伝えている。 鳥取へのIターンは1999 年。東京農業大 学時代、学内サークル 「野生動物研究会」で出会っ た夫の佳介さんが、米子水鳥公園 の指導員に転 職したのをきっかけに、夫婦で 米子市へ。その 4年後の2003年、南部町に移住した。 今や“里山の生きもの博士”と 称される真希 さんだが、南部町との縁は偶然 だった。現在は 水鳥公園の統括指導員を務める佳 介さんと真希 さんにとって、地域の自然や生き ものの探究は ライフワークとなっている。 「よく“生きものが好きだから南 部町に移住し たんですね”と言われますが、実 は住宅ローン が返せそうだから来たんです」と屈託なく笑う。 佳介さんの職場に近い米子で暮らした4年間は、 賃貸アパート住まい。転入の翌年 に第1子が誕 生し、手狭になったため戸建て住宅購 入に踏み 「水き鳥っ公た園。から車通勤で片道 ~ 分。私が歩 いて行ける範囲に、子どもの保育園や学校、スー パー、図書館が集まるなど、夫婦の希 望に叶う 物件が、南部町で見つりました」 ところが、新居で暮らし始めると、こ の里山 は生きものの宝庫だった。中でも、豊 か自然 環境の証のブッポウソウ(町の鳥)、 オオサンショ ウウオ、コハクチョウ。この3種が、同じ自治体 に生息しているのは、全国でも珍しい。 地域の生きものの 多様性・面白さを共有したい 「近所で希少な小型サンショウウオが繁殖してい るなんて、環境を保つ方がいてこそ。田んぼや水 路、森林の手入れをしてくださる方たちに感謝し ています」と語る。また、鳥取県が 年毎に改訂 発行する、絶滅のおそれある野 生動植物をリス トアップした『レッドデータブ ックとっとり/ 2002年版』では、真希さんがこの地で確認し たカワセミやフクロウが、存在していないことに なっていた。 「その時、生きもの好きのスイッチが入りました ね。身近な生きものをちゃんと見て撮影、記録、 標本作りなどの資料に残さなければと」 その後は、レッドデータブックのリスト編さん にも、夫婦で関わっている。 米子で生まれた長女は、今春、鳥取環境大学の 四年生。南部町で生まれ、サンショウウオの巣穴 掘りが得意な長男は、倉吉農業高校を卒業し鳥取 農業大学校へ進学する。2人とも家の近くの水路 で魚やサワガニを採り、庭先や田んぼのカエルに 触ったりしながら、のびのびと育った。 「たまたま私たちの暮らしと、町の相性が良かっ たと思いますが、ここで子育てができて満足です」 とふりかえる真希さん。地区長や学校PТA役員 の任期、子どもたちの受験期にはセーブしながら も、自然や生きものの面白さを伝える活動を続け てきた。今年4月からは、主催事業の『なんぶ生 きもの探検隊』がスタート。小学校児童放課後 に参加できるよう、午後に開催する。 「実は自然が一番危険で、野生の動植物には恐さ もあるけれど、そのリスクを知った上で生きも のの魅力を地域の人たちと共有できればと願て います。生きものは面白いとい うアンテナのス イッチが入ると、映画やアニメの楽しみ方がふく らみ、普段生活も楽しくなりますよ」 自分の好きな事を 仕事にできる 豊かな里山暮らしを実感 桐原真希さん 家族構成・夫/子2人 神奈川県から米子市を経てIターン 自然環境×里人
自然環境×里人 100年息づく古民家を 自分の手でリノベーション 全国でも貴重な里地里山が残 る南部町。この 地で大正時代前後に建てられた 家には、地元で 採れた木材や資材をもとに、湿 気や雨風、雪の 多い気候を知る地場の大工、左 官、瓦などの職 人の技、そして自然の力を取り 入れ、暮らしを 工夫した里人の知恵が詰まって いる。そんな古 民家の一棟と、町への移住をきっ かけにめぐり 合ったのが、西村陽さんだ。 子どもの頃から、木と金属、旋盤 や溶接など ものづくりの工作機械が好きな 西村さんは、住 宅リフォームやリノベーション専 門建築大工 として活動する一方、農耕機械や 工場設備の修 理などの金属加工業を営んでい る。これまでは 実家のある米子を拠点にしてい たが、伯耆町出 身の里絵子さんとの結婚を機に お互いの実家 に近い南部町に移り住むことに した。住まい探 しの相談になん ぶ里山デザイン 機構を訪れる と、機構が管理する物件の中に、 築100年の 古民家があった。この家のオーナ ーは海外に住 んでおり、入居する人が決まっ たら、自由に改 修してもらってかまわないと承諾 を得ている物 件だった。西村さんは、里絵子さ んも気に入っ たこの家を新生活の拠点に決め、 建築大工の腕 を発揮して自らリノベーションに取り組んだ。 自分たちの生活スタイルに合わ せて改修する といっても、家は賃貸契約なで 勝手な事はで きない。西村さんは機構介して インターネッ トでオーナーと交流し、作業の節 目ごとに写真 を撮ってメルで送るなど信頼 関係を築いて いった。前庭に面した和室は、欧 州赤マツの床 材を使いフローリング・リビングへ。 「昔の木造住宅は、長く住み続けることができま すが、人が住まなくなると、急にあちこち痛み始 めます。フローリング工事の前は、床下に潜って の修復作業が多かったですね」と西村さん。時に は職人仲間に手伝ってもらい、西村家のリノベー ション工事は完了。その後、里帰りしたオーナー と県外で暮らす姉妹が家を訪ねてくれ、“思い出 の詰まった生家を、よみがえらせてくれてありが とう”と、工事の完了と入居を喜んでくれた。 「取引先の社長をはじめ、このリビングに通した 人は、なぜか必ず寝ころんで、くつろぎモードに なってしまうんですよ」と笑う西村さん。里山 四季を告げ、自然のリズムを運ぶ風が通う家で、 里絵子さんと紡ぐ暮らしは、2年目に入っている 西村 陽 よう さん 家族構成・妻 米子市からIターン 地域の風土と文化が色濃く薫る 昔の家を新生活の拠点に 10 Kuraco クラコ リフォーム・リノベーション専門、木製小物・テーブルなどのオーダー 作成、DIY サポート、金属加工、機械・工場設備の修理など。 TEL 090-6834-1966 / MAIL jam_ash_ivy@yahoo.co.jp
自然環境×里人 100年息づく古民家を 自分の手でリノベーション 全国でも貴重な里地里山が残 る南部町。この 地で大正時代前後に建てられた 家には、地元で 採れた木材や資材をもとに、湿 気や雨風、雪の 多い気候を知る地場の大工、左 官、瓦などの職 人の技、そして自然の力を取り 入れ、暮らしを 工夫した里人の知恵が詰まって いる。そんな古 民家の一棟と、町への移住をきっ かけにめぐり 合ったのが、西村陽さんだ。 子どもの頃から、木と金属、旋盤 や溶接など ものづくりの工作機械が好きな 西村さんは、住 宅リフォームやリノベーション専 門建築大工 として活動する一方、農耕機械や 工場設備の修 理などの金属加工業を営んでい る。これまでは 実家のある米子を拠点にしてい たが、伯耆町出 身の里絵子さんとの結婚を機に お互いの実家 に近い南部町に移り住むことに した。住まい探 しの相談になん ぶ里山デザイン 機構を訪れる と、機構が管理する物件の中に、 築100年の 古民家があった。この家のオーナ ーは海外に住 んでおり、入居する人が決まっ たら、自由に改 修してもらってかまわないと承諾 を得ている物 件だった。西村さんは、里絵子さ んも気に入っ たこの家を新生活の拠点に決め、 建築大工の腕 を発揮して自らリノベーションに取り組んだ。 自分たちの生活スタイルに合わ せて改修する といっても、家は賃貸契約なで 勝手な事はで きない。西村さんは機構介して インターネッ トでオーナーと交流し、作業の節 目ごとに写真 を撮ってメルで送るなど信頼 関係を築いて いった。前庭に面した和室は、欧 州赤マツの床 材を使いフローリング・リビングへ。 「昔の木造住宅は、長く住み続けることができま すが、人が住まなくなると、急にあちこち痛み始 めます。フローリング工事の前は、床下に潜って の修復作業が多かったですね」と西村さん。時に は職人仲間に手伝ってもらい、西村家のリノベー ション工事は完了。その後、里帰りしたオーナー と県外で暮らす姉妹が家を訪ねてくれ、“思い出 の詰まった生家を、よみがえらせてくれてありが とう”と、工事の完了と入居を喜んでくれた。 「取引先の社長をはじめ、このリビングに通した 人は、なぜか必ず寝ころんで、くつろぎモードに なってしまうんですよ」と笑う西村さん。里山 四季を告げ、自然のリズムを運ぶ風が通う家で、 里絵子さんと紡ぐ暮らしは、2年目に入っている 西村陽 よう さん 家族構成・妻 米子市からIターン 地域の風土と文化が色濃く薫る 昔の家を新生活の拠点に 11 移住の理由は? どこから来ましたか? どこから来たの? 何をもとめて? 南部町移住者に聞きました! 南部町を選んだ理由は? なんぶ移住者アンケート 熊本県 香川県 高知県 埼玉県 神奈川県 兵庫県 岡山県 東京都 広島県 大阪府 島根県 移住前の 居住地 奈良県 市町村別の回答のうち 鳥取県内の市町村を抜粋 1位 米子市 2 位 鳥取市 3 位 境港市 鳥取県 62.3% 子どもを育てるのに ふさわしい環境である 子どもが騒いでも 大丈夫 親・祖父母・親戚などと 一緒もしくは近くで 暮らすことができる 住居や土地、または 家賃や管理費などの 固定費が安い 山や海などの 自然の中で 遊べる場所が近い 同じ職場に通い 続けることができる 53.8% 44.2% 55.8% 34.6% 25.0% 44.2% 転居前の移住地(都道府県別) 南部町への転入理由(複数回答) 転居先として南部町を選んだ理由 (20・30 代 複数回答上位 12 項目より抜粋) 住環境の改善 子どもの養育・教育 結婚 介護・看護 就職・転職 退職 その他の仕事 趣味の充実 転勤 通学 起業 29.8% 21.2% 19.2% 11.5% 10.6% 9.6% 4.8% 3.8% 2.9% 1.9% 1.9% 〈南部町役場調べ〉
12 ライブ音楽と同じ“作りたて” 今ここでしか食べられない味 結婚をきっかけに南部町に移 り住み、地元で ジェラート店を起業した益村千代さん。えんがー の富有に出店した『ジェラテリア・パッチェリー ビー』は、2018年7月オープ ンから1年半 で 万人ほどを集め、その後も町の人をはじめ、 県内外から多くのファンが訪れる店となった。 ジェラートは、ミルク、旬の果物や野菜など、 食材そのものの風味を生かした手 作りの味が特 徴。鮮度が保たれてこそのおい さなので、毎 朝その日の分だけを作って売り、 けっして翌日 には持ち越さない。 「打ちたて蕎麦や鮨職人さんが、 日の食材 をその日の天気に合せて調理するのと一緒です」 とほほ笑む益村さん。提供するフ レーバーは約 種類でも、食材の収穫時期や鮮度、天気によっ て味の配合比率を変えるため、毎 日新たな気持 ちで緊張しながら作っていると いう。そうして 完成したジェラートは、ライブミ ュージックの ように、その場その時だけのフレ ッシな感動 と興奮を連れてくる。まさに、今 ここでしか食 べられない味なのだ。2021年には、図書館、 南部町の自然・歴史・文化に触れ る展示館、多 目的ホールなど備えた新しい複 合施設『キナル なんぶ』のカフェエリアにも出店した。 「地元の農家さんやお客様との関わりを大切に、 自分の住む町の目の届く範囲でジ ェラート店を 開くのが夢でした。南部町は、結 婚を機に大好 きになった町。人が遠くから足を 運んでも食べ たくなるようなジェラート作り を目指し、自分 の住む町にたくさんのが来てく れたらと願っ ています」 ジェラート好きが高じて 職人の道を歩み始める 益村さんは広島県出身。ラジオ 局・FM山陰 勤務をへて、フリーアナウンサーとして活動して いた。趣味は全国の音楽ライブ巡 りとアイスク リームの食べ歩き。そ延長線 上で、職人が手 作りするジェラートのおいしさ と出会った。各 地で毎日のように食べたジェラー トの画像と想 いを、SNS(交流サイト)で無 心に公開し続 けた益村さん。それが縁で、島根県内のジェラー ト店の新店立ち上げに、職人とし て抜擢される 事となった。職人経験は無いが、 食べ歩きで鍛 えた舌情熱はある。独学で試 作を重ね、イタ リアにも短期で何度か勉強に行 った。2年で人 気店の基本レシピを確立した後 は、広島市の有 名イタリアンの厨房で、ジェラート作りを担当。 2017年には、その店のシェフ と共にイタリ アで開催された『国際 ジェラートコンテス ト』 に出場し、 位入賞を果たした。 「その時、自分でおいしいと思う 感覚を人に認 めてもらえたと実感でき、独立す る励みになり ました」と振り返る。プライベ ートでは、南部 町出身の夫、透さんとの間に授か った3歳の双 子のお母さん。 「自営業なので、仕事と子育てが 一体化してま すね。3名の女性スタッフの内2名が子育て中。 少人数で運営しながらも、大変なは協力し合っ て仕事をしています」店と家、保 育園の距離が 近く、子どもたちと過ごす時間も充分取れている。 店には、お小遣いを握り、自転車 でやってく る小さな常連さんも多い。春に なると、進学や 就職で町を離れる前の学生が、両 親と来店して くれることも。 「お客様のふるとの記憶の中 に、ジェラート を食べた日の思い出、味覚が残ってくれるよう、 これからもおいしさを求めていき たい」と話し てくれた。 ふるさとの記憶に ジェラート思い出が 残るように 益村 千代さん 家族構成・夫/子2人 広島県からIターン 仕事×里人
13 10 10 10 ジェラテリア pa cherry b(. パッチェリービー) 西伯郡南部町市山 1087-1 えんがーの富有内 OPEN 10:00 ~ 17:00 / CLOSE 月火 ※祝日は営業 1月中旬~2月下旬まで冬季休業 TEL 0859-21-8100 /WEB https://pacherryb.com per te(ペルテ) 西伯郡南部町法勝寺 341 キナルなんぶ内 OPEN 12:00 ~ 16:00(金土日)※出張販売時は休み 1月中旬~2月下旬まで冬季休業 自分の住む町でジェラート店を開くのが夢でした ライブ音楽と同じ“作りたて” 今ここでしか食べられない味 結婚をきっかけに南部町に移 り住み、地元で ジェラート店を起業した益村千代さん。えんがー の富有に出店した『ジェラテリア・パッチェリー ビー』は、2018年7月オープ ンから1年半 で 万人ほどを集め、その後も町の人をはじめ、 県内外から多くのファンが訪れる店となった。 ジェラートは、ミルク、旬の果物や野菜など、 食材そのものの風味を生かした手 作りの味が特 徴。鮮度が保たれてこそのおい さなので、毎 朝その日の分だけを作って売り、 けっして翌日 には持ち越さない。 「打ちたて蕎麦や鮨職人さんが、 日の食材 をその日の天気に合せて調理するのと一緒です」 とほほ笑む益村さん。提供するフ レーバーは約 種類でも、食材の収穫時期や鮮度、天気によっ て味の配合比率を変えるため、毎 日新たな気持 ちで緊張しながら作っていると いう。そうして 完成したジェラートは、ライブミ ュージックの ように、その場その時だけのフレ ッシな感動 と興奮を連れてくる。まさに、今 ここでしか食 べられない味なのだ。2021年には、図書館、 南部町の自然・歴史・文化に触れ る展示館、多 目的ホールなど備えた新しい複 合施設『キナル なんぶ』のカフェエリアにも出店した。 「地元の農家さんやお客様との関わりを大切に、 自分の住む町の目の届く範囲でジ ェラート店を 開くのが夢でした。南部町は、結 婚を機に大好 きになった町。人が遠くから足を 運んでも食べ たくなるようなジェラート作り を目指し、自分 の住む町にたくさんのが来てく れたらと願っ ています」 ジェラート好きが高じて 職人の道を歩み始める 益村さんは広島県出身。ラジオ 局・FM山陰 勤務をへて、フリーアナウンサーとして活動して いた。趣味は全国の音楽ライブ巡 りとアイスク リームの食べ歩き。そ延長線 上で、職人が手 作りするジェラートのおいしさ と出会った。各 地で毎日のように食べたジェラー トの画像と想 いを、SNS(交流サイト)で無 心に公開し続 けた益村さん。それが縁で、島根県内のジェラー ト店の新店立ち上げに、職人とし て抜擢される 事となった。職人経験は無いが、 食べ歩きで鍛 えた舌情熱はある。独学で試 作を重ね、イタ リアにも短期で何度か勉強に行 った。2年で人 気店の基本レシピを確立した後 は、広島市の有 名イタリアンの厨房で、ジェラート作りを担当。 2017年には、その店のシェフ と共にイタリ アで開催された『国際 ジェラートコンテス ト』 に出場し、 位入賞を果たした。 「その時、自分でおいしいと思う 感覚を人に認 めてもらえたと実感でき、独立す る励みになり ました」と振り返る。プライベ ートでは、南部 町出身の夫、透さんとの間に授か った3歳の双 子のお母さん。 「自営業なので、仕事と子育てが 一体化してま すね。3名の女性スタッフの内2名が子育て中。 少人数で運営しながらも、大変なは協力し合っ て仕事をしています」店と家、保 育園の距離が 近く、子どもたちと過ごす時間も充分取れている。 店には、お小遣いを握り、自転車 でやってく る小さな常連さんも多い。春に なると、進学や 就職で町を離れる前の学生が、両 親と来店して くれることも。 「お客様のふるとの記憶の中 に、ジェラート を食べた日の思い出、味覚が残ってくれるよう、 これからもおいしさを求めていき たい」と話し てくれた。 ふるさとの記憶に ジェラート思い出が 残るように 益村千代さん 家族構成・夫/子2人 広島県からIターン 仕事×里人
仕事×里人 人に届き心を動かす情報を わかりやすい映像制作で追求 東京から生まれ育った南部町にUターンして、 9年目の細田正崇さん。帰郷直後 から勤めてい た米子のメディア関連企業を離 れ、今は自宅を 拠点に、映像制作の仕事を中心に活動している。 学生の頃から雑誌やテレビなど メディア業界 を志望し、就職は東京へ。テレビ 関連の映像制 作会社で、プロデューサーとして働いていた。 「上に姉が 人いて自分は長男ですが、いつか は鳥取に帰るな んて、東京時代は 一切考えて いませんでした」と振り返る。転 機は2013 年。当時はインターネットの動画 配信サイトが 全盛期で、細田さんはプロレス 試合を配信す るサイトを立ち上げたが、毎日深 夜まで働き1 年間休み無しという激務の中身 体を壊してし まったのだ。医師から厳命され、 会社を4カ月 休職した細田さんは、一旦、南部町の実家に帰り、 静養生活を送る。この間、会社に 復職するか鳥 取に戻るか悩み、試しに地元の就 職相談会に足 を運ぶと、《ふるさと鳥取県定住機構》の相談員 との出会いが待ってい。 「 歳でふるさとを離れたので、鳥取 の企業情 報は何も知りません。地元にメデ ィアの仕事は 無いと思いこんでいましたが、自 分の経歴を活 かせそうな地元企業をくつか紹 介していただ き、そのひ月後にはUターン就 職を決めるこ とができました」 歳で鳥取に戻り、米子のメディ ア関連企業 で再始動した細田さん。その1年 後には鳥取県 の移住アドバイザーに認定さ れ、東京・大阪で 開催される相談会やセミナーで、 自身のUター 個性を活かせる場を生み出し 町民が主役のまちづくりへ 鳥取県産大豆と天然にがりに こだわった、手 作りもめん『協力隊豆腐』の製 造販売。農産物 加工販売とカフェを併設した『めぐみの里』や、 障がい者のためのグループホー ム『アイル』の 運営など。JOCA南部事務所 は、各地で地域 創生事業の支援活動を行う(公社 )青年海外協 力協会の全国7拠点の一つだ。南 部町が進める 生涯活躍のまちづくりのパート ナーの一翼を担 い、2016年から法勝寺エリ アを拠点に、担 い手不足を解消するための事業 継承、障がい者 の就労支援事業、富有柿などの農 産物を使った 加工品開発など、様々な地域再生推進活動を行っ ている。 鈴木亜依子さんは、2021年4月、東京支所 からの異動で南部事務所に赴任 した。JOCA は、発展途上国で開発援助に携わ った青年海外 協力隊(JICA)の経験と知 識を、今度は国 内外各地に還元するために作ら れた組織だ。鈴 木さんも2007年から青年海 外協力隊に参加 し、中南米グアテマラ共和国で 2年間、収入源 を増やすための仕事づくりや商 品開発、現地の 農業支援などを行った。帰国後は JOCAに入 職し、現在本部がある長野県駒ケ 根市での勤務 をへて、出身地の東京勤務を続 けていた。南部 事務所への辞令がギリギリだっ ため、2人の 娘さんは遅れて夏休みに到着。家 具職人の夫の 志 しほ う 峰さんは東京の工房を離れられず、 赴任中は 別居することになった。それでも鈴木さんの引っ 越し時、娘さんたちの付き添 い、年末と、南部 町を訪れている。 ン移住経験をもとに相談者にアドバイスしたり、 実際に移住してきた人をフォローする活動を今も 続けている。 「映像は、ただ対象物や出来事を撮るのではなく、 構想の道筋を作る作業が一番大変で大切なこと」 と細田さん。現在は、業務委託する東京の映像制 作会社に、リモートワークで映像を届ける。また、 移住アドバイザーを務めていることから映像コン テンツ作りにも関わり、移住定住の情報発信に貢 献している。一方で、梨と富有柿を栽培する農家 の後継ぎの細田さん。今は父親の元で勉強中だが、 地域農家の担い手不足問題にも思いを馳せ。四 季の農家の表情や農業の魅力を映像で発信し、南 部町で農業をやりたい人の背中を押すこを構想 中だ。 「こちらは落ち着くねと言い、南部町が気に入っ たようです。空気もおいしいし自然が豊か。四季 を感じられるもうれしい。それに町の人温く、 よく声をかけてくださいます。私は浅草に生まれ、 子どもの頃はご近所としょうゆを貸借りするよ うな町で育ったので、懐かしくなります」と話す。 着任後の7月にはグループホームのアイルが完成 し、今年6月には法勝寺高校跡地を活用し、温泉 と食事ができる多世代交流拠点施設『法勝寺温泉』 がオープン予定だ。 「誰一人取り残されない地域、まちづくりを目指 しています」と鈴木さん。 から高齢者、障 がいの有る人無い人、日本人・外国人に関わらず、 全ての町民が支え合いながら暮らすことのできる 「ごちゃまぜ」コミュニティは、少しずつ形になっ ている。 地元に帰って気づ く やりたい仕事は作 り出せる 細田 正 まさ たか 崇さん 家族構成・妻 東京都からUターン 誰もが生涯活躍でき る ごちゃまぜコミュニティをめざして 鈴木亜依子さん 家族構成・夫/子2人 東京都からIターン 仕事×里人 14 2 18 32 自宅の中の仕事部屋。集中できる環境はもちろん、窓を覗けば外の草木が 見え、ふっと息抜きもできる。
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